戦利品
地下11階の一度歩いた区画を再度調査する一行。
スカウトも休憩したおかげで集中力を保っており、もしシークレットドアがあれば発見できそうな感じだった。
戦士「通路の突き当りは、2つとも何も無しですね」
スカウト「あとは部屋が2つか」
1つの部屋はダークゾーン、もう1つは普通の部屋だった。
スカウト「ダークゾーンの中にシークレットがあったことが前に1度あったな。今回もその可能性を考慮してゆっくり進ませてもらうぜ」
真っ暗な部屋に入るとランプが消え、スカウトの手探りによる調査が始まった。
その時、ぼやーっと白い影が空間に浮かんだ。
戦士「幽霊だ!」
戦士は身構えた。続いて僧侶がすぐにディスペルに入った。
魔法使いは、魔法対策用のシールド魔法を詠唱した。
幽霊の氷系魔法を防ぐことに成功し、僧侶のディスペルが決まった。
スカウトは、順調そうな戦いを見て、すぐに調査に戻った。
僧侶「ふぅ。ダークゾーンでの戦闘は初めてですね」
魔法使い「獣人系はいないだろうけど、目に頼らない、幽霊とか昆虫は攻撃してきそうね」
魔剣「昆虫か。この暗さで攻められたら、我々前衛は何もできんな」
魔法使い「なら私が魔法で処理するから、後衛の防御に徹してくれる?」
戦士「そうしたいんだが、そもそも昆虫が見える気がしない」
僧侶「ああ、そうか。ダークゾーンでは敵の魔力の流れを感知できないときついですね」
魔剣「私は魔法を使うおかげか、なんとなく位置がわかる。ダークゾーンでは私が護衛を担当しよう」
戦士「すいませんが、よろしくお願いします」
僧侶「もしかして・・・」
そういうと僧侶はクラス1のランプ魔法を詠唱した。
光の玉が空中に発生し、直径3m位を照らし出した。そして30秒くらいすると光は消えた。
戦士「お、これなら近くにいる奴は、どうにかできそうだぞ」
僧侶「回数制限ありますから、毎回とはいかずとも、魔力感知から敵数が多そうなら詠唱することにしましょうかね」
新たな戦い方を発見していた一方で、スカウトは壁の調査を続けた。
魔法使い「ねえ。そのランプ魔法で壁を照らせば?」
僧侶「それはいいですね!やってみましょう」
そういってスカウトの声のする方へ歩いていき、壁を確認するとランプ魔法を詠唱した。
空中に光の玉が発生し、あたりを照らすが、壁は真っ黒なままだった。
スカウト「くそっ!すべての光を吸収しちまう上に、凹凸もわからんくらいに真っ黒だな」
僧侶「ランプ魔法で照らす作戦は失敗ですね」
魔法使い「いい手だと思ったんだけどなー」
魔剣「ダンジョンの未知の部分は、やってみるまでわからんからな。いい提案だと思うぞ。おかげで壁の特性がわかったからな」
残念そうに言う魔法使いを魔剣が慰めた。
スカウト「ダメだな、ここには何も無さそうだ」
戦士「ではもう1つの普通の部屋ですね」
魔剣「普通の部屋なら、とっくにシークレットが見つかってそうだがな」
あまり期待せず、もう1つの候補の部屋を調査すべく移動を開始した。
戦士「この部屋ですね」
そこは何もない空っぽの空間。かつては大量の物資があったであろう倉庫に、一行は立っていた。
スカウトが調査を開始して少しした時だった。スカウトは何かに気づいた。
スカウト「お、これは」
隠し通路だった。しゃがまなければ通れないほどの狭さだが、確かに通路だった。
戦士「やりましたね。早速いきましょう」
隠し通路を抜けた先にはドアがあり、看板が下がっていた。
”戦利品保管庫”
中に入ると、誰も入った形跡がなく、物資が少し保管されていた。
スカウト「杖と剣が1本ずつだけか。あとは何もないな」
魔剣「この剣、ミスギルの剣と似ているというか、ほぼ同じ気がするぞ」
魔法使い「嫌な魔法使いは、本物に似せた武器に呪いをかけるって言うよ」
戦士「それは危険だ」
魔剣「収納ボックスに格納しておくか」
更に部屋をみると、長方形の部屋の一角には壁が出っ張っている部分があり、ドアがついてた。
そして、そのドアには、看板がかかっていた。
”素材置き場”
一行は部屋の中に入ると、1つを除いて何もなかった。
スカウト「狭い部屋だな。これはスイッチか?」
スイッチを押すと、目の前が真っ白になり、光が薄くなると別の場所に立っていた。
スカウト「地図魔法で場所を確認してくれ」
魔剣が地図魔法を詠唱し、地図を表示した。
戦士「倉庫群に飛んできた場所の近くですね」
スカウト「だな」
そして一行が飛んできた部屋を見渡すと、そこはとても広い空間で、ドアが近くに1つだけあった。
僧侶「そのドアの先はダークゾーン部屋ですね。すでに踏破した場所に出るようです」
スカウト「ここは調査したときに、ダークゾーン部屋からは何もわからなかったな」
魔剣「一方通行のドアってことだろうな」
魔法使い「閉じたら壁になるやつかー」
ドアがあるのとは反対側の壁際を見ると、いくつか木箱が詰みあがっていた。
木箱は腐っており、崩れていた。
調査をすると、金属の塊が出てきた。
戦士「遺物ですかね」
スカウト「おそらくな」
僧侶「地図魔法を見る限り、あと怪しいところはなかったですし、ここまでにして帰還しますか」
戦士「そうだな。階段もわかっているし、ランプも消費したから戻ろう」
スカウト「毎回スリッパ使うのはもったいないな」
魔法使い「徒歩だと悪魔の館を抜けるのが大変なんだよね。それによくみるとあそこ、出口側から入るところがないのよね」
スカウトはハッとした。
スカウト「ん、なんだと。ということは別の通路があるってことだ。地図魔法をもう一度頼む」
魔剣が地図魔法を唱え、地図が表示された。
スカウト「この王城の入口にある壁、両サイドが怪しいな。それにワープステーションからこの区画に飛んできたが、地図をみるとこの通路の壁全部を調べれば、シークレットがあるはずだ。でなければ戻ることができないからな」
魔剣「なるほどな」
戦士「ではまだ余力がありますし、調査を再開しましょうか」
まずはワープステーションから飛んできた空間と、そこから延びる通路を調べることにした。
スカウト「ビンゴ!あったぜ」
魔剣が地図魔法を詠唱し、地図を表示した。
戦士「なるほど、意味のなかったダークゾーン通路につながっているんですね」
一行は見つけたドアを通り、ダークゾーン通路へ抜けた。全員が抜けるとドアは壁になってしまった。
魔法使い「一方通行ドアだったみたいね」
スカウト「探しても何もないはずだぜ」
戦士「次は王城入口付近ですね」
引き続き王城入口付近の壁を調査していった。
スカウト「ここも当たりだ」
悪魔の館を抜けた先の空間の一角にある、短い行き止まりの通路。その先の壁が回転し、ドアになった。
そして、通路に出るとまた正面にドアがあった。
そのドアの先も通路が続き、ドアが正面と左にみえる場所に来た。
魔剣は地図魔法を詠唱した。
スカウト「最近、地図魔法使ってほしいなってタイミングで、魔剣が詠唱開始してくれて助かるぜ」
魔剣「それはよかった」
2つのドアのうちの1つは、階段のすぐ横に出られる一方通行ドアのようだった。
もう1つのドアは、まだ先へ続いているようだった。
スカウト「先に続くドアの先を調査するか」
ドアを開けると小さな部屋にでた。
僧侶「休憩にはよさそうな場所ですね」
スカウト「階段も近いし、用はないな。シークレットだけ調査しておくか」
スカウトはそういうと部屋を調査したが、何もなかった。
戦士「ではそのドアから階段に出ましょうか」
一行が2つのうちのもう1つのドアを通ると、全員が通ったところでドアは壁になってしまった。
魔剣「やはりか」
戦士「悪魔の館を素通りできるとよかったんですが、これでは無理ですね」
少し歩くと上り階段がある。
スカウト「この階段は地下9階への階段だな。俺らがこの階層に降りてくるのに使ったやつだ」
僧侶「ということは、この通路の先は悪魔の館ってことですね」
スカウト「そうだ」
魔法使い「じゃあ、歩いて戻ろうよ」
僧侶「スリッパ代の節約ですね」
戦士「悪魔の館を抜けてワープステーションから戻るより、この階段の方が安全か」
スカウト「そういうこった」
一行は階段を上り、この地下11階に来た時と同じ道をたどって地上へ戻った。