大聖堂報告会
戦士達が大聖堂に到着すると、指示を受けていた司祭が別室への案内を申し出てきた。
司祭「お待ちしておりました。案内致します」
他にも大聖堂入口には用事のある冒険者がいたが、彼らをかき分け、戦士達を通すことになった。
スカウト「用件も言わずにすぐに案内開始か。何だか特別待遇だな」
僧侶「待たされることもないですしね」
王を討伐したパーティーとして戦士達は顔を知られていたため、何者なのかを理解した他の冒険者達は、割り込みとも言える状況に不満を漏らすことは無かった。
向かう先はもうお馴染みの会議室を兼ねている別館だつた。
魔剣「やはりここか」
魔法使い「ホントにここ来ること増えたなぁ」
魔法使いの肩に止まったフェアリーが魔法使いに話しかけた。
ソーサ「そんなに来てるんだ。私達は滅多に来ないんだけどな」
魔法使い「大司祭様に会うときはここかなぁ」
魔剣「護衛も配置しやすいし、部屋も広いからな。警備の観点からも、機密保持の点からも都合が良いのだろう」
部屋に至る大扉の前には騎士が2名警護に立っていた。案内役の司祭が彼らに会釈すると、護衛は大扉を開けた。
部屋の中央にある無駄にデカいテーブルには、大司祭と2人の司祭が着座していた。
案内役の司祭は部屋に入ると、戦士達に着座を勧め、部屋の入り口で待機した。
大司祭「早速本題に入ろうか。冒険者ギルドでの報告については、簡単に内容の説明を受けた。大柄のリズマン、"神の使い"といったか、其奴はなぜ君らを攻撃せずに浮遊大陸勢力のみを狙ったんだ?我らの味方なのか?」
大司祭は両手を組んでテーブルに置くと力を抜いて聞く姿勢になった。
戦士「わかりました大司祭様」
戦士もそう発言すると大司祭を真っ直ぐ見て話し始めた。
戦士「彼に味方なのか?と質問したところ、敵ではないと返答を受けました」
大司祭「なるほどの。敵ではない、、、か。それで攻撃されなかった理由は?」
戦士「浮遊大陸勢力が"ルール違反"をしたからだと言ってました。何でも使用を禁じられた金属で作った武具を装備していたからとのことです」
大司祭は静かに聞いていた。
戦士「その金属は、神の使いが使う金属だそうです。我々の武具に使っていたヨスギル製は問題ないとのことで、攻撃されませんでした」
大司祭「なるほど。そういうことか。他には何かあるかね」
戦士「見たことの無い獣人種が透明な板に囲まれた部屋にいました。白衣の天上人がそれを外から観察していました。」
大司祭「ほう。他には?」
戦士「観察対象は異なりますが、同じく白衣の天上人から先ほど報告に提出したメモを貰いました。我々が武器を下げると友好的な印象で、敵意は感じませんでした。報告は以上です」
大司祭「先程の神の使いとやらだが、諸君が万全の状態で向き合ったら勝てそうか?」
その時ずっと話を聞いていただけの魔剣が、話に入ってきた。
魔剣「武器に手をかけた瞬間、死ぬな。俺たち全員がな」
大司祭は突然の発言者に顔を向けると口を開いた。
大司祭「それほどか。諸君でも太刀打ち出来ぬか。そうか、、、、まぁ、敵ではないなら良しとするか。あとはそのルール違反の金属の名前はわかるかな?」
戦士がオドオドしていると、ソーサが前に出てきた。
ソーサ「ドラゴン金属と言っていました。浮遊大陸ではそれを武具以外の何かに使っていたようですが、話の内容はよくかわかりませんでした」
大司祭は目をつぶり何やら考え事をしていたが、解決したのか、目を開き、晴れた顔つきになっていた。
大司祭「ふむ。とりあえずその神の使いとやらに攻撃される心配はないし、中央への道も見つけることが出来た。今のところは順調だな。引き続き探索を頼むよ」
そのセリフを聞いて隣に座る司祭が、大司祭に顔を急に向けた。その行為が視界に入った大司祭は司祭に訪ねた。
大司祭「何かね?」
司祭「あ、いえ、その。冒険者を浮遊大陸から引き揚げさせるのでは?」
大司祭はそれを聞いて、顎に指当てて、ふむと言うと司祭に手を挙げてわかったと合図した。
大司祭「1つ伝え忘れたことがある。中央から制御棟への道が判明したら、至急報告に戻ってくれ。そして、その際に他の冒険者に会ったら地上に帰還するよう伝えて欲しい」
そういうと隣に座る別の司祭に合図をした。
司祭は机の下から金袋を取り出し、テーブルに置いた。
司祭「情報提供の報酬だ。受け取り給え」
両手に収まる程度のサイズであったが、単なる報告にしてはよい収入になった。
質問した司祭は気にあることがあるようで、そのやり取りの最中も大司祭を見ていた。