到着
転移した一行。
目の前の光が消えて、見えてきたのは司書長官室にある転移の間だった。
冒険者たち、大聖堂の皆、王城の学者、司書長官、防衛長官、天球長官は司書長官室に転移してきた。
転移の間は各長官室にあり、長官室同士を転移できる造りになっている。
そして転移の間にはもう1人の人物が居た。
司書長官「ようこそおいでくださいました法務長官殿」
浮遊大陸の法を司る法務長官だった。大司祭が犯罪人であり、それと関係する内容であったことから、司書長官が別室に呼ばれるときにこの部屋に呼んでおいたのだった。
法務長官「長官室での会合以来ですな、長官諸君」
法務長官は片手を挙げて挨拶をすると、同時に転移してきた地上勢力と思われる面々を見渡した。
法務長官「かつての敵と一緒に現れるとは、少し前なら想像すらしていなかった出来事ですね」
司書長官「こうして我々が一緒に行動するほどの理由が、これからやることにあるというわけです」
法務長官「かの大犯罪者が何か言い残したとか言ってましたね」
司書長官「はい。犯罪者絡みなので長官にも加わっていただきたいと思いましてね。
場所はこの私の専用書庫です。部外秘情報まみれですが、今回は特例でみなさんに開示することとしました」
法務長官「犯罪者の遺言はそれほどのものなのか」
司書長官「ええ。私も知らなかった長官書庫の秘密があったようでね。それが事実なら外部の人間といえど招き入れるしかありません。現に、秘密はあるだろうと予想はしていました。
その答えが向こうからやってきたのです。
この秘密は恐らく歴代司書長官も抱えていた悩みですよ」
防衛長官「挨拶は済んだようですし、中に案内をお願いします」
転移部屋から応接室に移動すると、外への出入り口とは別の扉があった。
司書長官はその扉を指さし、あれが専用書庫の扉だと示した。
司書長官「では参りましょうか。何だかドキドキしますねぇ」
司書長官が自身のカードキーで専用書庫のドアを開けた。
この部屋は長官以外は立ち入り禁止の部屋である。
他の長官も同じような部屋が長官室にあるから、ここに部外者を入れることの緊張感は理解していた。
司書長官「どうぞ、中へ。ちなみにこの部屋の書物は見ないでいただきたい。
見えてしまった背表紙はみなかったことにしてくれるとありがたいね」
司書長官は冗談なんだか本気何だかわからないテンションで半分笑いながら話をしてきた。
司書長官「全員が中に入ったようだね。じゃあドアを閉めるぞ」
ドアを閉めると今入ってきたドアの近くにカードキー読み取り機が出現した。
司書長官「これは外へ出るときにカードキーをかざすためだけのものだったはずだ。
だが、地上人諸君の話によるとこれが別の部屋の鍵でもあるようだな」
司書長官はカードキー読み取り機の前から動き、補佐にこの場所へくるように場所を譲った。
補佐がゆっくりと歩いてカードキー読み取り機の前に来ると、司書長官は持っていた自分専用のカードキーを補佐に手渡した。
司書長官「さぁ、やってみたまえ」
大司祭に見せてもらったようにカードキーで図形を描いた。
すると先ほどとは違う場所にドアが出現した。
前回法務長官が出たのは長官同士で話し合いをした、103話からの長官室会議のときです。