禁忌と神の使い1
神の使いか何者か、事情を知らぬ地上人を安心させるために説明することにした。
天球長官「まず、神の使いは天球管理の素材を提供してくれる存在であり、天球管理での困りごとを解決してくれる存在です」
それを聞いた地上勢力の面々の目が見開いていた。驚いているようだ。当然か。
天球長官「我々は天球管理を神から依頼されている立場なのです。
言い換えれば、我々が神の使いの力を借りて天球管理をやっているということになります」
補佐「天球管理の手伝い人であるだけの神の使いが、地上の大司祭の秘められた伝言をなぜ知っていたのでしょう」
司書長官「大司祭は元司書長官。つまりは私の大先輩にあたる人物です。
そこで得た秘密を握ったまま地上へ追放されたことを何かしらで知ったのでしょう。
神の使いの力は我々浮遊大陸人にとっても得体が知れません。
神ならあらゆることを知っていても不思議ではないと考える方が楽というものです」
補佐「なるほど、神のみぞ知るではないですが、なんでも知っていて当然・・・か」
防衛長官「我々も"今回の事件"が起きるまで、神の使いは単なる神のメッセージを届けるメッセンジャーであり、天球管理に必要な素材提供者としか考えていませんでした。しかし・・・」
そこまで言ったとき、先をしゃべっていいものか他の長官の顔を伺うと、2人の長官は頷いていた。
防衛長官「今回、大司祭が大罪を犯したように、我々もあなた方地上勢力の侵入を防ぐために、神の使いから課せられていた禁忌を破りました。そして彼らから制裁を受け、神の使いが単なるメッセンジャーやお手伝いではないとわかったのです」
補佐含め地上勢力の面々は驚いた。今回の一件、大司祭のやらかしがあったが、浮遊大陸もまたやらかしていたのだと。そして禁忌を破るという穏やかでは無いワードまで出てきた。
補佐「その禁忌とやらは何だったのでしょう?夜に関係するものではなさそうですが」
防衛長官「それは天球管理用素材を武具に加工することです。
ご存じのように我々が使用する魔法金属には、ミスギル金属とその上位版のヨスギル金属があります。
ですが、さらに上位にドラゴン金属というものがあり、天球はこのドラゴン金属を使って管理しているのです。
神の使いからはドラゴン金属で武具を作成してはならないと言われていましたが、我々はその禁を犯したのです。
そしてその武具を使用した部隊は、神の使いに壊滅させられ、武具ごと金属を強制的に回収されました」
その話を聞いて、戦士たち冒険者は神の使いのドラゴンと初めて会った時の出来事を思い出した。
戦士「ああ、巨大なリズマンが一瞬で浮遊大陸の部隊を壊滅させたことがありましたが、そういうことだったんですか」
防衛長官「!! あのリズマンと遭遇したのですか?」
防衛長官は冒険者から巨大リズマンというワードが出てきて驚いた。
戦士「はい。今の話を聞いてやっとリズマンの言ったことが理解できました。
その時もリズマンから説明を受けましたが、ルール違反したから獣人部隊を始末した位の話としか認識できず、きちんと理解できていませんでした。
ヨスギル金属の上位金属の存在はその時に知りましたが、そのドラゴン金属のさらに上位金属で獣人部隊を切り伏せたとも説明されました」
防衛長官「さらに上だと?」
セイジ「夜空製の武器だって言ってたかな。力なき者には見えないとも言ってた。実際私たちには武器の柄部分しか見えなかったし」
冒険者達は体験したことをそのまま報告しただけなのだが、浮遊大陸側としては、神の使いについて知らない事がまだあったのかという心境だった。
参考:73話