天球長官の不安
説明を聞いて疑問が解消しつつあった天球長官の頭には、疑問の代わりに今度は不安の要素が色濃く出てきた。
天球長官「うーむ。10日ほど前に宝珠の分離技師と護衛兵士を地上に送り込んだときは、その"大聖堂"とやらで戦闘になり、全滅させられているぞ?あれはどういうことだ?」
防衛長官「彼らからすると、我々を闇の宝珠を取り返しにきた地下種の手勢だと思ったようで、分離についての話も闇の宝珠を奪還するためのウソだと判断したそうだ」
天球長官「そうか、夜を消すのに天球調整でよいと思っていたから、そんな結論に至ったのか・・・」
防衛長官「そのとおりです。さらに都合の悪いことに、我々の護衛は様々な獣人種で構成されており、ダンジョンの王がコボルト種だったことと重なり、我々を地下種の勢力だと勘違いするに十分な状況だったということです」
天球長官「同行した技師は天上人だぞ?なぜ彼らまで殺害されたのだ?」
防衛長官「長官。地上種も善人のみではありません。地下種の悪事に手を貸し、利益を得るものがいます。そんな奴らの仲間と判断されたようです」
天球長官「なんということだ。貴重な技師をそんなことで失うことになったとは。次は失敗は許されん。今度は勘違いなぞ起きないだろうな?」
心配で仕方ない天球長官は何かを閃いたようで、更に話を続けた。
天球長官「技師につける護衛についてだが、我々が提供した天球制御パーツである"ドラゴン金属"で作成した武具を装備した者が同行してくれると、一番安心できるのだがね」
防衛長官「それについてですが、1つ大きな問題がありまして、その要望は断らざるを得ません」
そう言った防衛長官の顔つきが険しくなっていたことに天球長官は気づいた。