対峙3 イカルス戦前半
地上種も取扱うことになってしまったヨスギル製よりも、金属的な優位性を確保すべく、ドラゴン金属の使用を決め、神の使いとの戦いを決心した防衛長官は、秘蔵の部隊にドラゴン製武具を装備させ、制御棟の制御室付近の広場で待機させた。
この部隊は獣人種の実験で偶然生まれ、偶然生き延びた個体を集めたもので、同種がたくさんいるわけではなかった。
"強化種"
獣人種に特別な加工を施し、実験を繰り返して誕生した新種族。
通常の獣人種や人間種などと比較すると力、魔力、体力、敏捷性などが数倍あることが特徴だった。
またHPやMPも高く、唯一精神的な影響が強い神力(他ゲームで言う信仰心、精神、白魔法行使に影響する能力値のこと)だけは通常種と違いが無かった。
部下「隊長。来ましたぜ」
彼らの50m先に、所々に緑の線が描かれた白いフルプレートに身を包んだ部隊が現れた。
部下「識別魔法によると "ロボット種イカルス型グリーンタイプ" らしいです」
頭が3つあるコボルト種の隊長はそれを聞いて、記憶を探るも無駄だった。
隊長「聞いたことない種族。神の使い確定だな。数は5体、、、いくぞ」
イカルス兵「武装解除せよ。さもなくば排除する」
隊長「俺らをほかの奴と同じだと思うなよ?」
隊長の合図で戦闘が開始された。
頭が2つのコボルト種である副隊長が魔法を詠唱する。
続いて、腕が4本のオーク種2人と体躯の大きなリザードマンが走っていき、前衛を務める。
下半身が馬の獣人も2体おり、機動力を生かして援護に回る。
一つ目の巨人は隊長のそばで護衛を務めた。
イカルス兵「!! 武装解除には応じないということか。総員!排除せよ!!」
イカルス兵たちは手に持つ筒を獣人たちに向けた。そして引き金を引くと光を放った。
最初の攻撃はオークの持つ盾により防がれ、イカルス兵と獣人たちは白兵戦に入った。
そして獣人の後方や周辺から補助魔法の援護が入った。
イカルス兵1「ビームガンの効きが悪い」
イカルス兵2「対象の防具相性を識別!耐熱ドラゴン製!!」
イカルス兵3「耐熱か。しかし換装する猶予はない。このまま白兵戦で対応する」
ロボットゆえに、麻痺や睡眠の状態異常は効果が無かった。
副長「隊長!石化させましょう!」
隊長「わかった。詠唱を合わせろよ」
複数の頭があるコボルト種だからこそできる秘技に、同時詠唱があった。
これまで誰も成功させることが出来なかったというより、構造的に不可能だったものだが、同一魔法を同一の人物が複数同時に詠唱し、着弾させることで普通よりも数倍の効果を発揮することが実験戦闘でわかったのだ。
イカルス兵2体が石化した。
攻撃対象が石化したことを認識したオークは、すぐに別の対象に攻撃を切り替えた。
対象となったイカルス種は、ケンタウロス型の獣人による魔法無効化率低下の魔法を受けつつ、リザードマンの対応をしていた。
イカルス兵「小癪な!」
イカルス兵は攻撃の手を止め、何やら筒にあるボタンを操作し始めた。
そして、攻撃を受けつつも石化したイカルス兵に筒を向けて引き金を引いた。
次の瞬間、イカルス兵の石化が解けた。
副長「なに!やるじゃないの」
隊長「今度は攻撃魔法で仕留めるぞ。魔法無効化が面倒だからライナー系で行く」
またも2人は詠唱を開始し、イカルス兵1体に炸裂した。
ライナー系魔法は属性を持たず、魔力そのものをぶつける系統の魔法で、軌道も名前の通り直線で飛んでいくため、攻撃速度も速い魔法だ。魔法無効化率をある程度貫通する能力もあり、万能感があるが、属性を持たないため、氷の速度低下、炎のやけどによる継続ダメージなどの追加効果が望めない。
イカルス兵1体はその場に倒れた。