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司祭たち



一行が退出した会議室

司祭1「さて、これで何度目か、奴らは対話で戦闘を回避しているようだな」


司祭2「そして、やつらの思惑通り、冒険者は混乱して戻ってきた」


司祭1「今回は成功するとよいのだが、、、」


司祭2「今回の冒険者に、我々の戦力を随行させたほうが、成功率がよいのではないでしょうか?」


これまで黙っていた司祭3が口を開いた。


司祭3「コボルト王との戦闘で、貴重な戦力を失うのは避けたい。今後のためにもな」


司祭1「しかし大司祭様、今回も失敗すると、またどれくらい待つことになるか、わかりません」


司祭3は大司祭だったようだ。この依頼をした張本人である。


司祭1「私も戦力投入をしたほうがよいと考えます」


大司祭「”その先”を考えると、投入したくないのだ。わかるな?」


司祭1「”その先”・・・ですか」


司祭2「”その先”のことも大事ですが、まずはその前提である、闇の宝珠の回収を達成しないことには、始まらないのではないでしょうか」


大司祭「少し話しておくか」


そういうと2人の司祭の顔を見て、また話し始めた。


大司祭「闇の宝珠の回収後、ダンジョン最下層から転移装置を使って浮遊大陸に行き、天に浮かぶ光の玉を直接調整する必要があることは話したな?」


司祭1「ええ、それは以前お聞きしました」


司祭2「闇の宝珠の力は、この大聖堂にある光の宝珠の力で消えても、光の宝珠の方もまったくのノーダメージでは済まず、若干とはいえ、闇の宝珠の力で弱くなる。そして光の宝珠の力を受けて、光を発している天にある光の玉は、光の宝珠が弱った影響を受けると」


大司祭「その通りだ。その弱った影響を最小限にするため、直接調整しにいくのだ」


司祭1「その際に大聖堂の戦力が必要だということでしたが」


大司祭「そうだ。今回はそれを話しておくとしよう。戦力が必要な理由、それは、浮遊大陸の衛兵が邪魔しに来るだろうからだ。その排除に戦力が必要なのだ」


司祭1「なぜ邪魔しに来るのでしょうか?不安定となった光の玉を、正常化しようとする我々を邪魔する理由がわかりません」


大司祭「浮遊大陸の奴らからしてみれば、突然地上種の仕業で光の玉が不安定になったのだ。さらに闇の力を増幅させに来たと勘違いしても、おかしくない」


司祭2「事情を話せば、戦闘を回避できるのではないですか?」


大司祭「石頭どもだ。奴らに話し合いは通じないのだ」


司祭1「そんな・・・ということは、無益な戦いが必須になるということですか・・・本当に理解してもらえないのでしょうか?」


司祭2「お言葉ですが、大司祭様。話しても理解されないという根拠はあるのでしょうか?」


大司祭「大司祭に伝わる文献に書かれておるのだよ。過去にも似たようなことがあり、話し合いで解決しようとしたが、失敗し、浮遊大陸の者が、光の宝珠から闇の宝珠を無理やり分離して、地下種の王に返還したとな」


司祭1「なんてことを」


司祭2「そんなことがあったのですか・・・」


大司祭「だからこそ、コボルト王なんぞで戦力を失いたくはないのだ」


司祭1「コボルト王を倒してから、戦力をまた強化するのはどうでしょうか」


大司祭「天の光の玉の異変はすぐに起こる。そうなれば、すぐに奴等が光の宝珠から、闇の宝珠を分離しに来ることが予想される。戦力を再整備する余裕はないだろう」


司祭2「そういうことでしたか。であれば仕方ありません。今回もコボルト王討伐は、静観を決め込むしかないのですね」


大司祭「そうなのだ、苦しいが理解してくれ」


司祭1「今までこのようなことを心中に秘めておられたとは、、、これからも大司祭様のため、一層身を粉にして尽くさせていただきます」


そして3人は席を立つと、大司祭を先頭にして出口に向かって歩き始めた。

その時の大司祭の口がニヤリと笑っていたことに誰も気づくことはなかった・・・




大司祭は考えていた。今回の冒険者の作戦が成功した場合、少々問題があることについて。


さて、司祭どもをうまく言いくるめられたが、問題はそんなことではない。

王を倒す前に、やつらの宝物庫から”ヨスギル製”の武具を回収したいが、どうしたものか。

王の間に到達できる冒険者がいるのに、宝物庫からの回収品報告がないところをみると、シークレットの先にあって、まだ発見できていないのか。であればさっさと見つけてほしいが・・・

浮遊大陸の奴らとやりあうには、やつらと同じ”ヨスギル製”の品が必須だ。劣化品であるミスギル製品では、前衛が成り立たん。防具の違いで後衛もいずれ押し負けるだろう・・・


”ヨスギル”

浮遊大陸で使われているとされた魔法金属。これを地上人が真似て作ったのが、ミスギル金属である。ミスギルはまがい物なので、当然本家に劣る性能となっている。


もし今回、闇の宝珠を持ち帰られてしまったら、どうするか。

ヨスギル製武具なしに、闇の宝珠を光の宝珠で浄化しても、すぐに奴等に分離されるだけで、真の意図も発覚し、この計画が破綻してしまう。

となると、浄化するわけにいかん。時期が悪いとか理由を適当につけて、浄化を延期するか?

だがそれでも地上に闇の宝珠があることを奴等に察知されると面倒だ。

宝物庫が見つからない以上は、今回は失敗してくれたほうがありがたいかもしれんな。


ふむ。ここまで宝物庫が発見されないということは、玉座の奥にあるのかもしれぬな。だとすれば成功して欲しいが、欲しいが、、、同時に宝物庫も発見してくれなければ困る。

こればかりはあの冒険者どもに期待するしかないか。


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