浮遊大陸勢力3
地上種が闇の宝珠をコボルト王から奪い、何故自分たちに不利な夜を出現させたのか。そして浮遊大陸に押し寄せる理由は何なのか。別勢力との争いもなく、平穏が続いていた浮遊大陸勢力は、いきなりの大事件発生と理由不明の地上種の奇行に困惑していた。
管理官「地上を調査していた学者より報告です」
なぜ闇の宝珠を地下から回収したのか、その理由を調査していた者たちが帰還した。
防衛長官「通せ」
ドアが開き、2名の学者が入室した。
防衛長官「学者である君等にこんなことを頼んですまなかったが、他に適任者がいなかったのでな。それで、何かわかったか?」
学者「はい。大聖堂の大司祭が闇の宝珠を回収し、光の宝珠で浄化してしまおう。そして地下勢力を弱体化させよう。そう言って冒険者を募ったようです」
防衛長官「何と浅はかな」
学者「結果、冒険者の一団が闇の宝珠を持ち帰ったようです」
防衛長官「ふむ。だが夜の訪れはどう対応するつもりなんだ?」
学者「夜の訪れに混乱しているかと思いきや、意外にも落ち着いており、大通りにはランプが大量に配置されていました」
防衛長官「夜対策をしていたのか」
学者「それだけではなく、夜の街では子供たちが暗闇を楽しんでいるようでした」
防衛長官「なんだと?」
学者「ある家族に聞いてみたところ、子供はダンジョンに入れず、暗闇を体験出来るのは寝る時だけ。暗闇をランプを持って移動する、ダンジョンみたいな体験は普段は出来ないから、楽しいそうです」
防衛長官「子供にとっては単なる遊びの場か。大人はどうなんだ?」
学者「大人も家の外でベンチに寝転がっていたりと、混乱しているというより、珍しい体験を満喫しているようでした」
防衛長官「なぜそんなに落ち着いていられるんだ?ずっと夜のままかもしれないという発想は無いのか?」
学者「大聖堂の大司祭がこの町の事実上のトップらしく、彼が昼と夜が交互に訪れると説明したそうです」
防衛長官「それでは夜が発生する分だけ、地上種には損ではないか。地下種が地上に這い出てくる生活が続くことに、反対運動は起きてないのか?」
学者「それが、大司祭がじきに昼だけに戻ると説明していたようです」
防衛長官「何を根拠にその大司祭とやらは声をあげてるんだか。愚者か?」
学者「それについては、冒険者を募る時に、浮遊大陸に行って天球を調整することで、昼だけに出来ると説明したそうです」
防衛長官「何だと?天球調整を知っているということか?まさか、、、」
学者「かつて地下種が闇の宝珠を地上に持ち出し、光の宝珠と融合させて夜をもたらした際に、我々浮遊大陸勢が闇の宝珠を光の宝珠から分離しました。その時の記録が残っていたらしいです」
防衛長官「なるほどな。当時の地上種は、夜の訪れに驚き、素直に闇の宝珠の分離を受け入れたということか」
学者「おそらく」
防衛長官「その大司祭とやらの話で腑に落ちないのは、天球を調整したところで、夜は消えないぞ。過去に分離した際に、誤って情報が伝わったのかもしれんな」
学者「だとすれば、大司祭とやらに、夜を消すには天球調整ではなく、闇の宝珠の分離が必要だと説明すれば解決しそうですね」
防衛長官「そうだな。全ては地上種の勘違いによる騒動か。まったく人騒がせな奴らだ。原因も判明したと言えよう。すまんが大司祭への説明の任を果たしてもらえないか」
学者「承知しました。ではこれより準備して、再度地上に向かいます」
防衛長官「頼んだぞ」