王城地下
休息日を挟んだ一行は、王城で見つけた階下への階段を下りるべく、ダンジョンに入っていた。
戦士「防具屋から頼まれた品、地下5階あたりで少し探してみますか」
スカウト「新しいところへ行くんなら、寄り道はしないほうがいいんじゃないか?」
僧侶「収納ボックスがいっぱいになっては、もったいないですからね」
戦士「そうか。じゃあ、予定通りに王城の先へ行こう」
戦士は考え直し、素直に王城へ向かった。
地下11階
悪魔の館を通り抜け、王城入口を通過し、ワープステーションで装置を使って、王城の別区画に移動した。
戦士「これが階段か」
スカウト「また長い階段だな」
一行は階段を下りていった。
地下13階
!!
思わず「えっ!?」と声に出してしまった。
周囲は明るく、今までの階層のように暗くなかった。
照明の魔法が無くても生活できる状態だった。
闇の力が増している地下の深層にもかかわらず、なぜこんなにランプに照らされているのか。
スカウト「なんだこれ」
僧侶「ランプが不要とは、なぜこんなことに」
魔剣「とりあえず進んでみるか」
階段を下りた先は通路で、通路にはドアが1つだけあった。
慎重にドアを開けると、そこは細い通路で、曲がっていた。そして曲がった先にまたドアがあった。
ドアの先は広い部屋で、地下種が待機していた。
スカウト「くるぞ!」
一行に気づいた地下種たちは襲い掛かってきた。
襲い掛かってきたのはコボルトたちだった。
僧侶「スペルキャスターが混じってますね」
そういうと素早く沈黙の魔法を詠唱した。
何かを詠唱し始めたコボルトは、声が出ないことに気づいたが、手遅れだった。
同時に魔法使いが、コボルト戦士に睡眠魔法をかけていた。
戦士と魔剣は混乱しているコボルトのスペルキャスターに斬りかかった。
スペルキャスターさえ始末してしまえば、あとは床に寝ているコボルトにトドメを刺すだけだった。
僧侶「ふぅ。初戦がこの程度でよかったですよ」
スカウト「収納ボックスの罠は、、、、と」
スカウトがコボルトたちの横に出現した箱の調査をしている。
スカウト「下手をすると、皆が石化しかねないものだな」
スカウトは皆に下がるよう指示し、一人で罠外しを始めた。
僧侶「スカウトさんが失敗して石化しても、回復魔法で治癒できるのでご安心を」
戦士「そんな高等魔法を習得したんですね」
僧侶「回数は少ないですが、あると無いでは大違いです」
スカウトの罠外しは成功したようだ。
そして、戦利品をいくつか入手した。
戦士「では先に進みましょうか」
今入ってきた大部屋の入口とは反対側に、ドアが1つ見える。
スカウト「一本道か」
ドアの先はまた通路だった。その通路も奥で90度曲がっており、その先にドアがあった。
僧侶「さっきと同じ構造ですね」
魔剣「ということは、次も大部屋ってことか?」
予想通り、大部屋だった。待機していた地下種が襲い掛かってきた。
今度はスライムと蝙蝠だった。
魔法使いは素早く睡眠魔法を蝙蝠にかけた。ほとんどが床に落ちたが、落ちなかったのもいた。
僧侶はスライムに睡眠魔法を撃ったが、効果がなかったようだ。
魔剣「やるぞ」
魔剣と戦士はスライムに斬りかかった。
スライムは切られる前に酸の液体を飛ばしてきた。
前衛は酸を食らいながらも、スライムを切りつけた。
2人の剣は特に酸の影響を受けずに、スライムを切り裂いた。
しかし、スライムはくっついた。ダメージはわずかなようだ。
魔剣「ダメだ!魔法使い殿!スライムを焼いてくれ!!」
魔剣が魔法使いに指示をした。
魔法使いは炎系範囲魔法でスライムを攻撃し、スライムが小さくなっていく。
起きている蝙蝠が戦士めがけて襲い掛かってきた。
魔剣の石化魔法で蝙蝠1体が落ちた。
まだ飛んでいる蝙蝠に、僧侶は聖属性魔法で攻撃した。
光の玉が飛んでいき、蝙蝠は息絶えた。
戦士「ふう。あとは寝ている蝙蝠にトドメだな」
一行は無事に戦闘を終えた。
魔剣「ついに眠りが効かない奴が出てきたな」
またも大部屋の反対側にドアが1つ見えている。
戦士「いきますか」
ドアを開けると、また奥で90度曲がっている通路が現れた。
魔剣「同じ構造だな」
そういうと魔剣は地図魔法を詠唱した。
スカウト「ループってわけじゃないんだな」
ループの可能性を潰した一行は先に進んだ。
曲がった通路の先はまたドアだ。
スカウト「いくぞ」
ドアを開けると悪魔らしき人影がいた。こちらを認識すると襲い掛かってきた。
魔法使いは対魔法用の障壁を展開した。
僧侶も沈黙魔法を詠唱したが、効果がないようだった。
悪魔の一体が魔法を詠唱しているが、止めるすべがない。
戦士と魔剣が悪魔と剣を交え始めたとき、2人に対して後衛にいる悪魔の魔法が炸裂した。
僧侶はすぐに回復魔法を詠唱してサポートに入った。
魔法使いは窒息魔法を詠唱した。数体の悪魔が苦しそうにして倒れた。
戦士「よし!]
態勢を立て直せた前衛が、悪魔との戦いを有利に進め始めた。
僧侶は継続的に回復する魔法を前衛に掛けると、聖属性魔法を詠唱し始めた。
魔法使いは混乱の魔法を悪魔に放った。数人の悪魔が明後日の方向に魔法を撃ち始めた。
魔剣「いける!!」
行動がおかしい悪魔以外を排除し、脅威は去ったようだった。
あとは混乱した悪魔を始末して戦いは終わった。
スカウト「連続戦闘とはな」
僧侶「沈黙魔法も効きませんでしたし、やっかいですね」
戦士「初めて見るタイプが多いな。王の居場所が近いのかな」
魔剣「休憩をとる場所がないな。どうするか」
スカウト「まだやれそうなら、進んで、どこかで帰還だな」
今後について話し合い、納得すると探索を再開した。
大部屋の反対側に見えるドアの先は、まっすぐな通路で、奥にはドアが1つ見えた。
スカウト「また戦闘が予想される。準備はいいな」
皆が頷くとドアを開けた。
今度は蝙蝠と悪魔が立っていた。
どうやらどちらも魔法にある程度の抵抗力を持つらしく、魔法がかき消されることがあった。
前衛の武器は有効だが、蝙蝠の動きが早く、眠りも完全とはいかないため、魔法使いは氷系魔法で対応する方針に切り替えた。
魔剣「蝙蝠は氷系で動きを鈍らせるのがいいな。幸い食らうダメージは悪魔の魔法よりマシだからな」
魔法使い「悪魔には混乱が効いたり、効かなかったりで安定しないわね」
魔剣「魔法をかき消すことから、ダメージ魔法も安定しないだろうな」
大部屋の反対側にまたドアが1つ見える。
スカウト「ほんとに一本道だな」
戦士「部屋と通路が交互に配置されてますねえ」
ドアの先は通路で、通路の奥にはドアが1つ見えた。
スカウト「次もきっといるぞ。いいな」
そういうとドアをあけた。
部屋には、スライムと蝙蝠、コボルトがいた。こちらを認識すると襲い掛かってきた。
まず魔法使いと僧侶で、コボルトを睡眠魔法と沈黙魔法で行動不能にした。
同時に蝙蝠に魔剣が氷系魔法で攻撃した。ダメージより行動鈍化を狙ったものなので、魔力の低い魔剣の魔法を有効活用する方法だった。
残った戦士とスカウトで、スライムの相手を開始したが、すぐに魔法使いのサポートが入り、片が付いた。
戦士「順調ですね」
スカウト「だな、慣れてくればなんとかなるな」
僧侶「毎回全力戦闘になりますねえ。魔法の回数消費が今まで経験したことないレベルですよ」
息をつきながら僧侶が語った。
魔法使い「私もー」
魔剣「魔力の低い自分のダメージ魔法にも、有効な使い方があったことに感謝だな」
今度は大部屋の向かいではない場所に、ドアが1つあった。部屋の入口から90度の方向だった。
スカウト「なんかぐるぐる回ってる気がするな」
魔剣が地図魔法を詠唱すると、地図が表示された。
踏破した形が「コ」の形をしていた。
スカウト「このままいくと、一周回るな」
笑いながらスカウトは言った。
僧侶「休憩場所がない以上、ここでゆっくりもできません。先へ進みましょう」
一行はドアを開け、通路を進むと、通路が2つに分岐していた。
正面は行き止まりのようだ。右に曲がった先にはドアが見える。
意を決してドアを開けた。
ドアの先は大部屋があり、今回は誰もいなかった。
スカウト「ん?誰もいないな」
大部屋の反対側には、これまたいつものようにドアが1つ見えた。
戦士「じゃあ、あのドアの先へ行きますか」
一行が部屋の中心付近に足を踏み入れた瞬間、目の前が真っ白になった。
光りが薄れて、あたりを伺うと、さっきまでとは違う場所に立っていた。
スカウト「!!」
魔剣がすぐに地図魔法を詠唱した。
戦士「ここは、この階層の入口!?」
僧侶「ああ、我々の後ろに上り階段がありますね」
スカウト「スタートに飛ばされたのか」
魔剣「あの部屋をどうやって通過するかを考えないとな」
魔法使い「ちょうどいいから、地上に戻らない?」
戦士「それもそうですね」
魔剣「まだ余力があると言っても、今から5階でアイテム探しをする気にはならんな。帰るか」
スカウト「防具屋の依頼か」
魔剣「ああ」
戦士「移動だけで大変ですからね。今回はやめときましょう」
僧侶「ではスリッパで帰還でいいですか?」
周りに同意を求めると、皆が頷いた。
僧侶は収納ボックスから宝石のスリッパを取り出すと、地面に叩きつけた。
光があたりを包み、一行の姿は消えた。
皆は地上に戻ってきた。