偶然
どのパーティーも、黙々と調査を継続していた。
そんな最中に魔法使いが壁から離れて、フラフラと歩き出した。
そして祭壇近くまでやってきた。
魔法使い「あー、もう、つーかーれーたーっ」
そう言うと座り込み、その場で横になってしまった。
スカウト「あのバカ、何やってんだ。他の冒険者がいるのに、いつもみたいな事しやがって」
スカウトはそう言うと魔法使いの方に歩き出した。
魔法使いの声を聞いた戦士も、同じく向かった。
戦士「魔法使いさん、他の人がいるとこで、そんな事してると変な目で見られますよ」
戦士が立つように促すと魔法使いは戦士の方を見て、渋々起き上がった。
スカウト「座ってるだけならまだマシか」
魔法使い「もー、何よー。立てばいいんでしょ、立てば」
そう言うと、両手を床につき、手に力を込めてしゃがむ姿勢になった。あとは足を伸ばせば立てる。
そんなとき、床が光りだした。
スカウト「!?」
魔法使い「なになになに!?」
床の光が四角い形を作り出した。
騎士が異変に気づいて駆け寄ってきた。
騎士「何事だ!」
騎士は床が光っていることを確認した。
騎士「貴様!何をした!」
床に手をつき、しゃがむ姿勢で固まっている魔法使いを問い詰めた。
魔法使い「知らないよ!立とうとしたら床が光ったんだもん」
その時、床がドア状のモノに変化した。
床収納でもするかのような作りのドアだった。
騎士「これは!」
騎士は魔法使いを押しのけると、ドアを開いた。
床下には人が一人入れるスペースがあり、そこは1メートルほどの階段になっていた。
階段の先には何やらスイッチらしきものがみえた。
スカウト「騎士さんよ。俺が見てくるぜ」
スカウトの提案に騎士は従うことにした。
スカウトが階段を降りていくと、他の冒険者も異変に気づいて集まってきた。
スカウトは壁を慎重に調べると、スイッチの他に縦2ミリ横5センチほどの穴が空いていた。
スカウト「この穴、ワープステーションにあったのと同じ形だな。あの時の板を入れてみるか」
スカウトは、収納ボックスから板切れを取り出すと、穴に挿し込んだ。
しかし何も起きなかった。
スカウト「こちらは変化なしだ。外は何か起きたか?」
その声を聞いて騎士がすぐに部屋を見回した。
しかしどこにもドアは見えなかった。
騎士「いや、ドアは現れてないな」
スカウト「ハズレか。こっちのスイッチも押してみるか」
穴の上にあるスイッチを押したが、何も起きなかった。
スカウト「何も起きねーな。外はどうだ?」
再び騎士が部屋を見回すが、変化はなかった。
騎士「何も見た目の変化はないな」
スカウト「なら、再調査だな。今度は何か見つかるかもしれん。あとは王の間に変化ないか、確認してくれ」
騎士「わかった」
騎士は、別の騎士に王の間を確認するよう命じると、部屋の監視を継続した。
スカウト「何か反応あると思ったんだがな。魔法使いさんよ、同じように床に魔力込めて調査をしてくれ。特に祭壇周りだ」
魔法使い「うーん。わかったよぅ」
僧侶「我々は壁の調査に戻りましょうか。何か変化があるかもしれませんから」
そのやり取り聞いていた他のパーティーも行動に移した。
しばらくすると王の間を調べに行った騎士が戻ってきて、報告した。
別騎士「王の間に変化はありません!」
騎士「そうか、わかった」
騎士は、再び大声で部屋にいる冒険者に呼びかけた。
騎士「王の間に変化はない。この部屋を調べなおせ!」
大声に振り返った冒険者達だが、何だそんなことかと作業に戻った。
戦士「魔法使いさん、祭壇とは関係ない場所だけど、この部屋の入口付近の床を調べてもらえませんか?何か引っかかるんです」
床の調査をしている魔法使いに戦士が声をかけた。
魔法使い「スカウトさんはここを探せって言ってたけど、無視していいの?」
戦士「リーダー権限てことにしとくか」
戦士は笑いながら答えた。
魔法使い「怒られるのは私、ヤだからね。じゃあリーダー様の言う通り、入口付近の床を調べますか」
そう言うと、魔法使いは立ち上がり、宝物庫入口付近に移動した。その後ろを戦士がついていった。
皆がまだ調査をしているとき、それは起きた。
突然一箇所の壁がドアに変化し、ドアから何者かが、出てきた。
武装した獣人種達だった。