理由
さて、困ったな。大司祭を復活させた真の理由か。
消滅させるためだとは言えないな。
かといって長時間悩んでいると怪しまれる。
補佐は何かいい案はないかと頭を高速回転させ始めた。
そうだ!あるじゃないか、いいやつが!
補佐「実は突然神の使いを名乗る人物が現れて、大司祭にやってもらいたいことがあるから復活させるといって、聞いたことのない蘇生魔法を使ったんです。
通常蘇生時に起こる衰弱も見られなかったことは驚きですが、神が実在するという事の方がもっと驚きましたね」
地上勢力からまさか神の使いというワードを聞くことになるとはな。
神の使いは、これまで地上勢力に顔を出していなかったはず。声までかけて蘇生するとは、それほどのことか。
長官たちは黙ったまま、次の言葉を待っていた。
補佐「そうして復活した大司祭から今回の訪問理由になる伝言を預かったという次第です。
たとえ大犯罪者でも大司祭です。事の重大さを考えると、今回の事件の首謀者であるという真実を隠すとしても、大司祭の死を広く知らせる必要があり、死の証拠に遺体を持ち帰ったのです」
天球長官「ということは、まさか今も大司祭は生きている?」
補佐「いえ。その神の使いに聞いたことない即死魔法で殺されました」
ここまで説明したとき、これはチャンスとばかりに蘇生失敗も説明してしまうことにした。
本来やろうとしていた魂の消滅が、結果的にできたのだから、ありがたい。
補佐「そのあと、蘇生を試みましたが失敗し、魂が失われました」
天球長官「そうか・・・」
その時、防衛長官が司書長官と一緒に部屋に戻ってきた。
どうやら転移装置で飛んできたようだ。
司書長官「こちらが地上勢力の方々か。何やら私の司書室に関する重要な案件があると伺ったが?」
司書長官は席に着く前に、歩きながら質問を投げかけてきた。
補佐「はい。ですが、その前に1つ確認したいことがあります」
この部屋にいる全員が何だろうかと補佐の方を見た。
補佐「神の使いについてです。大司祭は浮遊大陸人なら知っていた方がいいが、地上人は知らなくていいと言っていました。
そして、神の使いに触れて石化した騎士は石化解除の魔法を受け付けず、そのまま死亡しました。
ご存じの通り、石化解除魔法に失敗はありません。それが何度も失敗し、最後はバラバラに砕けてしまったのです。
当然、蘇生魔法も試みましたが、こちらも失敗。
まだ若くて生命力も神力もある騎士が、石化も蘇生も出来なかったのが不思議でなりません。
神の使いとは何者なのでしょうか。我々地上人を脅かす存在なのでしょうか?」
そう言う補佐の顔には少し怯えた表情が見てとれた。
天球長官は、なるほど、そういうことがあったのか、と地上でのやり取りを把握し、地上勢力は神の使いが何者か知らないから恐怖もするはずだと理解した。