古代文字
司書長官はカードキー読み取り機の前から動き、補佐がゆっくりと歩いてカードキー読み取り機の前に来ると、司書長官は持っていた自分専用のカードキーを補佐に手渡した。
そして大司祭に見せてもらったようにカードキーを読み取り機にかざしながら図形を描いた。
すると先ほどとは違う場所にドアが出現した。
司書長官「!? おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
突然の司書長官の大声に一同はびっくりした。
司書長官「何だこれは!こんなドア見たことが無い!!どうやら犯罪者の言っていたことは本当だったようだな。さて、中に何があるか・・・」
ドアをゆっくり開けると中は幅5m奥行き5m高さ2m程の書庫だった。
1.8m程の木製の茶色い本棚が部屋の外周に沿って配置され、壁と天井及び床部分は濃紺一色だった。
薄暗く、明かりは無かったが、人が入るとうっすらと照明が点灯した。
先に入った司書長官に促され、全員が順番に中に入った。
棚には本が並べられているが、目線の高さのところにだけ配置されており、配置方法も表表紙が見えるように面陳列で配置されているため、贅沢な本棚の使い方をしていた。尤も本の数がそれほどないので、棚はスカスカであった。
皆が皆、パッと見たところ本の題名が全然読めなかった。
法務長官「ん?古代文字・・・か?これだと読めんな」
天球長官もそれを聞いて書物を適当に1冊手に取ると中を開いた。
古代文字。それは天球管理室でシステムが表示していた数百年前に浮遊大陸で使われていた文字だった。
それを見た冒険者側も浮遊大陸文字が読めるフェアリー種が書物を手伝ってもらいながら開いたが、やはり古代文字だったので読めなかった。
法務長官「司書長官殿は古代文字を読めるので?」
司書長官に皆の視線が集まったが、司書長官は首を横に振りながら応えた。
司書長官「私も古代文字は読めんよ」
顔には落胆した様子を見せず、言い放った。
天球長官「天球管理システムも古代文字が使われていますが、現代文字での翻訳も出てくるから操作出来ているだけで、読める者はおりません」
補佐「それでは大司祭の情報は正しかったが、彼のしたことの理由を読み解くことはできないということですか・・・」
落胆した声で補佐が呟いた。
スカウト「ここまで来て終わりか。読めねぇんじゃ、どうにもならんな」
吐き捨てるように言うと、暗い空気があたりを覆った。
その時だった。司書長官が口を開いた。
司書長官「私は読めんが、翻訳魔法がある」
「!?」
一同が驚いた。翻訳魔法。この世界で暮らしていて聞いたことない魔法だった。
法務長官「どういうことですか?」
強く追及したい気持ちを抑えながら質問した。
司書長官「クラス8の魔法にあるのだよ。翻訳魔法が」
クラス8。この世界はクラス1~7までの魔法で成り立っている。
そう、クラス8は存在しないクラスなのだ。
法務長官「司書長官殿はそのクラス8の魔法が使えるのですか?」
恐る恐る尋ねた・・・落胆しなくて済むように「無理」という回答が返ってくる覚悟をしながら。
司書長官「もちろん使えるとも」
「おぉーーー」
歓声が上がった。この部屋にある書物が焚火の燃料以外に使い道があることを示した瞬間だった。