謁見
大司祭のいる部屋に通された学者2名は、部屋に入ると驚いた。
そこには騎士団団長の他、隊長格の騎士が数人待機していたからだった。
学者1「異様な空気だな」
学者2名が部屋の中央に来ると、影から大司祭が現れた。
大司祭「ようこそいらっしゃいました。何用ですかな」
ニコニコと対応する大司祭と、脇で待機する騎士の組み合わせが変な空気を醸し出していた。
学者1「あなたが大司祭様とお見受けします。私達は浮遊大陸から来ました。大司祭様と地上に暮らす人々には、天球に関して認識に誤りがあることを伝えに参りました。」
大司祭「ほう」
大司祭は2人の学者を見ながら、驚く様子もなく返答した。
学者1「天球に関しては、長年管理している我々のほうが熟知しております。大司祭様が闇の宝珠は光の宝珠で浄化でき、天球を調整すれば夜も消え去る。そのように説明していると耳にしました」
大司祭「確かにそのように説明しましたな」
顎に手を当て、頷いていた。
学者1「その認識が誤りであると断言します。闇の宝珠を光の宝珠で浄化しても夜は消えません。天球を調整しても同様です。夜を解消するには闇の宝珠の分離しかありません」
大司祭「なるほどの」
学者1「夜の除去について説明しているくらいですから、まさかとは思いますが、夜が消えなくて良いなどど、お考えではないでしょう?」
大司祭「今回、闇の宝珠を分離できる技術者が同行しているのですかな?」
思っていたのとは違う返答があり、若干戸惑いつつも学者は返答を始めた。
学者1「いえ、数日前に技師を伴い、ここを訪問した際に技師もろとも我々の仲間が殺害されましたゆえ、今回は安全が確保されるまで技師は派遣しません」
大司祭「ふむ」
学者1「話の内容は理解していただけたでしょうか?天球についての勘違いについてもです」
大司祭「お主らの言うことは理解した。次回来るときは、闇の宝珠を分離出来る技術者を伴うということでよろしいかな?」
学者1「理解されたのであれば、そのように手配致します」
大司祭「よろしくの」
学者2「大司祭様。そうと決まれば今浮遊大陸にいる冒険者達を引き上げさせてください」
大司祭「そのように通達しよう」
その言葉を聞いた騎士たちは驚いていたが、大司祭はそれを気にせず、道を開けるよう騎士に手で合図をした。
部屋の入口を塞いでいた騎士が両脇に退け、大司祭と学者を取り囲むように離れて配置されていた騎士は、包囲を解いた。
この行動を見て学者はホッと胸を撫で下ろした。
学者2「大司祭様に理解していただきましたし、冒険者の退去の言質も取れました。あとは退去を確認次第、技師を派遣するよう、上役に報告させていただきます」
学者はそう言うと頭を下げ、部屋を退出しようとした。
すると大司祭が近くの騎士に入口まで見送るよう指示を出し、学者と騎士数人は部屋を退出していった。