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前金

翌日、一行は前金受取のため、大聖堂に向かった。

外は暗かったが、道にはところどころにランプが置かれ、辺りを照らしていた。


戦士「何か町中でランプを見るのも変ですし、同じ町なのに、なんだか違うところにいるみたいだな」


スカウト「見慣れた光景が見えないからな。このあたりだと大聖堂が遠くに見えるが、今は暗い空が見えるだけだ」


魔法使い「ランプに照らされた街って、何だか新鮮な景色ね」


僧侶「寝る時に暗い部屋を使いますが、どこもかしこも暗いのは不便ですねぇ」


魔剣「宿の主人も、廊下や部屋を照らすランプの調達が大変だと言ってたな」


スカウト「ランプを売ってた店は大儲けだな。今ならランプの売却はいい金になるかもな」


スカウトが笑いながら言った。


戦士「生活必需品なら、すぐに値は落ち着きそうですけどね」


今まで誰も経験したことのない夜の町を、おしゃべりしながら移動していた。

家からは子供たちが、通りに出てきて初めて経験する夜の町並みに興奮しているのか、はしゃぎまわっていた。


スカウト「子供は呑気だな」


魔剣「仕方なかろう。子供は当然ダンジョンに行けないから、暗闇を体験できるとこといったら寝室くらいしかないからな」


通りの向こうから、大聖堂の騎士の一団が歩いてくるのが見えた。

手にランプを持ち、左右をキョロキョロ見ながら移動しているところから、警備のための巡回だろう。


騎士「冒険者か。不審者がいたら対応してくれるとありがたいな。我々だけでは手が回らん」


戦士「ギルドに依頼は出してるんですか?」


騎士「出しているが、まだ応募が少ないようだ。時間を拘束されて大したカネにならんなら、冒険者はダンジョンを選ぶだろうよ」


スカウト「だな。人が集まらないなら、上に増額を要求したほうがいいぜ」


騎士「そのつもりだ。まったく厄介な現象だな、夜というやつは」


騎士はヤレヤレといった仕草をし、ため息をついた。


魔法使い「なら、今まで見れなかったこの景色を楽しみながら仕事すれば?」


騎士「呑気なことを言ってくれるな。だがそれも一つかもしれんな。ありがとよ、お嬢さん」


魔法使い「へへー」


魔法使いは褒められて?少し嬉しそうだ。


魔剣「ランプ調達か。ランプ魔法使えるやつなら、商売になるな」


僧侶「魔法唱えて、ボケーっとしてるなんて仕事はしたくないですよ」


魔剣「座ってボケーっとしてるだけでカネになるんだぞ?」


魔剣はからかうように僧侶に言った。


僧侶「私はやりませんからね」


スカウト「当たり前だ。アンタは俺たちの治癒って大事な仕事があるからな」


歩きながらスカウトは後ろを振り返り、僧侶に言うと、僧侶か反応した。


僧侶「何もしないより、そちらのほうがいいですね。カネになるし」


スカウト「拾いものがあればな」


いつもと違う光景に、皆も何か感じるのか、いつも以上に無駄話が弾んでいた。


戦士「外で寝てる人がいますね」


魔剣「寝室以外で暗い場所なんてなかったからな。新体験ってところか」


スカウト「町中なら危険もないか」


僧侶「ダンジョンではこうはいきませんからね」


庭にテントを張ってダンジョン野営体験を始めている子供も見えた。


魔法使い「みんな、いろんなことしてるねー」


戦士「暗くなって不安になってるかと思ったが、そうでもないのかな」


僧侶「大司祭様が時間経過で明るくなることや、いずれはこの闇が解消されることを説明したからですかね」


魔剣「それで問題なしと判断されたか」


スカウト「で、この騒ぎか。危険がないなら闇を楽しもうってか」


戦士「騎士は、見回りの仕事が増えて大変そうですけどね。他の人も仕事に支障ないのかな」


魔剣「ランプでどうにかなるならいいが、そうでない職は明るくなるまで仕事中止するしか無いだろうな」


魔法使い「光に照らされた街並みも綺麗で良いものね」


戦士「いくらするんだろう。このランプ代」


スカウト「これだけの通り道にランプを設置するのも大変だが、よくストックがあったな。こうなることを大司祭は予測して用意してたのかもな」


歩いていると闇の中から大聖堂が浮かび上がってきた。暗闇に白い壁がうっすらと見えた。


大聖堂入口はいつものように司祭が立っているのが見えた。

戦士が前金の受取に来たことを告げると、司祭自ら案内を始めた。そして、いつもの会議室として利用している離れの建物へ向かっているようだ。

途中で何組かの冒険者とすれ違った。皆、前金を受け取ったのだろう。

建物に到着すると、部屋の中央にあるデカいテーブルには人だかりができており、テーブルを挟んで司祭と冒険者が立っていた。


司祭「あちらのテーブルでお渡ししております」


司祭はそう説明すると部屋を出ていった。


僧侶「さっさと受け取って探索準備しましょうか」


スカウト「そうだな。リーダー、頼んだぜ」


スカウトに促され、戦士はテーブルに近づいた。


戦士「前金を受け取りに来た」


簡単に用件だけ告げると、司祭はテーブルの下から金の入った袋を取り出した。


司祭「こちらが前金となります。額は先日の説明とおり、成功報酬の40%です」


両手で抱えるくらいのサイズがある。大きなスイカくらいといえばよいだろうか。

戦士が袋を抱えながら、壁際で待つ皆のもとに帰ってきた。


スカウト「思ったより多いな」


僧侶「あとは何日で任務達成できるかですね。あまり時間かけると、この前金もはした金になってしまいます」


戦士「この袋の額が高いと思えるのも、短期間で任務達成した場合ですもんね。そうでなければ時給が悪くなる一方だ」


スカウト「貰うものは貰った。さっさと準備するか」


魔法使い「そういえば、あの時の募集に応じた人たちみんなで一斉に出発するんじゃないのね。バラバラかぁ」


僧侶「どうしました?」


魔法使い「だって先に入ってさっさと見つかったら、あとから来た人たちは仕事しないで成功報酬を貰えるの、ズルくない?」


戦士「それについては、ダンジョン入口で入った日時を記録して、それにより成功報酬を変えると言ってましたね」


スカウト「なるほど。となると、あまりゆっくりしてると成功報酬が減っちまうな」


魔剣「ならば、急ぎ支度をして出発しよう」


戦士「そうですね。ダンジョン移動は転移魔法でお願いしますね」


魔法使い「うん、わかった」


一行は急ぎ大聖堂を後にした。



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