奇妙な会議
会議室には地上勢力と浮遊大陸勢力が席に着いていた。少し前ならピリピリしていただろう。今は共に大司祭の被害者という立場となり、手を取り合うことはあっても戦争をするような間柄では無くなっていた。
天球長官「早速だが、聞きたかったことというのが、あの大罪人が設定した"コード"についてだ。
500年後に使うことになるのだが、後で冷静になったときにそれを聞き出していなかったことに気づいてな。
遺体を君らが持ち帰ったようだが、蘇生してでも聞き出さねばならぬ」
補佐「それでしたら、我々が大司祭より伝言を受けております」
伝言?ということは蘇生したということか。ここに本人がいないのは、また何かやらかすと危険と判断したか。
天球長官が想像していると、補佐が収納ボックスから一枚の紙きれを取り出し、長官に差し出した。
天球長官「これか。これはこちらで大切に保管しておこう」
そういうと長官もまた収納ボックスを出現させて、そこに紙きれを収めた。
天球長官「これで一安心だ。いやぁ、これが手に入らなかったらどうしようかと生きた心地がしなかったのでな。
さてさて、今回こちらに来たのは他に何か用件があったのでは?」
天球長官は自分の一番やりたかったことが済んだことで、顔には笑顔が溢れ、心に余裕が生まれてこの発言が飛び出してきた。
補佐「実は大司祭から遺言を預かっていまして、その内容が司書長官室にある専用書庫に関することなのです。
その書庫には、浮遊大陸人も知らない浮遊大陸に関することやこの世界について書かれた書物があるというのです」
二人の長官は互いに顔を見合わせた。
防衛長官「司書長官部屋か。確かに奴は元司書長官。辻褄はあっているな。ということは司書長官も同席させる必要があるな」
そういうと席を立ち、部屋の奥にあるドアから出て行ってしまった。
天球長官「司書長官室に入るには司書長官の許可が必要だからな。彼は連絡を取りに行ったのだよ」
離席した理由を残された天球長官が説明した。
大司祭から伝言を預かった、遺言を預かった。さっき彼らはそう言った。
地上のやつらは大罪人の遺体を地上へ持ち帰り、蘇生させて伝言を聞いた後に殺した?
ここに大罪人がいないのは、すでに死んでいるからか。
わざわざ"コード"を聞き出すために蘇生させたのか?
"コード"が大事なものであることを事件があった現場の短いやり取りで、これまで知識すら無かった彼らに理解できるだろうか。コードを聞き出すために蘇生させたのか、それとも他に理由があったのか。
裏をかかれるのは怖い。かといって彼らがその理由を素直に話すとも限らない。
悩んでいても仕方ない、ここは聞いてみるとするか。
天球長官「諸君らの発言で1つひっかかるのだが、大罪人・・・大司祭を復活させた真の理由は何かな?」
突然の質問とその内容に大聖堂側はびっくりした。
復活させたことは、これまでのやりとりで理解できるとして、裏の意図を探ってきたからだった。
魂の消滅のためなどと、王城の人間の前で言うわけにはいかない。
表向きは仲良しだが、まだ心から信用できる相手ではないと判断していること、互いに機密を持つため素直に情報交換ができない状況だった。
互いにニコニコしているけど楽しくない、そんな会議の始まりだ。