ダンジョン攻略開始
パーティ一行はダンジョン入口に集まっていた。
戦士「ではこのパーティ初のダンジョン攻略に出発しようと思う。でもその前に目的を確認しておきたい。まずは地下にあるとされる過去の遺物を見つけたらとりあえず地上へ戻ろうと思う。荷物を抱えての攻略は苦労しかないからね」
そういうと戦士は皆を見回した。
魔剣「それがいいな」
スカウト「道中のお宝はどうするんだ?」
戦士「リスクが小さいようなら回収しよう」
スカウト「わかった。その時は声をかける」
戦士「頼んだ!」
僧侶「目標階層はあるんですか?食料は言われたとおり3日分を持ってますが」
戦士「とりあえずは地下5階が目的地だ。過去にもそこで遺物が発見されている」
僧侶「わかりました」
魔法使い「魔法すっからかんで帰還は怖いから、その前に帰るんだよね?」
魔剣「それが安全だし、常識だな」
戦士「回数管理はそれぞれに任せるから、半分を切ったら報告してくれ」
魔法使い「わかったー」
戦士「地図を買う金がなかったから、マッピングしながらの攻略になる。無理せず行こう」
魔剣「地下2階までなら持ってるから、それを使おう」
僧侶「さすがは経験者!」
スカウト「マッピングは私がやろう」
一行は持ち物を確認し、ダンジョンへ降りて行った。
「よお、なんかくれよぉ。メシくれよ、めしぃ」
地下の住人がふいに声をかけてきた。
僧侶「こんなのを相手していてはキリがありません。無視しましょう」
一行は慣れた態度で要求と存在を無視して先へ進んだ。
この前の1週間の訓練でも何度も声をかけてきたやつだった。
一行は地下2階へ降りた。以前訓練した階層だ。
戦士「前回は階段近くで訓練してたが、奥に行くのは今回が初めてだな」
魔剣「この先は衛兵宿舎がある。まだ安全な階層だな」
スカウト「こんなとこで生活させられるとは兵隊も大変だな」
魔剣「おかげで地下2階までは安全が確保されてるってわけだ」
魔剣「まあ、進入禁止区域があって、その管理がメインの仕事だがな」
僧侶「冒険者保護はそのついでってことですね」
魔剣「そういうこった」
階段から少し離れたところに衛兵らしき人物が立っている。
衛兵「見ない顔だな。ここらは光の力が弱ってきている。この先はもっと暗くなるぞ。
見えなくて迷子とかやめてくれよな」
戦士「ランプは持ってるから大丈夫だ」
衛兵「ならよろしい。気を付けてな」
さらに先に進むと大きな立札があった。
”この先 衛兵宿舎 お静かに”
と書かれていた。こんな場所でお静かにもないもんだ。
さらに進むとまた看板だ。文明の証拠である看板、これがあるだけでなんか安心する。
”この先 食料備蓄倉庫”
と書かれている。
スカウト「さっきの衛兵のやつらのメシか」
僧侶「備蓄倉庫らしき扉の前に衛兵がいますね」
衛兵の前を通らないと地下3階へは行けない。横を通り過ぎようとしたとき
香ばしい匂いがする。
スカウト「盗み食いか?」
僧侶「かもしれないですね。口動いてましたから」
戦士「なんか楽しみないとやってられんだろうな、こんな地下じゃ」
目の前に地下3階への階段が見える。
戦士「よし行くぞ。この先はこれまでとは比較にならないほど危険だ」
一行は気を引き締めて階段を下りて行った・・・
地下3階
階段を降りるとすぐ横に衛兵が数人立っていた。
衛兵「おお、ルート開拓の冒険者か。協力感謝する。気を付けてな」
冒険者は遺物回収や闇の宝珠奪取以外にもダンジョンルート開拓のサブクエストがある。
複雑なダンジョンでは知られていない道がたびたび発見される。この地図情報を大聖堂が買っているのだ。
魔剣「確かこの階層に酒場があったはず」
戦士「酒場!?」
僧侶「なんでこんな地下に?」
魔剣「危険な場所だが強い冒険者で護衛をし、安全と息抜きを提供するのが目的とか言ってたな」
スカウト「変わり者だな」
魔法使い「でも休憩にはいいんじゃない?」
魔剣「ただ、そこはシークレットドアの先だったからな。スカウトさん、あんたの腕次第だ」
スカウト「シークレットドアか。道理で新しい道がみつかるわけだ」
シークレットドア。甲妙に隠されたドア。ドアに見えないけどドア状のものだったり、単なる抜け道だったりもするが、要は一見通路に見えない通路への入口というわけだ。
地下2階までとは異なり、狭い道が続き、時々広い空間に出る。そんな構造が続く。
魔剣「このあたりの動物系の毛皮は金になる。戦利品がないときはそれを持ち帰るといい」
戦士「経験者いるとこういうところがいいなあ」
魔法使い「まだ魔法をレジストするような奴がでてこないのもありがたいわね」
戦士「幽霊系は魔法使いの魔法や僧侶のディスペルで頼むぜ」
ディスペル。
魔法使い系魔法ではなく、神官系魔法を習得する職業が使える技。
魔法力を消費することはないが、術者のレベルと神力のパラメータに威力が依存する。
僧侶のディスペルはアンデッドや悪魔系を土に返したり、異界へ戻すことが出来る。
神官系魔法を習得する前衛の宮殿騎士は、女性しか就けない職業で、ディスペルもアンデッドのみ対象にできる。一方で男性も就ける神殿騎士は神官系魔法習得できる戦士という部分は同じだが、僧侶と同様にアンデッドと悪魔系をディスペルできる。大聖堂の騎士はこれらの職業で構成されている。
僧侶「私の強さだとまだ2,3体を消し去るのが限界ですね」
魔法使い「それでも魔法力節約になるから十分だよ」
スカウト「おしゃべりしてるとこ悪いが、俺が気づかなかったシークレットドアから敵が襲ってくるかもしれん。気を抜かんようにな」
スカウトだけがまさにダンジョンただなかという雰囲気を出していた。
ほかのメンツは初めての階層に少し浮かれていた。
魔剣が警戒していていたからよかったものの、彼がいなかったらどうなっていたか。
ダンジョンではいつも通る道だからと油断して事故に遭うことも珍しくない。
戦士「すまなかった。気を引き締めようといった本人が浮かれてたよ」
戦士は謝罪すると顔をぴしゃりと手でたたき、気合を入れた。
パーティの空気が変わった。みな本気になったようだ。
しばし探索と戦闘が続く。
戦士「ここらで休憩としよう」
スカウト「ならさっき見つけた部屋がいいな。入口が一つで奇襲されにくい」
僧侶「そこまで案内をお願いできるかな」
スカウト「ついてきな」
そういうと一行はスカウトの後ろをついていった。
魔法使い「疲れたーー」
部屋に到着するなり、魔法使いはそう言うと真っ先に部屋で座りこんで、そのまま横になった。
戦士「3日間潜る予定だったが、しんどいな。明日少し探索したらいったん地上に戻らないか?」
僧侶「魔物の毛皮も邪魔ですしね」
スカウト「かといって捨てていったら金欠になってしまう」
魔剣「高価な薬やスクロールが発見できれば効率いいんだがな」
魔法使い「杖ほしいー」
僧侶「私は護符がほしいですねえ。そう簡単に見つからない魔法の品ですが」
スカウト「夢を見るのはいいことだぜ」
魔剣「呪いの品には気を付けてくれよな」
スカウト「呪いの品といえば、地上で見たんだが、友好的な地下種の吸血鬼が呪いの品で防具を固めてたな」
僧侶「恐ろしい」
魔法使い「よくディスペルされないわね」
魔剣「友好的な地下種とは取引があるって聞いたことあるな」
僧侶「ほう」
魔剣「地下種同士なら情報も得られるってことでダンジョンで重宝されているらしいぞ」
魔剣「ただ、地上種とはパーティを組まないって話だ。光の宝珠の力が体にしみるらしい」
僧侶「地下種もいろいろいるってことですね」
魔法使い「確かに町でも地下種のコボルトとか普通にいるしね」
魔剣「地下種のパーティは地上種とは違うルート開拓をさせられているのが現実だ。
同じ階層でも危険な場所でも同族なら見逃してもらえたりするからな」
スカウト「地下2階にあった進入禁止区域ってのがそれなんだろうな」
魔剣「さて、見張りのペアと順番を決めないか」
魔剣「私と戦士は別組にしたほうがいいだろう。それ以外は話し合って決めてくれ」
それを聞いた後衛3人は話し合ってペアを決めたようだ。