浮遊大陸勢力
少し時間は戻ります。
戦士たちが初めて浮遊大陸へ行ったときくらいのお話です。
ここは浮遊大陸にある防衛管理室。
浮遊大陸の秩序を維持するために、警察や軍隊のような武力と権力を持つ組織である。
部屋には機器が並び、魔法というより科学的要素の強い場所である。
部屋はヨスギル製のプレートで作られ、白をメインにした部屋に、モニターやパソコンのような機械類が並んでいる。
管理官1「長官!地下宝物庫の警報確認に向かった者からの応答がありません。同行した獣人兵の応答もありません」
防衛長官「何だと?全員からの応答なしとなると通信機の故障ではないな。増援を送り出せ」
管理官1「了解しました」
管理官2「いつもの誤報やコボルト共が侵入したのではないのか?」
その時、天井から吊り下げられた巨大モニターに、人物像が映し出された。
管理官2「長官!天球管理室より通信です」
防衛長官「わかった。つなげろ」
モニターの人物が別人に変わり、話し始めた。
天球管理長官「防衛管理室へ緊急連絡!天球に異常を確認した。闇の宝珠が持ち出された可能性が高い。至急現地確認をせよ」
「天球」
地上では光の玉と呼ばれている、空にある太陽のような役割を果たしている光の玉のこと。
防衛長官「了解した。対処する」
通信が切れ、モニターは暗くなった。
防衛長官「闇の宝珠が持ち出された?以前のように地下の獣人種が地上に闇の宝珠を持ち出したのか?それはできんはずだ」
管理官1「ええ、前回の持ち出し事件があってからは、対策として闇の宝珠の祭壇には地下種が触れられないよう細工をしてあります」
防衛長官「だとすると地上種が持ち出したことになるが、わざわざ自分たちに不利になることをするものか?」
管理官1「確かに。地上種にとって、夜の訪れは不都合しかありません。だとすると誰が闇の宝珠を地上に持ち出したのでしょうか?」
防衛長官「犯人探しは後にして、現に天球に影響があるなら、光の宝珠が闇の宝珠を吸収したということだ。ただちに分離させねばならんな。地上に回収部隊と分離技師を派遣しろ」
管理官2「長官!連絡通路に侵入者の痕跡があります!」
「連絡通路」
地下宝物庫から浮遊大陸へと至る部屋に続く通路のこと。
防衛長官「防衛用の獣人兵を向かわせろ。それと監督者も送り出せ」
「監督者」
獣人種の兵隊を指揮する天上人種のこと。
獣人種部隊の隊長は獣人種が務めるが、獣人種隊長の代わりに配属されることがある。ただし、やっていることは隊長と変わらないため、部隊員からは隊長と呼ばれることが多い。
管理官1「先ほども監督者が獣人兵と共にやられている可能性があります。監督者は後方待機されたほうがよろしかと。獣人兵は替えがありますが、監督者はそうではありません」
防衛長官「わかった。兵だけ送り出せ。兵には通路に誰もいないようなら戻るように指示をしておけ」
管理官1「わかりました」
防衛長官「コボルト王は何をしているのだ。まさか反乱か?」
防衛長官はそばにいた管理官と話し始めた。
管理官3「確かにコボルト王にはヨスギルの武具を渡してあるので、それを使えばヨスギル武具を使う我が兵を倒すことは可能です」
防衛長官「地上種の主要金属である、ミスギル製品に容易に対抗できるようにと、贈ったヨスギル武具を悪用されたのだろうか」
管理官3「どうでしょう。コボルト王が我々に反乱を起こしたところで、勝てないのは重々承知しているはずです」
防衛長官「となると、あとは地上種だが、闇の宝珠を欲しがる理由が奴らには無い」
管理官3「そうなんですよね。地上に持ち出せば1日が昼だけだった世界に、夜が訪れるようになるだけです。地下種にそそのかされた地上種の仕業の線しかありえませんね」
防衛長官「地下種であるコボルト王が地上でも生活できるようにするには、地上に夜を発生させるしかない。しかし地下種は、祭壇にある闇の宝珠には触れることができない。そこで地上種をうまく使って、闇の宝珠を地上に運ばせた、、、か」
管理官3「地下種はかねてより地上での暮らしを主張していました。大昔は夜が地上にもあったため、それが語り継がれているのでしょう」
防衛長官「バカな地上種どもめ。まんまとコボルト王に騙されたか?」
管理官3「ともかく事実確認が先ですね。その後しかる処置をするよう手配します」