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酒場



魔剣のあとについていき、宿に到着した。


魔剣「ここだ。空きがあるか確認してくる」


少し裏路地に入ったところにあるが、おんぼろという感じではなかった。


魔剣「皆で同じ部屋になったぞ」


戦士「お、いいねえ」


僧侶「では荷物を置いて食事に行きましょうか」



冒険者が多い町では、固定メンバーのいるパーティ用に大部屋が用意されていることが少なくない。


固定パーティではない冒険者は小部屋でいいが、大所帯ではそうはいかないからだ。


いろいろ相談するにも1部屋に収まれないと、パーティには拠点として使ってもらえない。


固定パーティは安定性が高いため、長く利用してくれる、つまりは収入が安定するので宿としても

うれしいお客だ。


魔法使い「魔剣さん、どこかいきつけはありますか?」


魔剣「前のパーティで使っていたところではあるがな」


戦士「そこへ行ってみましょう」


そういうと魔剣の肩を叩き、案内を促した。


魔剣「いいのか?」


一同は首を縦に振った。


少し離れたところにある大きな食事処にきた。


魔剣「ここの肉料理は塩が利いていてうまいぞ」


魔剣「ここは自分で飲み物や食い物をカウンターに取りに行く形式だ」


僧侶「そんなタイプもあるんですね」


戦士「注文のたびに人を呼ばなくていいのは良いな」


各自が飲みものと食事を手にテーブルに戻ってきた。


戦士「さて、固定パーティ結成記念とこれからの繁栄を祈って、乾杯!」


僧侶「大袈裟ですねえ」


そういうと皆で乾杯した。


魔剣「やはりこの塩加減がたまらぬ」


僧侶「これはいいな」


皆が食事を楽しんで時間が過ぎていった。





戦士「さて、腹も膨れて落ち着いてきたな」


スカウト「明日からの予定はどうするんだ?」


戦士「とりあえずはシークレット探しで新たな道を見つけることかな」


スカウト「だよな。任せておけ」


魔法使い「前回みたく、明日はお休みで明後日活動開始なの?」


戦士「そのつもりだが、意見があれば変えることも検討するよ」


スカウト「感覚が鈍るってのもあるが、それ以上にゆっくり休みたいな」


僧侶「ダンジョンを無理な休息で過ごした体ですからね。ゆっくりしましょう」


魔剣「決まったな」


戦士「では予定通り明後日再開で」


一同は頷いた。


魔剣「あぁ、宿は専用地下室もあるから好きなほうで休んでくれ」


僧侶「専用地下室なんてあるんですか」


魔剣「ああ。固定パーティは人数が多い。だから低階層に部屋があって、そのまま地下室とつながっているんだ。逆に個人や少人数用部屋は高層にあって、地下室は別途設けられている」


戦士「自分のいた宿は別設置だったな」


魔法使い「私も」


スカウト「専用部屋だといろいろ都合いいな」


僧侶「地下室までは報告しあってませんでしたが、当たりの宿ですね」


そう言うと一行は会計を済ませ、宿へ戻っていった。




時は過ぎ、再開の日。


戦士「最終確認してくれ。問題なければ探索再開だ」



準備が整い、またダンジョンへ入っていく一行。


僧侶「このダンジョン入ってすぐのランプ通りも見慣れてきましたねえ」


戦士「最初は圧倒されたが、今となってはダンジョンに来たなってことしか感じないな」


魔法使い「そこは変わらないのね」


魔剣「前回、行き止まりで道がなかったから、今回はスカウト頼みのシークレット探しか」


スカウト「あぁ。調査に神経使うから、戦闘であまり体力は使いたくないな」


一行は地下3階へ戻ってきた。


スカウト「前回のシークレット通路の先を調べたい」


戦士「了解した」


スカウトを先頭に歩を進める一行。


前方から冒険者の一団がやってきた。


冒険者「やあ、これから探索かい?」


戦士「そうなんだ。そっちは帰りか?」


冒険者「そうだ。気をつけてな」


戦士「おぅ!」


互いに挨拶するとそれぞれの目的に向けて歩いて行った。



スカウト「よし、このあたりから始めるか」


そう言うとスカウトは周囲を気にしながら進んでいった。


調査しながらなので、歩みは遅い。周りを前衛が警戒している。



しばらく続けていると、スカウトは何かに気づいた。


スカウト「あったぞ!こんなところに・・・」


なにやら発見したようだった。


戦士「やけに通りやすいように加工された隠し扉だな」


僧侶「魔物が作ったものや、自然にできたものではないですね」


慎重に進んでいくと前方にドアが見えた。そのドアに何か掛かっている。



”休憩所”



戦士「ん?休憩所?」


魔剣「噂の酒場か?」


スカウト「中に入ってみるぜ」


ゆっくりとドアを開けると屈強な戦士が立っていた。


門番「お、いらっしゃい」


店員「ん、見ない顔だな。金をおとしてくれるなら大歓迎だ。

たまには息抜きと行こうぜ!その辺で好きにやってくんな」


そういうと奥へ引っ込んでしまった。


僧侶「やはりここが酒場のようですね」


魔法使い「ほんとにその辺で飲んだくれてる」


魔剣「寝てるのまでいるぞ」



木製の古びたテーブルには空きビンが転がっていた。

空いたスペースでくつろいでいる者や出撃準備をしている冒険者の姿が目に入った。



スカウト「下層への情報収集にもよさそうだな」


何人か話しかけやすそうな雰囲気の人物に接触してみた。



しょんぼり魔法使い「ん?ああ、下層への階段なら、酒場の近くの隠し扉から行けるぞ。

それより聞いてくれ!うちのリーダーったらよ、いい武具が欲しいとか言って、私の杖を売っちまったんだよ。

1人が強くなったってしょうがねえのに」


そういうと残念そうな顔に戻った。


魔法使い「杖持ってたのか。いいなー」


魔法使いはスカウトを見た。


スカウト「宝箱を探しな。まずはそれからだ」



ケガをした冒険者「宝箱か。ゴブリンどもの収納箱を狙うんだな。ただ・・・

俺みたくケガして後悔しないようにな。

もうちょっと行けるだろう、ここまで来るの大変だし。

そんな理由で無理した結果がこれだよ」


冒険者は続ける。


ケガをした冒険者「まだ行ける!そんな余裕があるうちに戻りな。

まだ行ける!そう言った直後に死んでしまった仲間がいたよ・・・」


魔法使い「あなたどうやって町に戻るつもり?」


ケガをした冒険者「私は救出メンバー待ちだ。無理してここから町へ戻る気はないから安心しな。

心配してくれてありがとな」


僧侶「救出メンバーがいるってことは固定パーティですね」


戦士「どういうことだ?」


魔剣「固定パーティは地上やダンジョン内の拠点でメンバーの一部を残して全滅を防いだり、先行パーティの救助要員として残ることがあるんだ。この拠点は少しずつ前進させることが多いが、地上から休みなしで到達できるところに設定されるのが普通だな。

大所帯パーティは、全員で動くと多すぎて身動き取りにくいことがあるからな」


戦士「なるほどな」


魔法使い「私たちは固定だけど、そんなメンツいないね」


魔剣「人数ぎりぎりだから仕方ないな。それにあと2,3人増えたところで、そいつらだけでダンジョンを進むほうが危険だ。素直に回収部隊に依頼したほうが安全だろう」


スカウト「大型パーティの特権か」


魔剣「そういうこった」



横になった冒険者「ん?ああ、地上は暗くなることはないから、寝るときは地下室だが、ここならそんな心配は不要だな。気を緩めると疲れてるからすぐ寝れるんだ」


そう言うと起こした体をまた横にした。


僧侶「休息中か」


魔法使い「ダンジョン内でこんなにダラけられるなんて、貴重な場所ね」


周りより明るい部屋が見えてみた。


天上人「おや、あなた方も休憩ですか」


スカウト「天上人とは珍しい」


天上人「地上種とパーティを組んでいるんですが、彼は薄暗くないとゆっくりできないと、部屋を出ていってしまったんですよ」


複数種が混じるパーティは時に種族の違いによる扱いに苦労するようだ。


戦士「あまり有用な情報はないな」


僧侶「なにやら偉そうな魔法使いがいますね」


偉そうな魔法使い「ん?遺物は見なかったかだと?地下5階で見てきたぞ」


戦士「お、マジか。まだあるんだな」


偉そうな魔法使い「私は地下遺跡を調査している学者での。つい先ほど調査から戻ってきたところなんだよ」


学者は続けた。


学者「お前さん方。今、夜と言われている状態は少しだけ天の光が弱くなる程度で明るいままだが、

過去の文献によると完全な暗闇の”夜”があったそうだ。私はその真偽を確かめる研究をしておる」


魔法使い「ふぅん」


どうでもよさそうだ。


僧侶「地下種にはうれしい時代ですね」


学者「まあ、その文献もだれかが妄想で書いたものかもしれんし、生きているうちに解明できるのかのう」


そういうと酒をあおり始めた。


学者「やはり仕事のあとの酒はたまらん!」


魔法使い「のんべか」


戦士「我々も少し休んで、情報にあった隠し扉を見つけて階段を見つけよう」


スカウト「感覚が鈍るから酒はやめとくぜ」



一行は休憩をしたのち、酒場を後にした。



スカウト「さて、再開か」


戦士「スカウトさんだけが頼りです!頼みましたよ」


スカウト「ああ。それは承知している。代わりに魔物への警戒は頼んだぜ」


戦士はまかせとけ!と言わんばかりに拳を挙げて答えた。



僧侶「ドアの先が小部屋って場所がいくつか続きますね。休憩にはいいんですが、階段が見つかってほしい」


魔剣「ドア開けたら魔物!よりいいだろ」



探索を続けていた一行。またドアが前方に現れた。


スカウトは慎重にドアを開けると、何やら人影が見えた。


スカウト「冒険者か」


僧侶「見張りも立てずに全員で寝ているとは不用心ですねえ」


部屋の奥で熟睡していると思われた冒険者たち。


近づいてみると、



全員死んでいた・・・・



魔法使い「あ・・・」


魔剣「これは・・・」


スカウト「冒険者プレートが首にかかったままだな。まだ発見されてないのか」



冒険者プレート。だいたい首から掛けるか、ポケットに入れているプレートで、所属や名前が刻まれている。


スカウトは数人のポケットを探った。


さて、どうするか。冒険者ギルドに報告すると回収部隊がやってきて対応してくれ、褒章もわずかに入手できる。


戦士「プレートを取った場合、すぐに町へ戻らねばならない規則です。

階段を見つけたいから、これは放置ですかね」


魔剣「仕方ないな」


魔法使い「ほかのパーティも自分たちの都合と天秤にかけて放置していったのかもね」


一行はこの場を後にした・・・



しばらく無言の探索が続いたとき、スカウトが何かに気づいた。


スカウト「お、ここは新しい場所だな」


そういうと細い隙間を通り、別の通路に出た。


戦士「下層への階段から上がってくる冒険者がいれば、階段までの道に苦労しないのに、会わないな」


僧侶「タイミングなんですかね」


スカウト「階段への道が1本とも限らんしな」


戦士「ああ、そうか」


岩に囲まれた茶色い通路を進んでいくと、ドアが見えてきた。


慎重にドアを開けると、広い空間に出た。


スカウト「前方に階段発見だ」


おぉー!一行は声をあげた。


戦士「よし行こう!」


一行は階段を下りて行った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 宿屋や酒場は小説ならではですね。盛り上がってハメ外すのも小説だからか。 [一言] 肉焼きに塩で食べたくなりました。連れて行ってください(笑)
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