帰還
ドアから見える建物の外には、緑の芝生が広がっていた。
戦士「外、、、ですね」
隊長「外へ出て浮遊大陸かどうか確認するぞ」
全員で外に出ると、緑の芝生には石畳で道が作られ、別の建物へとつながっていた。
石畳の通路は5メートルほどの広さだった。
50メートルくらい先には石造りに見える白い建物が見えた。高さは10メートル、幅は50メートルほどで、通常の家屋なら3階建て相当の高さだった。
戦士「あちらにも建物がありますね」
隊長「ああ。まずは此処がどこなのか、それを探らねばならんな」
建物以外の空間は、霧がかったように白くなっていた。
スカウト「あの霧の先を調べるか」
隊長「君等の方が冒険慣れしているだろう。ここは君等の判断に従おう」
なんでも命令してくるかと思いきや、なんとも話の分かる隊長だった。
一行は石畳の道を外れ、霧の中へと入って行こうとした。しかし進めども霧には到達できなかった。
やがて崖なのか緑の芝生が切れた場所が見えてきた。その先はやはり霧で見えない。
スカウト「あそこで芝生が見えなくなっているということは、崖か段差だろう。とりあえずあそこまで行ってみるぞ」
スカウトを先頭にまた進んだ。
崖と思われる場所に近づいたとき、目の前の霧が晴れ、青空が目の前に広がった。
一行は驚きに包まれた。
前方には青い空と雲が見えていた。
スカウト「目の前に空?」
戦士「崖の先はどうなってるんだ?」
崖に近寄るとその先に地面はなく、空が足元に広がっていた。
隊長「浮遊大陸、、、だな。空が足元にあるとは、、、」
驚きを隠せない隊長だった。
戦士「落ちたら死にますね。あまり崖に近寄らないようにしましょう」
その言葉を受けてみな一歩下がった
隊長「場所は確認できた。これを大司祭様に報告せねば。よし!戻るぞ!!」
僧侶「もう少し探索したいですが、何が出るかわからないですもんね」
魔法使い「すごいとこだね。浮遊大陸の人達は落ちたりしないのかな」
魔剣「いつ獣人種に襲撃されるかわからんぞ、あまり気を抜かぬようにな」
不思議な景色の連続で浮ついた気分を引き締めるにはよい言葉だった。
隊長の号令で一行は最初の部屋に戻った。
部屋に戻ると隊長は皆に向けて話し始めた。
隊長「ここが浮遊大陸であることを確認した。確かに我々は空にいる状態だった。これより帰還する!この先の調査は別働隊の仕事である」
そう話すとカードキーを取り出し、プレートに当てた。
ドアが閉まり、少ししてから
"ぶーーーーーーーん"
という低い音を響かせ、また静かになった。
そしてドアが開いた。
そこに見えるのは、先ほどまでの広い通路ではなく3メートルほどの幅の通路だった。
隊長「宝物庫への道か?戻ってきたようだな」
魔剣「地図魔法でも宝物庫通路に戻ったことを確認できたぜ」
隊長「そうか。ならばこれで任務達成だ。冒険者諸君には成功報酬が支払われるだろう。明日、大聖堂で受け取ってくれ。とりあえず今日は宿や拠点に戻るといい。我々騎士団はこれから大司祭様に報告に行く。冒険者諸君は解散!」
号令が掛かり、冒険者はパーティーごとに地上へ帰還していった。
戦士「何だか凄いもの見ちゃいましたね」
僧侶「昔話にしか出てこないものが実在していたんだなと思うと、興味が尽きませんね」
スカウト「これであとは報酬貰って終わりだな」
魔法使い「これからはダンジョン探索で金策ね」
魔剣「浮遊大陸の調査は気になるが、生活もあるからな」
戦士「魔剣さんも僧侶さんと同じで気になりますか?」
魔剣「気にならないと言ったら嘘になるな。やはり伝承でしか無かったものに実際触れると、、な」
僧侶「私は浮遊大陸の調査隊に入ろうかとも考えていますよ」
スカウト「おいおい、このパーティーの回復役はどうするんだ?」
戦士「浮遊大陸は、まだ脅威が無いとも限らない場所ですよ?」
僧侶「生活費もありますが、やはり浮遊大陸が気になりますね。一緒に皆とやってきたので、ここでパーティーをほっぽりだしては行きにくいですから、私の代役が見つかったら、調査隊に行こうかな」
魔法使い「もう心は決まってるみたいね」
僧侶「ええ、この浮遊大陸調査の話が出たときにね」
戦士「まあ無理強いはできないからな。残念だが代役を探しつつ、ダンジョン探索を続けよう」
スカウト「話もまとまったようだし、宿に戻るか」
魔剣「明日は成功報酬で大金が手に入るな。楽しみだ」
皆は不思議な景色を見た興奮と、明日の報酬への期待で最高の気分で宿に戻っていった。