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古の盟約

司書長官は古臭い小さな本を手に取り、早速本を開いた。


古の盟約とは、分離した光の宝珠又は分離前の宝珠を地上の定められた場所の祭壇に安置することであり、これは神が決めたルールである。

このルールを破り、光の宝珠を安置しなかった場合は、闇の宝珠が光の宝珠に引っ張られ、勝手に光の宝珠と合体して宝珠に戻るというものである。また、分離前の宝珠を安置しなかった場合は、夜が支配する世界になるというものである。


昼と夜を交互にもたらしていた宝珠を分離して、光の宝珠と闇の宝珠に分けたとき、どこからともなく声がして、このルールが告げられたそうだ。

実際にこの盟約が存在することが過去の出来事で確認されている。

以下はその時の記録を集めて編集したものである。


光の宝珠を浮遊大陸に設置した祭壇に安置すると、少ししてから光り始めた。

そして、「ぶーーーーーーん」という音がすると、宝珠から声が聞こえた。

「この世界の盟約に従い、事を成さん!」

低い老人のような声だった。

発言が終わると、光の宝珠の横に闇の宝珠が突然現れた。

その場にいた者が混乱する中、2つの宝珠が合体し、1つの宝珠になった。

なおも混乱する中、今度は外が薄暗くなり、やがて真っ暗になった。

その場で宝珠を分離しようとしたが、どうしてもできなかった。

仕方なく地上の祭壇に合体した宝珠を戻してから再度分離し、光の宝珠を地上の祭壇に祀った。

そして分離した闇の宝珠を地面に埋めることで、とりあえず昼だけの世界が出来上がった。


以上のことから盟約は確実に存在しており、浮遊大陸に光の宝珠を設置するという最善の策は不可能であることが判明した。


これで文章は終わっていた。

司書長官は「ふむ」とひと息つくと頭の中を整理し始めた。

どうやら過去は今と違って実際に神の介入があったようである。現在は神の使いが現れる程度で、神自身を見たことがない。

神の使いにドラゴン金属を供給されて続けている天球管理業務。神に一方的に押し付けられたものと思っていたが、事実は浮遊大陸での生活を得るための交換条件であり、我々がここに住む以上は必要な仕事というわけか。浮遊大陸への移住の代償だったということだ。

これは天球長官に見せたほうがよさそうだな。

司書長官はまた別の書物を探し始めた。



防衛長官は視界の隅で慌ててスカウトが本を戻して別の本を探しに行くのを視界の端で捕らえた。

何だろうかとスカウトが読んでいた"闇への対策と種族"を手に取った。

!!

まずい。非常にマズイ。

我々が秘匿していた獣人種の秘密が書かれていた。

現在地上のダンジョンにいる獣人種はすべてこの浮遊大陸製の生物だ。

翻訳魔法が掛かっていては止めることもできない。

ここに紹介されている遺伝子の本はおそらく獣人種の作成方法でも書いてあるのだろう。

そうなれば彼らが浮遊大陸侵攻時に見た実験室の意味を理解するだろう。

あの時は実験室と理解できなくても、本を読んだ今なら理解できるだろう・・・

実際に研究員と遭遇し、会話して情報収集したことはわかっている。

思ったより早く地上種との敵対関係は復活するかもしれんな・・・

離れたところにいた天球長官のところへ行き、肩を叩くと部屋の外へ誘った。


天球長官「どうしたんだ?防衛長官」


防衛長官は黙って手にした本を見せた。

"闇への対策と種族"

防衛長官「これには獣人種が我々浮遊大陸勢による産物であることが書かれています。他の書物にも同様の記載がありそうな書きっぷりでした」


天球長官は驚くと少し考えて発言した。


天球長官「だが今更この書庫の確認作業を止めるわけにはいくまい。

書物の確認が終わり、彼らがどう感じるか、どう動くかは気を付けておく必要があるが、今はとにかく荒立てるな。いいな?」


防衛長官「・・・わかりました」


そういうと2人はまた書庫に戻っていった。



156話の大司祭が天球管理システムをいじった時に出たシステムメッセージにも、古の盟約は変更されていないことが表記されています。盟約には神が関わっていることがミソです。

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