クエストの中身
案内役の司祭と共に入ってきた司祭3人は大テーブルに座ると、着座しているリーダーたちを見回した。
司祭1「皆さま、ギルドに出した依頼に応えていただき、ありがとうございます。内容説明に入る前に背景ともいえることをお話ししましょう」
司祭2「大司祭様、お願いします」
そう促されて3司祭の真ん中に座る司祭が頷いた。
大司祭「さて、皆さま。突然外がダンジョンのように暗闇になり、さぞ驚きのことでしょう。これは”夜”と云われるもので、明るい”昼”と対になっている現象です。このまま時間が経過すれば昼と夜が交互に訪れ、いずれは光の宝珠の力で昼だけに戻ります」
リーダーたちは頷いていた。
大司祭「ただし、このままでは夜は薄暗い昼の状態になってしまい、いままでのような明るさを取り戻せません。そこで、空に浮かぶ光の玉を調整する必要があるのです」
リーダーたちは驚いた顔をしている。
冒険者1「調整って、どうやるんだ?あんな空高くにあるのに。それに本当に調整が必要なのか?そのまま明るい世界が戻ってくることはないのか?」
大司祭「それをご説明します。まず当たり前ですが、飛んで行って調整なんてできません」
大司祭は笑いながら言うと続けた。
大司祭「調整が必要なのかについてですが、大司祭に伝わる文献には必要であると記録されております。その時は完全な明るさに戻らず、調整が必要だとわかったともありました」
冒険者1「過去にもこんな事があったのか。というかそもそも、俺らは宝物庫の調査だろ?なぜこんな話をするんだ?」
大司祭「まずは現状の整理と状況把握のため説明しました。次にどうやって調整をしに行くのか、それが今回の依頼に関係します」
皆静かに話を聞いている。
大司祭「宝物庫に浮遊大陸への転移装置がありますが、まだ発見に至っておりません。それを皆様に発見していただきたいのです」
皆がざわめき出した。
冒険者1「浮遊大陸って、昔話に出てくるだけのモノじゃないのか?本当にあるのか?」
身を乗り出して質問した。
大司祭「実在します」
戦士「だけど、空を見てもなにもないぞ?」
大司祭「外からは見えないように隠されているのです。それは地上に光を当てることにも役立っています」
戦士「なぜそこまでわかるんだ?大司祭の文献とやらにあるのか?そんな文献聞いたことないぞ」
大司祭「その通り。文献にあります。外に出すと混乱をもたらすものもあるため、公表していないのですよ」
冒険者1「今回、必要があって公表しているということか」
大司祭「いえ、公表はしませんよ?このことは宝物庫調査のメンバーと、これから説明に行く新規開拓メンバーにだけ知らせるつもりです。そのため、皆様にはむやみにこの話を公言しないでいただきたい。そのため、この会議室をわざわざ使ったのです」
冒険者1「もし俺等が話しまわったら、どうするつもりだ?」
大司祭「大聖堂クエストは受けられず、勲章剥奪。あとは何もありませんね。民衆に知られたとしたら、もうどうすることもできません。ただ面倒事が増えるだけですね」
冒険者1「そうかい」
大司祭「さて、依頼の内容と現状説明は以上です。何か質問はありますかな?なければ開拓メンバーの説明に向かいたいのですが」
他の冒険者「文献には宝物庫に、浮遊大陸への転移装置があると書かれてるんだろう?場所はわからないのか?」
大司祭「詳細な位置が記録されていませんでした。ただ宝物庫にあったとだけ記されています」
他の冒険者「それが浮遊大陸への転移装置だとなぜわかったんだ?浮遊大陸に行ったということか?」
大司祭「左様でございます。そこで地上からは見えないようにされていることも確認したようです」
他の冒険者「その文献、信用できるのか?浮遊大陸があるという証拠は何かあるのか?」
大司祭「ふむ。ここらで質問を切り上げたいところですが、まあ良いでしょう。証拠は宝物庫のヨスギル製品です。あれは地上の技術では製作できません。地下種が製作できるなら、地下種たちが装備しているはずですが、コボルトやオークは我々と同じミスギル製品を使用しています」
他の冒険者「そのヨスギル製品は、地下にあった城から奪ったものじゃないのか?」
大司祭「地下5階あたりの遺跡のことですね。あれはかつて地上にあった国のモノと調査結果が出ています。紋章などからも裏付けられています。そのため、それはないと言えますな」
他の冒険者「宝物庫のシークレットの先からヨスギル製品は発見されたんだろう?コボルト王はヨスギル製品を使っていなかった。となると浮遊大陸側が勝手に宝物庫に寄生してるということか?」
大司祭「理由はわかりませんが、そういう事かもしれませんね。」
他の冒険者「だとすると浮遊大陸の奴らが気持ち悪いな。何者なんだろうか」
大司祭「そのあたりは、新規開拓メンバーにお願いするところですよ。彼らには浮遊大陸に乗り込んで調査してもらいますので」
冒険者1「俺らはその道を開通させるのが仕事というわけか、わかったぜ」
他の冒険者「内容と理由はわかった」
大司祭「ではよろしいですかな?これで失礼させてもらいますよ」
そういうと大司祭は席を立ち、部屋を出ていった。
戦士「危険のない宝物庫調査で正解でしたね」
スカウト「そうだな。謎すぎる浮遊大陸調査など命の保証がねぇからな」
各リーダーのもとにメンバーが集まり、どこのパーティーでも何やら話し合いを始めたようだった。