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王の秘策


時は少し遡り、王との決戦前の話となります。

今回は、地下種たちの王側の視点での会話となり、地上種は知るべくもない内容となっています。


============================================================



コボルト王は、戦士たち一行が素直にドアから撤退したことを見送ると、玉座横にいる護衛に話しかけた。


王「さきほどのパーティーで何組目だ?」


護衛1「最近来た中ですと、5組目です」


王「ふむ。そろそろ連中も戦力が揃う頃か。早ければ明日にでも攻めてくるかもしれんな」


護衛1「こちらの戦力ですが、悪魔や吸血鬼種などが少ないことを観察されていれば、そうなるやもしれません」


護衛2「如何いたしましょうか」


王「何もせぬ。これまでとおり、待つだけだ」


そう言うと王は王冠を手に持ち、王冠の装飾品の一つである玉を見ていた。


王「こんなもの・・・・」


そう言って、玉座に備え付けられている王冠を置く台に王冠を乗せた。


王「簡単に闇の宝珠を渡すわけにはいかぬ」


護衛1「ん?」


護衛は発言した王を見た。


王「そう思わせることが大事だということだよ」


護衛1「ああ、それならばよいのです。我が父の代から王にお仕えしておりましたが、方針が変わったかと焦りましたぞ」


王「そんなことあるか。長年の悲願ともいえる大事業だ。それが我の代で終わるのであれば、喜んで命を捧げよう」


護衛2「王よ。命は惜しくないのですか?」


王「まあ、気にするな。王として生を受けた者の宿命だ。地下種の王としてのな・・・」


護衛1「となると、作戦は先代より受け継がれたものを、継承するということでしょうか?」


王「うむ。この王冠があたかも闇の宝珠であるかのように振る舞い、奴らを勘違いさせる」


護衛2「そして、それを地上に持ち帰らせる・・・」


王「そうだ。だが奴らはそれが闇の宝珠ではないと気付く。そしてここに戻ってくるだろう。まあその時には、ここに誰もおらんだろうがな。ハハハハハ」


護衛1「それは私の父より聞いております。その先はどうするのでしょうか?」


王「そうだな、そろそろお前たちには話しておくか。まあ、話しても話さなくても問題はないがな」


護衛1「そうなのですか?」


王「そうだ。王冠を奪われた時点で我も、そしてお前たち2人も死んでいる」


王は護衛の二人を見ながら言った。


王「王冠の玉が闇の宝珠ではないと気付いた地上種は、闇の宝珠のありかを探すため、この部屋を調査し、この玉座の仕掛けに気づく。そして玉座裏の壁から宝物庫へと至るだろう。闇の宝珠がある宝物庫にな」


そういうと王はニヤリと笑った。


王「そして、闇の宝珠を入手し、必死に隠したこれこそホンモノだと推察して、地上種の冒険者はそれを地上へ持ち帰る」


護衛の二人は王の話に聞き入っていた。


王「そのあとは、地上にある光の宝珠と闇の宝珠を合体させる。そして闇の宝珠は消え去ることになる」


護衛1「地下種はどうなるのです?力を奪われることになってしまいます」


王「そうだ、地上種も地下種も、誰もがそう考えているのだろう。真実も知らずにな」


王は再び護衛2人をみた。

闇の宝珠なくしてどうするつもりなのか、コボルトだから地上で暮らせとでもいうのかと、護衛は不思議に思った。


王「実際には闇の宝珠は消え去るのでなく、光の宝珠に吸収され、宝珠の中で闇の宝珠は生き続けるのだ。それはつまり、暗くなることない今の地上に、闇が訪れるということだ」


護衛1「!?」

護衛2「!?」


王「正しくは、今と同じような明るい"昼"と、ダンジョンのように暗い"夜"が交互に地上に訪れるのだよ」


護衛1「ということは、我々も地上に出ることが出来るということですか!」


王「そうだ。昼の明るさと光の宝珠の影響は消えるわけではないから、昼はどこかに隠れる必要はあるがな。隠れると言っても、天の光を直接浴びすぎないように、地上種の家のようなものに入れば、それで十分だ」


護衛2「そうなれば、我々ももっと自由に活動ができる!」


王「そのとおりだ。だが、もし"夜"なるものが訪れると知ったら、地上種の奴らは闇の宝珠を奪いに来ると思うか?」


護衛1「絶対に来ないでしょう」


護衛2「だから闇の宝珠を奪われることが、地下種にとって危機的な状況である、と地上種に認識させる必要があったのか」


王「そう、それが真実だ。代々、王に受け継がれてきた・・・な」


少しおいて王は続けた。


王「この部屋に来た侵入者に会話で対応しているのも、我が敗戦と宝珠奪取を恐れ、戦いを避けているのだと地上種が感じてくれれば、と考えてのことだ。そうなれば、この作戦はより成功率が上がるだろう。そこまでの思慮を奴らがしてくれるかは未知数だが、いずれ誰かが思い至るであろう」


護衛1「宝珠を奪われまいと、偽の宝珠である王冠を作り、命をかけ演技をすることが、王の仕事であったとは・・・そうとわかれば、私も力の限り演じましょう!王冠の防衛者として。私も最期の時を気持ちよく迎えられそうです。そう言えば、この事は、我が父も知っていたのでしょうか?」


王「護衛役を引退し、お前と交代するときに話した。宝物庫の守衛に強い奴が必要だったからな。奴は老体にムチをうってでも宝物庫を護ると言ってくれたよ」


そう言うと、護衛2人をみた。


王「お前の父も同じだ」


護衛2「そうだったのですか・・・父は護衛より大事な任務だと言っておりました。王の護衛が一番の名誉職のはずなのに、変な人だと思っていました。今の話で理解できましたよ。父は最後の演者になるのですね」


王「そうだ。今後の地下種のための壮大な事業であり、演技なのだ」


王はそういうとまたひじ掛けに肘をおき、手の甲に顎を乗せた。


王「さあ、来るが良い、地上の冒険者たちよ。そして我を滅ぼすのだ。吸血鬼種などの強力な地下種は下げてやったぞ。チャンスだと理解してくるが良い!」


王は、自分を倒してくれる地上種の冒険者たちを待ちかまえていた。

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