降りればいいってものじゃない
戦士「準備はいいな。じゃあダンジョンへ行くぞ」
スカウト「地下9階も大体探索が終わってるな。またシークレット探しになりそうだ」
魔剣「頼みましたぞ、スカウト殿」
僧侶「ランプは今回は5つあります。いつもより2つ多いですが、どうせすぐ消費するでしょ」
魔法使い「そだねー」
戦士「帰還のためのワープは複数あるのに、地下にいくワープがないなあ」
スカウト「初心者が誤って飛んでしまうことを考えたら、無くて正解だな」
魔剣「確かにそうだな」
地下9階
スカウトたちは地図とにらめっこし、また歩き漏れがないか確認していた。
戦士「ないなあ」
魔剣「地図魔法で見ても、ありませんね。歩き漏れは無いようです」
魔法使い「漏れもなしかぁ」
僧侶「いよいよシークレットですね。怪しい部屋は、いくつか候補がありますね」
スカウト「部屋だけじゃなく、通路の壁も怪しいな。この辺一帯を調べよう」
目星をつけたスカウトを先頭に、ダンジョン探索を再開した。
スカウト「はずれだったか、何もないな」
魔法使い「いったん休憩しようよ」
戦士「そうですね。どこか場所はないですか?スカウトさん」
スカウト「なら、こっちだな。ついてきな」
スカウトの案内で一行は休憩できる安全そうな場所へ移動した。
魔法使い「疲れたーっ」
いつもようにまっさきに地面に座ると、そのまま横になってしまった。
僧侶「スペルキャスター系の獣人は何とかできてますが、それ以外も多彩になってきましたね」
戦士「あの火を吹く犬はビックリしたな」
魔剣「あいつか。距離取って構えているから飛び掛かるのかと思いきや、いきなり火だもんな」
僧侶「沈黙呪文が効果なかったので、ブレスに属する攻撃だったんでしょうね」
戦士「あれがブレスか。ドラゴン類のものしか想像してなかったな」
魔法使い「アンデッドも幽霊系がいたよね。滅多に合わないけど、ぼやーっとしてて怖い」
戦士「銀の剣だから効果あるが、通常のだと攻撃が効かなそうな奴でしたね」
魔剣「道中で装備強化したのは正解だったな」
魔法使い「あとはこの階層でゴブリンから奪った杖が何なのか、だなー」
僧侶「呪いの品でなければいいんですが」
魔剣「高速で動く昆虫がいないと楽だな。あれは顔に当たったり、小さかったりでロクなのがいねえ」
戦士「そうですね。開幕に氷系魔法でどうにかしないと、手が付けられなくなりますね」
魔法使い「獣人と犬は寝ちゃうし、この階層はアンデッド以外は問題無さそうね」
スカウト「そろそろ行くか」
新しい場所に目星をつけたスカウトが声をかけた。
戦士「よし、行きますか」
一行は部屋を出て探索を再開した。
スカウト「さて、この部屋だが。手前に小部屋が接続されてるだけだが、奥の壁の先が謎だ」
そういうと壁を調査し始めた。
僧侶「見つかるといいですね」
魔剣「ここにないと、また別の区画だな」
魔法使い「また歩くのか」
スカウトは何かに気づいた。
スカウト「あった。壁が反転してドアになってる」
奥に通路が現れた。通路の先には階段が見えるが、、、
スカウト「ん?上り階段だな」
僧侶「下りではないのですね」
戦士「ハズレか?」
魔剣「とりあえず行ってみようぜ」
一行は階段を上ることにした。
地下7階
スカウト「相変わらず長い階段だな。何で長いんだか」
階段を上った先は部屋状の空間で、隣に上り階段が見えた。
スカウト「また上り階段か」
魔剣「行くしかねえな」
魔法使い「階段疲れるぅー」
地下5階
階段を上った先は通路だった。
スカウト「通路は行き止まりか・・・」
戦士「嫌がらせか?」
魔法使い「また戻るのー?」
スカウト「ううむ。階層としてはおそらく地下5階だが、どこだかわからん」
魔剣「地図魔法を使ってみるぞ」
そういうと地図が出現した。
スカウト「ああ、この辺りになるのか」
僧侶「?」
スカウト「初めて真っ暗部屋に関係するスイッチを見つけたところの近くだ。地下城とは別区画だな」
僧侶「なるほど、うまくいけばシークレットがあるかもしれないですね」
スカウト「壁を調査するか」
ほどなくして壁が反転し、ドアになった。
戦士「次からはここを通ると、下層に行くのが楽になりそうですね」
スカウト「回り道が不要だからな」
魔法使い「それはいいとして、道が無いじゃない」
僧侶「確かに戻っても意味ないですからね」
スカウト「下層を再探索か」
魔剣「いまの階段に関係する通路や部屋はどこも狭い。全部調査したらどうだ?」
スカウト「調査か。わかった。疲れるが仕方ない」
そういうと一行は階段をまた下っていった。
地下7階
戦士「階段が並んでいたところですね。部屋の隅がへこんでますが、、、」
スカウト「調査してみる」
するとすぐに異変に気付いた。壁が反転してドアになった。
スカウト「抜けた先は小部屋か。休憩にはいいが、特にないもないな」
魔剣「またこの部屋の壁を調べたらどうだ?」
スカウト「どのみち行くとこないからな、わかった」
スカウトは壁の調査を始めた。調査の連続で疲れが出ているようだ。何度も同じところを調査している。
スカウト「あったぜ。スイッチだな」
スイッチを調査し、罠ではなさそうなことを確認すると、スイッチを押した。
壁が崩れて、目の前には通路が現れた。
戦士「よし!」
通路の先は広い空間になっており、そこから更に通路が伸びていた。
僧侶「一応調査はしたほうがいいですね?」
スカウト「ここまできたら、調査しておこう。みなは交代で休んでてくれ」
そういうとスカウト以外のメンバーは、見張りと休憩組を分けて、調査結果を待つことにした。
その時、自分たちの通ってきた通路から獣人の一団が侵入してきた。
警戒に当たっていた魔法使いはすぐに睡眠の呪文を唱え、魔剣が切りかかった。
休んでいた僧侶も離れたところから沈黙の呪文で援護を開始する。
何か詠唱をしていたゴブリンは魔法発動の瞬間、声がでなかった。不発にできたようだ。
続いてヘルハウンドが魔剣めがけて火を吹いた。
魔剣はダメージを受けたが致命傷ではない。相手をしたいが目の前にいるコボルト戦士の相手が先だった。
魔法使いはヘルハウンドに混乱の呪文を唱えた。
ヘルハウンドはその場でクルクルと走り回っている。時折、何もない空間に吠えている。
僧侶がブレス軽減の呪文でパーティーに保護をかけた。
コボルト戦士は眠り呪文をレジストして、魔剣と矛を交えている。
レジスト。
魔法を無効化すること。魔法の効果が発揮されない状態のこと。
戦士が狂っているヘルハウンドを仕留めていく。
魔法使いが動きの速いヘルハウンドに氷系魔法を詠唱し、動きを鈍らせて援護する。
魔剣はコボルト戦士とつばぜり合いをしながら石化魔法を唱えた。
目の前のコボルトが石になった。
魔剣「ふう、これで行動可能なやつはいないな」
戦士「トドメを刺していきましょう」
寝ている敵にトドメを刺していった。
するとゴブリンとコボルトの収納ボックスが現れた。
スカウト「犬の毛皮は有用かもしれんから、持っていくか」
魔法使い「箱に何があるかなー」
スカウト「まずは箱に罠があるか調査しないとな」
いてっ
スカウトは痺れて動けなくなってしまった。
戦士「どうしました?」
スカウトからの返事がない。その場で固まっている。
僧侶がスカウトの顔を覗くと生きてはいるが、動けないようだ。
僧侶「麻痺治癒の呪文をかけます」
すると麻痺が解けたようだ。
スカウト「疲れてて罠を見誤ったようだ。すまねえ」
そうして罠を外すと箱からいくつか装備と金銭が出てきた。
魔法使い「杖だー」
魔剣「2つもあるぞ」
戦士「お、強そうな斧があるぞ」
スカウト「戦利品があってよかったよ。苦労したカイがあるってもんだ」
戦士「この斧、装飾もすごいですねえ」
戦士が両手で斧を持ちあげた。
戦士「うーん、急に帰りたくなりました」
僧侶「どうしました?」
戦士「よし、突撃してこの斧の切れ味を試したい」
魔法使い「頭イッた?」
魔剣「まずいな」
戦士「よし、みんな帰ろう。帰りたい。とても帰りたい」
戦士の様子がおかしくなった。
魔剣「呪われたかもしれん」
スカウト「呪いの武具か?」
魔剣「以前いたパーティーで同じような症状になった前衛がいた。たぶん呪いだ」
僧侶「では地上に戻りましょうか。戦士さんも戻りたいって言ってますし」
戦士「言ってない!こいつで試し切りするんだ!」
魔剣「戦士殿、作戦変更だ。地上にもどるぞ」
戦士「帰りたい。うん、帰ろう。よし試し切りだ」
魔法使い「寝かすか」
僧侶「フレンドリーファイアですか?」
スカウト「冗談抜きでやったほうがいいかもしれん」
魔法使いは戦士に睡眠魔法をかけた。
魔剣「戦士をどうやって運ぶか」
僧侶「おぶっていくとなると、前衛が不足して警戒役が足りません」
スカウト「全滅する危険を冒すよりいい。スリッパを使おう」
魔剣「賛成だな」
魔法使い「初スリッパ!」
僧侶「そうですね。わかりました」
そう言うと僧侶は宝石のスリッパを地面に叩きつけた。
一行は地上へ転移した・・・・