放たれた魔法
古代文字で書かれた書物のため、謎が解明されない危機かと思われたが、なんと司書長官が翻訳魔法という聞いたことない魔法を習得していた。
司書長官「これから諸君にその魔法をかける。少しすると古代文字が読めるようになるはずだ。
助手で試験したことはあるから安心したまえ」
法務長官「なぜ長官殿はクラス8を使えるのですか?それも本の知識でしょうか?」
司書長官は発言者の方を向くと、少し間を置いて回答した。
司書長官「長官を代替わりするときに伝承しているんですよ。もちろんこれも部外秘情報ですので他言することなきよう気を付けてください。
この翻訳魔法は特殊でして称号魔法という分類だそうです。
一定の地位にある者、肩書を持つ者が詠唱することができる魔法らしいです。
つまりは”司書長官”という肩書を持つ者だけが詠唱できるというわけです」
その説明を聞いた皆がなるほどと頷いていたが、魔法のことについて知らないことがあるというのも
不思議な感じだった。
辺りが静かになったので、司書長官は心を落ち着かせ、魔法発動の準備に取り掛かった。
クラス8。存在自体が知られていない魔法。
未知の領域へ皆が踏み込むことになった瞬間だった。
司書長官が詠唱を終え、全員に翻訳魔法が掛かった。
するとどうだろう。さっきまで記号や図形にしか見えなかったものが文字として認識できるようになっていた。とても不思議な感覚だ。
その文字らしきものを目で追うと、自分たちが理解できる言葉で頭に入ってくるのだ。
戦士「これはすごい!本の題名が読めますよ!!」
補佐「では手分けしてこの部屋の書物を読み漁るということでよいでしょうか?」
大司祭補佐はこの場所の主である司書長官を見て、許可を求めた。
司書長官は頷いた。
司書長官「何なら長官室の応接セットで読んでもらってもかまわんよ。ドアは開けておく」
防衛長官「さて、どこから手を付けるか・・・気になる題名のものでも追うとするか」
各々が題名を見ながらウロウロし始めた。
司書長官に応接セットを勧められたものの、皆が本を手に取りその場で立ち読みを開始した。
世紀の発見会の始まりである。
先に言ってしまうと、この部屋にあるものは大司祭がかつて司書長官だったときに、先代司書長官から正式に引継ぎを受けた書物である。その際に内容が内容だけに心を強く持てとも注意を受けていた。
どうやら何世代も前の司書長官が、長官室書庫から分離して厳重に別保管としたものだ。
大司祭が地上へ追放されるにあたり、次代の司書長官への引継ぎは必要であるということで、実際に引継ぎ作業がされた。が、彼は意図的にこの部屋についての引継ぎをしなかったのだった。
意図的にこの部屋の存在を途絶えさせたため、結果として現司書長官はこの部屋の存在を知らなかったのだった。