宝物庫の謎
ダンジョン探索準備を終えて、あとは転移魔法で現地に飛ぶだけだ。
ダンジョン入口近くには司祭と使用人がいる。どうやら突入する冒険者を確認しているようだ。
戦士「ホントに突入時期と順番確認してるんですね」
スカウト「ご苦労なこった」
僧侶「そんな事しなくても、皆きちんと依頼は果たすはずですけどね。ノンビリしても経費がかさむだけというのが、わかってないんだろうな」
司祭と使用人を横目に転移を開始した。
一行の周りに光が溢れた。そして光が消えたとき、そこには誰もいなかった。
地下宝物庫
魔法使い「前室に到着よ」
スカウト「やはり直接は飛べないんだな」
魔法使い「王の間と宝物庫は、転移魔法が弾かれることに変わりは無いわ。王がいなくなってもね」
戦士「うーん。死んで時間が経過すれば、変わると思ったんですけどね」
スカウト「まあ宝物庫はすぐそこだ。王の間の前室ってだけでもありがたいな」
王の間に入ると大聖堂の騎士たちが部屋を調査していた。
騎士「冒険者か。この部屋は我々が調査している。お前たちは宝物庫を頼む」
戦士は頷くと王の間の奥にある宝物庫に向かった。
そこには騎士数人と冒険者のパーティーが複数いて、各々が調査をしていた。
スカウト「すでにこんだけの人数で調べてるのに、発見できてねぇのか。本当にあるのか?」
戦士「大司祭様の話では絶対あるようだけど」
僧侶「とりあえず我々も探索の仲間に入りましょう」
魔法使い「じゃあ言われた通り、壁に魔力注いでいくね。シークレットあるかなぁ」
スカウト「俺は調査で発見に努めるぜ」
僧侶「魔剣さんも一緒に壁に魔力注いで、シークレット探ししましょうか」
魔剣「わかった」
戦士「一番調査の役に立たなそうなのは自分だけか。素人目線で調査してみるかな」
戦士は笑いながら言った。
しばらくするとあちこちで、みつからねぇな、ホントにあるのか?もう一度調査だ!といったセリフが聞こえてきた。皆苦労しているようだ。
その時だった。
バチバチと音がすると、痛っ!という声が聞こえた。
部屋の中央にある、もともとは闇の宝珠を保管していた祭壇の方からだった。
コボルト種冒険者「痛え。なんだよ、まったく」
騎士「何をした?」
騎士が問い詰めるようにコボルト種冒険者に聞いた。
コボルト種冒険者「何もしてねぇよ。ただ祭壇調査しようと燭台に触れただけだ」
手を擦りながら、4つある燭台を指さした。
騎士は、恐る恐る燭台にふれると、何も起きなかった。
騎士「何も起きないぞ?何をしたんだ?」
騎士が怪しんで再度コボルト種冒険者に問いかけた。
コボルト種冒険者「ホントに何にもしてねぇよ」
コボルトは抗議の声を上げた。
騎士「ならばもう一度触ってみろ。今度は我々が見ている前で、だ」
コボルト種冒険者「くそっ。何でだよ!、、、、まぁそんなに睨むなよ、わかったよ!触ってやるよ!」
仕方がないといった感じで、コボルト種冒険者は騎士の要請に応じることにした。
またもや、バチバチっと音がして、痛っ!という声も発せられた。
コボルト種冒険者「わかったろ?俺は何もしてねぇだろ?」
騎士「確かに、、、何事だこれは」
騎士は近くにいた冒険者に声をかけて、燭台を触るように指示をした。
しかし何事もなく、燭台に触れることができた。
騎士「冒険者だからダメというわけではないのか」
騎士が首を傾げていると、別の騎士が提案した。
別騎士「他の冒険者にも触らせて調査しましょうか。もしかしたらシークレットドアに関係のあることかもしれませんから」
騎士「なるほどな。やってみるか」
騎士は、部屋を調査する冒険者達に大声で呼びかけた。
騎士「シークレットドア探索のために、諸君にはこの燭台を、一人ずつ触ってほしい」
突然変なお願いをされた冒険者たちは、わけがわからないよといった様子で指示に従い始めた。
バチバチっと音が聞こえ、痛っ!と言う声も聞こえた。どうやらショックを受けた冒険者が出たようだ。
騎士「冒険者にも該当者が出たか」
ショックを受けた冒険者が騎士の前に並べられた。
コボルト種、獣人種、吸血鬼種の冒険者だった。
騎士「うーん。見事に地下種冒険者だけだな」
騎士は該当者を眺めながら言うと、
別騎士「職業ではなく、種族に反応したということでしょうか」
騎士「ハッキリとは分からんが、その可能性はあるな」
別騎士「何故、地上種ではなく、地下種なんですかね。闇の宝珠の持ち出しを防ぐ目的なら、地下種ではなく、地上種に反応しないと意味ないのに」
騎士「確かにそうだな。王が死んで効果が変わったのか?なんにしても、ドアは出現しなかった。これはシークレットドアとは関係ないかもしれんな」
騎士は冒険者に作業に戻るよう指示を出した。
スカウト「さっきから燭台でなんかやってるが、警報が鳴らねぇな。俺等が宝珠を盗った時はすぐに鳴ったのにな」
僧侶「宝珠がないと鳴らないのかもしれませんね。守るものないのに鳴っても仕方ないですから」
スカウト「それもそうか。意外に優秀なトラップ装置だな」
そう言うと、また探索作業に戻った。