対峙2
侵入者である大聖堂の騎士複数名を捕らえ、尋問した結果、天球の制御室を探していることがわかった。
そして制御室を探す理由は、天球の調整をして夜を消すことだともわかった。
天球の調整では夜は消せない。浮遊大陸勢は知っていることだが、地上種の勘違いの余波がここにもあった。
大聖堂が天球調整では夜が消えないことの説明を理解、または信じてくれていれば、こんな事態にはならなかっただろうにと浮遊大陸勢は考えていた。
そう、大聖堂の勘違いのせいで、闇の宝珠と光の宝珠を分離する技術者を失った浮遊大陸勢は、天球から夜を取り除くことが出来なくなっていた。この後一体どうしたらよいのだろうか。
防衛長官「虎の子の戦力であるドラゴン製部隊は全て向かわせたか?神の使いに見つかる前に、サッサと地上種部隊を始末してケリを付けたい。まさか制御室を狙っているとは、身の程をわきまえない奴らには消えてもらおう」
管理官「現在複数の部隊が地上種のもとに向かっています。最短経路になるよう逐一指示しています」
防衛長官「それならよい」
複数の浮遊大陸勢部隊が、地上から来た侵入者のもとに向かっていた。
浮遊大陸の通路には監視カメラがあり、それを使って獣人部隊に指示を出していた。
獣人部隊「ん?」
通路の先に変な集団が見えた。
その集団は白をメインにした金属製のフルプレートで身を固め、そのフルプレートには所々に青い線と赤い線が描かれていた。
獣人部隊「地上種の部隊か?」
2つの部隊は50メートルほど離れて対峙した。
お互いに動きを止めると、フルプレート部隊は手に持つ筒状の何かを獣人部隊に向けた。
獣人部隊「隊長。識別魔法の結果が出ました。種族は、、、!?」
隊長「どうした」
隊員「あ、いえ。えっと種族名は"ロボット種イカルス型"となっています。イカルス型もロボット種も聞いたことない種族名です」
隊長「聞いたことない種族となると、神の使いか」
イカルス兵「武装解除せよ。応じない場合は排除する」
隊員「どうします?数はこちらが20、相手は5人です。やれそうですが、、」
隊長「中央に確認するから待ってほしい」
イカルス兵「了解した」
イカルス兵達は獣人に向けていた筒を下に向けた。
獣人部隊の隊長は上役に通信で対応を求めた。
隊長「神の使いと思しき団体と遭遇し、武装解除を求められています。どうしましょうか」
防衛長官「ん?今度はリズマンではなく違うやつか。長髪男女でもない、と。まさかこんなにたくさんいるとは想定外だな」
隊長「識別魔法では、種族は"ロボット種イカルス型"と判定されていますが、何の種族やらサッパリです」
防衛長官「"ロボット"か。何だかわからんが、ドラゴン製装備だろうな。数は5体か。よし、排除しろ」
隊長「わかりました」
イカルス兵「武装解除には応じないということか。始末する」
そう言うと下に向けていた筒を再び獣人側に向けた。そして筒の先が光ると獣人達の鎧の一部が融解した。
「!?」
獣人「隊長!鎧と盾が溶けています!」
隊長「何が起きてる?魔法か?」
獣人魔法使い「魔力を感知しません!マジックシールドも貫通してきます!」
隊長「転移魔法で退却しろ!」
獣人魔法使いたちは転移魔法を詠唱し始め、獣人部隊は姿を消した。
イカルス兵隊長「ターゲットの逃亡を確認。衛星データ接続完了。サテライトスキャンデータにてターゲット捕捉。転移で追跡を開始せよ!」
戦闘中に転移魔法を使ったため、転移先がランダムになるテレポートとなった獣人部隊は、現在地を確認すべく本部に連絡をとった。
隊長「こちら研究棟駐留第21中隊第8小隊だ。現在地から本陣への転移座標送れ!他島にある本陣までの正確な現在地との座標のズレがわからない!」
本陣オペレータ「貴官らの現在座標を確認。本陣は、、」
そこまで言ったときイカルス達が転移してきた。
隊員「やつら追ってきました!」
隊長「!! なぜ場所がわかった?とりあえず再転移しろ!」
イカルス達に盾を向け、防御態勢を取りつつ、転移魔法の詠唱を開始した。
イカルス兵隊長「ターゲットの装甲は、耐熱ドラゴン製と確認。各員対耐熱ビームガンに換装!」
次の瞬間、獣人達は転移した。
隊長「こちら第8小隊!本陣!座標を送れ!!」
本陣オペレータ「座標を確認。本陣への座標はX446、Y、、、」
その時またもやイカルス達が転移してきた。
隊員「ランダムテレポートなのに、なぜ場所がわかるんだ?俺等の通信を傍受してるにしては早すぎる!」
隊長「再転移だ!」
またも盾を構えて攻撃を凌ごうとしたが、今回は簡単に鎧と盾を貫通し、あちこちで悲鳴が上がった。
そして数人たけが転移に成功した。転移に失敗したのは死体だった。
そして転移後に隊長は部下に命令した。
隊長「奴らは武装解除を要求していたな。ここで武具を廃棄しろ!本陣!座標送れ!!」
本陣オペレータ「第8小隊の座標確認。本陣へは、x368、Y516、Z46です」
獣人魔法使い「座標確認。転移開始します!」
隊長「今度は追ってこないな。本陣!奴らを補足しているか?」
本陣オペレータ「先程の場所で死体の武具を回収しています。あっ消えた」
隊長「来るか?」
するとイカルス達が転移してきた。しかし今度は攻撃してくる様子がなかった。
そして獣人達は転移した。
本陣に転移した獣人部隊は、追手を警戒したが、転移してこなかった。
隊長「本陣になんとか帰還か。死者13名、生存7名。報告してくるよ」
隊員「私のこの盾も参考にお持ちください」
隊長「ああ、研究材料になるかもな」
そういうと獣人部隊の隊長は、熱で溶け、穴の開いた盾を持って本部のある部屋に入っていった。
隊長「中隊長。第8小隊は13名戦死、7名帰還です」
中隊長「神の使いとやったらしいな。防衛長官から連絡があった。だが戦闘ご始まると監視カメラが不調になり戦闘の様子はわからないらしい。報告してくれるかな」
隊長「はい。彼らの攻撃はマジックシールドも貫通し、このドラゴン製の鎧や盾も貫通してきました。攻撃方法は謎です」
中隊長「攻撃は通じたのかね?」
隊長「それどころではありませんでした。遠距離から謎の攻撃で被害甚大。こちらからの攻撃は魔法を少々ですが、相手もドラゴン製なら効果は薄いでしょう」
中隊長「わかった。それが攻撃を受けた盾かね」
そういうと中隊長は盾を手に取り観察した。
中隊長「最新鋭の技術の結晶がボロボロだな。これは研究室に送っておく。君らは養生と再編成に取り組み給え」
隊長「了解しました。1つお願いがあります。今回は本陣に戻るに当たり、浮遊大陸間の転移が必要でした。大陸間の移動は座標が安定しないため、都度オペレーターの指示か、座標表示器で現在地と転移先座標のズレの計測が必要になります。是非とも今後は座標表示器の配備を徹底願います。オペレーターとのやり取りで逃げ遅れ、犠牲を出してしまいましたので」
そういうと隊長は部屋を後にした。
隊長の口からは血が1筋流れ、拳は強く握られていた・・・
転移魔法は同一ダンジョン内であれば地図魔法と組み合わせたりして転移先を簡単に指定できます。
今回は複数ある浮遊大陸間を無理やり転移するために、転移先への座標が必要でした。いうなれば、別のダンジョンのとある部屋に転移しようとしているものなので、現在地からxyz軸がどれくらいズレているかを地図魔法では確認できず、苦労しています。
ゲームでもダンジョンから脱出する魔法とかありますが、あれで別ダンジョンの出口に脱出するという芸当を今回の獣人部隊達は実行しているのと同じです。