宝物庫戦
強制転移させられた部屋とは別方向にいく通路が、新たに見つかった。
スカウト「こんなとこにも通路だ。こんな近くにシークレットが並んでるなんてな」
慎重に調べて、今度は単独で飛ばないよう、皆でドアをくぐった。
その先は小部屋で10m四方程度のものだった。
魔剣「何もないな」
スカウト「また調査だな。シークレットの連続ってことはお宝があるのかもな」
その予想は正しかった。
またもシークレットが見つかった。
スカウト「これか」
壁ごと回転し、新しい部屋が現れた。
そして、プレートが埋め込まれていた。
” この先宝物庫 ”
” 関係者以外立ち入り禁止 ”
戦士「これですね」
スカウト「しかしドアがないぞ?」
人間騎士「またシークレットドアのスイッチが、どこかにあるんじゃないか?」
念入りに調査をしたスカウトだったが、見つけることが出来なかった。
スカウト「うーん、なにもないな。どうなってる?」
僧侶「調査の連続で、集中力も限界にきてるのかもしれないですよ」
スカウト「そうだな、少し休ませてもらう」
そういって、スカウトは横になった。
しばらくして、フェアリーの一人がプレート近くの壁で何かしている。
ジワーっとドアが現れた。
「!?」
フェアリー4「わわっ!」
人間騎士「何をした!」
フェアリー4「いや、壁に魔力込めたらどうかなーって思いついて、やってみたの」
戦士「そんなシークレットドアがあるなんて。初めてのタイプですね」
大声で起きたスカウトもびっくりしていた。
スカウト「こんなのもあるんじゃ、見つかってないシークレットもまだまだありそうだな」
物理的な調査だけじゃないことを思い知ったが、宝物庫のドアは発見できた。
戦士「入りますよ」
慎重にドアをあけると30m四方の部屋に出た。そこには宝などなく、兵士が立っていた」
すぐに前衛が前に出ると、後衛は前衛の陰に隠れた。
兵1「我らは宝物庫の番人!ここを通すわけにはいかぬな」
兵2「覚悟せよ!」
そういうと戦闘態勢をとった。
戦士「相手は2人だけ?」
人間騎士「かなりのやり手な気がする」
戦士「待ってくれ!」
戦闘が始まるかという刹那、戦士は大声で呼びかけた。
戦士「あんたらの王はすでに死んだ!無駄な抵抗はやめて下がってくれないか」
目の前のコボルト兵2人の顔には、白髪が混じっていた。
戦士「見たところ、老兵だろ?彼我の戦力差を理解できないとは思えない」
2人の老兵は話を聞いていた。
兵1「もちろんだとも」
戦士「なら・・・」
兵2「王を倒したのは、そなたらなのか?」
戦士「そうだ・・・立派な王だったよ・・・」
老兵2人は中空を見ていた。
兵1「そうか、我が主は立派な最期を迎えたか。そうかそうか」
兵2「ならばもう思い残すことはない」
戦士「!! やめろ!」
人間騎士「いくぞ!!」
話し合いによる解決は出来なかったようだ。
老兵は素早く魔法を詠唱した。かなり早いものだった。
魔法使い「まずいっ」
魔法使いとフェアリーは、対魔法用障壁を展開した。
そこにライナー系全体攻撃魔法が炸裂した。そして、もう1体の兵が突進してきた。
戦士が対応したが、あまりの速さと技に、弾き飛ばされてしまった。
すぐに魔剣にターゲットを変えた兵は、攻撃を繰り出した。
魔法の詠唱を終えた兵も、猛スピードで人間騎士に突進してきた。
フェアリー1「近すぎて魔法が撃てないよー」
老兵は魔法使いとの戦闘をよく心得ていた。
戦士に加え、魔剣も弾き飛ばした老兵は、後衛へ突進していく。
だが、獣人騎士がそれを止めた。
獣人騎士「おっと、この先には行かせねーーーぜっ!!っと」
弾き飛ばされはしたものの、大したダメージを受けなかった戦士と魔剣は、すぐにそれぞれ騎士の加勢に加わった。
老兵の巧みな技に苦労しつつも、多勢に無勢、だんだんとスタミナを消耗した老兵側に、終わりの時が近づいていた。
兵2人は楽しそうに戦いをしていた。
魔法使い「なんであんなに楽しそうなの?もうすぐ負けるのがわかってるはずなのに・・・」
死力を尽くした老兵2人だったが、ついに動きが止まった。
兵1「ふーーーー、なかなかやるじゃないか」
戦士「あんたもな!」
兵2「ありがたい言葉だな」
そういうと老兵2人は互いの顔を見合わせ、構えを解いた。
兵1「さあ、トドメを刺されよ」
魔剣「なぜだ。生き延びるという選択はないのか?」
兵2「我らは戦士。戦闘での死こそ、本望よ」
兵1「王よ、あなたとの約束、果たせましたかな?」
天を見ながらそう語った兵1には、もはや戦意はなかった。
兵2「さあ、もういいだろう。我らに休息を与えよ」
兵1「さもなくば、再開とするぞ?」
ニヤリと笑いながら発せられた言葉には、殺意がまったく感じられなかった。
人間騎士「わかった。お前たちの王も、最期はそうだった・・・」
兵1「そうか、王の最期に立ち会ったか。王を倒したのは、そなたか?」
人間騎士「いや」
獣人騎士「俺だ」
兵2「なら、そなたが我らにトドメを刺してくれると、ありがたい。老兵の最後の望みを叶えてくれぬか?」
獣人騎士「・・・わかった。いいだろう。このエモノは王を倒したものだ。同じ刃にかかって天に召されるがいい」
兵1「ああ、そうだ。一つ聞いてもよろしいかな?」
獣人騎士「なんだ?」
兵1「王と一緒にいた護衛と、ワシら、どちらが手強かったかな?」
戦士「?」
人間騎士「あんた達だと断言できるな」
そう言ったあと、周りの味方もうんうんと頷いていた。
フェアリー1「私達以上に早く詠唱して、前衛もこなすなんて、この部屋で一番強いのはあなた達よ」
兵1「それは残念」
魔剣「残念?あの2人に王の護衛職を奪われたか?」
兵1「そうではない。そうかそうか、あの子らはまだ高みには至らずであったか」
人間騎士「王の護衛は強かった。だが、それ以上の戦士がいるとは思わなかったな。王の采配ミスだろうよ」
兵2「ハハハハハ」
それを聞いた老兵2人は武器を捨てた。
兵1「トドメに水を差したな。もう良いぞ」
獣人騎士「わかった・・・」
獣人騎士がそれぞれに一撃を振り下ろし、絶命した。
戦士「王といい、なんなんだこいつら」
獣人騎士「これも騎士、戦士としての奴らなりの道なんだろうよ」
スカウト「さて、部屋の奥のドアがおそらく宝物庫だろう。いくぞ」