大聖堂勢力1 とある騎士の疑問
学者が帰ると、部屋に残っていた騎士の1人が大司祭に駆け寄ってきた。
騎士「大司祭様、先ほどの夜を消すには、闇の宝珠の分離しかないという話は本当ですか?我々の勘違いなのですか?」
このセリフに何人かの騎士の心は動揺していた。
大司祭は慌てる素振りもなく返答した。
大司祭「ふむ。その辺を説明しておこうか。騎士団長!隊長格をここへ集合させよ」
団長「かしこまりました」
ほとんどの隊長格はここにいる。あとは学者を見送っている人と他数人だ。
団長が残っていた騎士に集合を指示すると、しばらくして部屋に騎士数名が入ってきた。
団長「大司祭様。全員集合致しました」
窓から外を見ていた大司祭は、背後から話し掛けられると振り返った。
大司祭「よろしい」
大司祭が部屋の奥にある大司祭の大机の横に行くと、騎士たちは整列し、大司祭の方へ向き直った。
団長「傾注!これより大司祭様よりお話がある。心して聞くように!」
団長が脇にどけると大司祭が中央に出てきて、騎士たちを前に話し始めた。
大司祭「さて、先程、浮遊大陸から来たという学者が、我々の認識に誤りがあると説明して帰っていった。
私が以前説明した、天にある光の玉を浮遊大陸で調整すれば闇の宝珠の力が消える、夜が無くなるという内容は誤りだ!とな」
一旦話しを止め、大司祭は騎士たちを見回した。
大司祭「先ほどのやりとりで、その話を信じたものがいたかもしれんが、、、それが彼らの手口だ。騙されんようにな」
再び話しを止めると、大司祭は騎士たちを見回した。
大司祭「浮遊大陸の住人は、極端に闇の宝珠の力を嫌う。
先ほどの彼らの説明も間違いではない。以前も皆の前で説明したことだが、もう一度言っておこう。
確かに闇の宝珠の力は消えないが、夜も今のように暗闇になるのではなく、気づかない程度に光量が落ちる程度のものだ。
我々にとっては影響は無いに等しい。
だが浮遊大陸の住人にとっては、それが気に食わんのだ」
一呼吸置いて、また話し始めた。
大司祭「自分たちのために、なんとしても闇の宝珠を分離したいのだよ。
分離により地上種と地下種が争うことなど、浮遊大陸の連中には関係ないからな」
騎士たちの落ち着いた様子を見て、最後に大司祭は付け加えた。
大司祭「さて、ここまで聞いて、何か質問はあるかね?」
1人の騎士が恐る恐る手を挙げた。
騎士「大司祭様の説明は十分にわかりました。
先ほどの浮遊大陸の使者の説明は、自分たちに都合の良い方向へ事を動かすための策であると。
しかし、大司祭様は冒険者の浮遊大陸からの撤退を彼らに約束し、闇の宝珠の分離を依頼していました。
これはどういうことでしょうか?」
確かに。という感じで数名の騎士が首を縦に振っていた。
大司祭「いうなれば、あれは彼らを信用させるための約束だな」
騎士たちはザワザワした。
大司祭「考えてもみたまえ。彼らは一度、分離のために派遣した技術者と部隊をこの大聖堂の入口の戦闘で失っている。それにもかかわらず、こうして再度分離のために使者をよこした。
リスクを取ってでも分離したいのがミエミエだろう?」
大司祭はニヤリとしていた。
大司祭「それに彼らにとって、闇の宝珠の分離技術者は貴重と見える。今回は安全策をとって同行させていなかったことが、その根拠だ」
大司祭は質問をした騎士を見て、話を続けた。
大司祭「そこで彼らの言うとおりにし、再度分離技術者をこの大聖堂におびき出し、始末しようと考えたのだ」
騎士たちにどよめきが起こった。
大司祭「彼らは次回来るときは、技術者を同行させると言っていた。その時は別の部屋へ誘導し、そこで私の合図を待って始末するのが諸君の次の大仕事だ。その為に、彼らの要求である冒険者の撤退を了承したのだよ」
騎士たちは静かになった。
大司祭「さて、事は大詰めだ。ここで私の計画を皆に話しておくことにしよう」
そう言うと大司祭は真剣な眼差しを騎士たちに向けた。