王の間、再び
再度ダンジョンに転移した一行は、前室に誰もいないことを確認し、慎重に王の間のドアを開けた。
王の間には誰もいなかった。
スカウト「ん?誰もいねえな」
冒険者1「我々が逃した奴らもいないのか」
僧侶「王が倒されたことが、わかったのかもしれませんね」
冒険者1「残党はどうするつもりだろうか」
人間騎士「さぁな。今はそれより闇の宝珠探しだ。部屋の調査をするぞ」
皆で部屋を探索した。
しばし調査が続く。
玉座を調べていたスカウトが何かに気づいた。
スカウト「スイッチらしきものがあるな」
引き続き調査し、危険はないと判断し、スイッチを押した。
しかし何も起きなかった。
戦士「何もおきませんよ?」
スカウト「なんだろうか」
魔剣「いつぞやの真っ暗部屋のスイッチみたいに、離れたところの何かが変化したのか?」
人間騎士「だとすると、ここに固まっていても意味ないな。分かれて探索するか」
冒険者1「了解した。パーティー単位で別れて探索するか」
戦士たちは引き続き王の間を調査することになった。
獣人騎士「ほんとに分かれる気か?何か理由があって残党が戻ってきていない場合、ここは危険になるぞ?」
冒険者3「じゃあ、この部屋と前室の調査に絞るか。それでも何もなければ、全員で違う区画に行くってのはどうだ?」
魔剣「それはいいな」
人間騎士「ふむ、それのほうが良策か」
結局付近を探索することにした。
ダンジョンが危険な場所であり、効率だけを求めてはならないという基本を忘れなかった人物がいてよかったといえる。
冒険者3「ん?この壁・・・」
近くにいたスカウトが呼ばれた。
スカウト「シークレットだな」
腕が通るくらいの小さな穴が壁に現れた。
そこに手を突っ込むと奥に何かあった。
スイッチのようだ。押してみるとドアのロックが外れたようで、壁を回転できるようになった。
皆を呼び集め、ドアを回転させた。
中に入ると、そこには静かな空間が広がっていた。
30m四方の部屋という点では、王の間と同じだが、正面にドアが見えた。
ドアの先は短い通路があり、その通路の先も同じサイズの部屋があった。
数体の悪魔とスライム、蝙蝠が待機していた。
3パーティーは素早く動くと、魔法で先制攻撃をし、前衛が追撃をした。
再び静寂が訪れた。
スカウト「ドアが左右に1つずつ。どちらにいくか」
フェアリー1「地図魔法によると、おそらく右手のドアは魔法の壁になっていて、上り階段近くの部屋につながってそうね」
人間騎士「なら左手のドアだな」
ドアの先は通路となっていて、その先は90度曲がっており、見通せない状態だった。
冒険者1「またこの構造か。部屋と通路のサンドイッチ」
ドアの先は想像通り、部屋だった。
部屋は右手にドアがあるだけで、あとは何もなかった。
フェアリー2「うーん、そのドアの先って、この階層に来るときに使った階段の近くだね」
地図魔法で位置関係を想像したフェアリーから発言があった。
人間騎士「階段に出るのか、そう見せかけて違うエリアにつながっているか。どちらかはわからんな」
戦士「行ってみましょう」
ドアの先は短い通路で、その行き止まりにはドアがあった。
そしてこのドアは魔法のドアとなっており、通ったあとは壁になってしまった。
スカウト「上り階段前に出たな」
冒険者1「振り出しに戻るってか」
スカウト「玉座の裏手が上り階段につながっているとなると、単なる脱出ルートなのか、ほかに意図があるのか」
魔剣「玉座から抜けた部屋と、この階段までの部屋でシークレットがないか、調査するしかなさそうだな」
フェアリー4「歩くと大変だから、転移魔法使うよー」
フェアリーたちの転移魔法で、一行は玉座裏の部屋に戻った。
この3パーティー、調査スキル持ちの職が2人しかいないことも、調査漏れの原因となっていた。
戦士「そう言えば人間騎士さんのパーティーはスカウト職がいませんが、これまでどうしてたんです?」
フェアリー1「ああ、今は宿で休んでる仲間に、スカウトスキルのある暗殺職がいるのよ」
僧侶「フェアリーの暗殺職、どこかで聞いたやつですね」
魔法使い「以前、ダンジョン入口でフェアリーだけのパーティーを見たときじゃない?珍しかったもの」
フェアリー1「ああ、あの人たちね。それとは別人だけど、私たちのパーティーにもいるのよ暗殺職」
調査疲れが出ているのか、無駄話をしてしまっていた。
スカウト「ん?」
スカウトは何かに気づいた。
壁の一角を調べたら小さな穴がみつかり、また腕を通せる程度のものだった。
腕を突っ込んで奥にあるものを触ると、ドアのロックが外れたようだ。
スカウト「ここにシークレットだ。ドアになってる」
壁全体が回転し、通路が現れた。しかし通路は行き止まりとなっていた。
魔剣「隠した通路がハズレ?」
魔法使い「性格わるーい」
冒険者3「スカウトさんよ、調査しよう」
スカウト「わかった」
スカウト職の2人は通路を調べ始めた。
人間騎士「こんなだと、我々の調査力では戦力になれんな。警護をすることにしよう」
そういうと出入り口の警戒に当たり始めた。
冒険者3「ん?シークレットか?」
通路の壁の一部が回転し、通路が現れた。1人が通過できる程度の小柄なものだが、先には空間が見える。
冒険者3が狭い通路を潜り抜けると、そこは部屋だった。
スカウト「大丈夫か?」
冒険者3「ああ、誰もいないし、何もないな」
スカウトが通路に入ったとき、冒険者3は部屋の真ん中あたりまで歩いていた。
そのとき、部屋が白い光に包まれた。
光りが消えたとき、そこには誰もいなかった。
スカウト「まずい!冒険者3がどっかに転移させられたぞ!!」
それを聞いた皆に緊張が走る。
人間騎士「ソロで飛ばされたか。それはまずいな。スリッパはもってるのか?」
冒険者5「このパーティーのスリッパ係は俺だ。奴は持ってない!」
冒険者1「すまないが、我々は仲間を探しに行きたい。ここは任せるぞ」
戦士「しかたないですね。気を付けてください」
そういうと冒険者1のパーティーは離脱した。
獣人騎士「スカウト職1人か。まあ、戦闘職はたくさんいるから、その点は安心してくれ」
フェアリー1「ねえ、あの子つれてこようか?」
暗殺職のフェアリーを連れてこようかと提案した。
人間騎士「転移回数は残ってるのか?」
フェアリー1「往復はできるかな」
スカウト「また事故があっても怖い。そいつは非常時用に待機させといたほうがいいかもしれんぞ」
獣人騎士「お前の負担がデカイがいいのか?」
スカウト「もともと1人でやってたんだ。かわらねえよ」
そういうと調査を再開した。