相談
大司祭の去った会議室では、各パーティーがそれぞれ集まって話し合いをしていた。
案内役の司祭と、席にいた2人の司祭は、各パーティーのやりとりを見ていた。
スカウト「そもそもなんだが」
スカウトが突然切り出した。
スカウト「俺は生活のために資金を稼ぐ目的で、今回のダンジョン攻略をしてきた。武具の売却益はなかなかのもんだっただろう?」
そういってメンバーを見渡す。
スカウト「今回の話は"儲け"になるのかが気になるんだよ。別に英雄や勇者になりたいわけじゃない。生活費が目的だ。その解決手段がダンジョン探索と売却益だった。今回の調査は金額が提示されているが、転移装置を発見できないと収入はゼロだ。そこが微妙なんだよな」
魔法使い「そうね。私も仕送り目的だから、入るかわからない大金より、確実に入る売却益のほうが魅力的かな」
僧侶「昔話や伝説の類の浮遊大陸発見は、魅力的ですけどねえ」
魔剣「収入ゼロが続くと困るのは事実だな」
戦士「となると、宝物庫調査とは別に下層探索をしないとダメか」
スカウト「そうなるよな。となると、宝物庫調査するよりも、下層探索のみをしたほうがいいんじゃないかと思ってな」
魔法使い「別に大聖堂の勲章とか追加でほしいわけじゃないし、この話を降りるのはどうなのかな」
その時、こちらを見ていた司祭が手を鳴らした。
司祭1「皆様。各パーティーでそれぞれ話し合いをしているようですが、話忘れたことを追加します」
大声で発せられた司祭の言葉に全員が顔を向けた。
司祭1「まず、この依頼を降りることはできません。この依頼のために色々と部外秘の情報を提供しています。
次に成功報酬以外ですが、前金として成功報酬の40%を先にお渡しします。これを活動資金としてください。
続いて活動期間ですが、期限は設けません。存在は確実なので、なんとしても発見してください」
各パーティーがざわついた。
司祭1「話は以上です。前金は明日、この部屋でお渡しします。今日はお引き取り下さい」
そういうと大司祭とともに来た司祭2人は、案内役の司祭に何か耳打ちすると、部屋を出て行った。
戦士「逃げられないか」
スカウト「前金ありなのか。金額的に6回以内で発見できると、前金が底をつく前にカタがつくし、儲けはあるな」
魔剣「ある程度調査して、発見できないようなら任務達成困難として大聖堂に報告するか」
戦士「さっきの口ぶりじゃ、まともに取り合ってくれそうにないな」
魔法使い「面倒なことに首つっこんじゃったかなー」
僧侶「発見できたとあれば、歴史上の快挙になりますよ」
魔法使い「そういうのいらないっ」
僧侶「すでに我々はコボルト王を討伐したパーティーになってますがね」
僧侶は魔法使いをちらりとみながら言ったが、魔法使いは顔をそむけた。
戦士「終わりなき任務か。でも文献に存在が記されているなら、無いものを探すわけじゃなさそうだね」
スカウト「最低限の条件は満たしているか。無いもの探しとかやってられねぇからな」
魔剣「では、明日ここで前金を受け取り、出発ですかな」
戦士「そうしましょうかね」
僧侶「えっと、王の間の強制転移とかもそうですが、パーティーが個々に飛ばされると、魔法使いさん以外は詰んでしまいます。スリッパを各自が持ちませんか?」
スカウト「それがいいな。罠で俺だけ飛ばされるとかもありそうだしな」
戦士「では魔法具の調達にいきますか」
各パーティーも話し合いが終わったのか、部屋を出るものが出始めていた。
司祭「ささっ、続きは各自ギルドなどでお願いします」
司祭は厄介払いするように、部屋の退出を促していた。
一行はいつも利用する防具屋に来ていた。
店主「おお、あんたらか。こりゃあ一体どうなってんだ?」
戦士「どうやら闇の宝珠を浄化した副作用らしくて、大聖堂も大騒ぎでしたよ」
店主「もとに戻るんだろうな?ずっとこのまま明るくなったり暗くなったりじゃ困るぜ」
戦士「戻ると大司祭様はおっしゃってましたよ」
店主「ならいいが・・・で、今日は何だい?」
僧侶「スリッパを買い足すことにしたんですよ。追加で4つ下さい」
店主「そりゃまた随分使うな。そんな危険なとこいくのか?」
スカウト「強制転移罠で一人だけ飛ばされた時の保険だ。行く場所はいままでと同じところだな」
店主「そんな罠があるのか。確かに一人になるのは怖ぇな」
そういうと店主はカウンターの下からスリッパを出した。
店主「ほらよ。また貴重品頼むぜ。あと以前出した依頼な。あれ、別パーティーが解決してくれたから忘れていいぜ」
僧侶「先を越されましたか。まあ仕方ないですね。寄り道しすぎましたし」
店主「また何かあったらお願いするよ」
戦士「わかりました」
一行は宿に向けて移動を開始した。