断言された絶望の結末
絶望的な状況の中、上級司祭は夜を除去する方法が無いのか、藁にもすがる気持ちで大司祭に問いただした。もしかしたら手段があるのではないか。
だが、淡い期待は無残にも切り裂かれることとなった。
大司祭「あったとしても500年経過しないと実行不可能だな。もはや500年、この世界を受け入れる以外に方法はない。それは浮遊大陸の奴らが一番理解している」
上級司祭「そう、ですか・・・」
上級司祭から力が抜けていった。そして座り込んでしまった。
補佐「もはやどうにもできないということですね・・・であれば大司祭様の処刑はやむを得ないでしょう。王へこの事実を報告することはできません。
こんな大聖堂の失態を報告すれば我々は終わりです。
世間には浮遊大陸に夜の除去に向かったが、失敗し、大司祭様は亡くなられたと説明しましょう。
そしてその際に蘇生も失敗したと。幸い高齢です。蘇生の失敗は珍しくありません・・・」
上級司祭「またも大聖堂の”ウソ”で民衆は動かされることになるが、真実を知らせるよりずっと良い提案と思います」
戦士「自分の身の可愛さに真実を隠すのか?」
突然戦士が割って入り、強い口調で問いただした。
団長「冒険者よ。言いたいことは分かる。だがな真実を知らせたとて民衆の生活には何も違いはない。
民衆と王が真実を知れば大聖堂が機能しなくなり、頼る者が無くなる。さらに辛い生活を送ることになってしまうのだ。ここは飲み込んでくれ。すまぬ」
静寂が空間を包んだ。
そして戦士はそれ以上発言しようとしなかった。
団長「ここにいる者が今回の出来事の証人だ。墓場までこの真実は持って行ってくれ」
補佐「大聖堂関係者諸君、そして冒険者諸君、私からもそのようにお願いする」
補佐は頭を下げた。
大聖堂の上級司祭以上が一介の冒険者に頭を下げるなど、ありえないことだった。
スカウト「無駄に混乱を招くより、ウソで塗り固めた世界のがマシってか」
上級司祭「その言い方は何だ!」
怒りながら言い返す上級司祭を補佐が止めた。
補佐「大聖堂の保身も含まれている。そのような物言いになっても致し方あるまい。
真実を知る者から何を言われようと大聖堂関係者は反論できん状況なのだ。
斯様なことを言われようとも、甘んじて受け入れる以外に我々に選択肢はない」
スカウト「わかってるみたいだな」
吐き捨てるようにスカウトが言うと上級司祭含め、騎士数名の拳が握られるのが見えた。
補佐「さて、今後だが夜の暗さは今あるランプ生活を継続すればよい。
問題はダンジョンから地下種がいずれ徘徊するようになるだろう。それを防ぐ対策が必須となることだな」
団長「それは我々大聖堂関係者で考えましょう。冒険者諸君にそこまでの苦労はさせたくない。
いずれ彼らには警備という依頼が冒険者ギルドに出されるでしょう。その時に活躍してもらいたい」
魔剣「承知した」
補佐「世間への発表は私が行いましょう。冒険者諸君、これまでご苦労だった。ありがとう」
団長「さて、大司祭にはこれで用はない。死んでもらうとしよう」
団長は腰から下げた剣に手をかけ、大司祭に歩み寄った。
団長「いまさら命乞いなどしないだろう?」
大司祭「もちろんじゃよ。それで気が済むならやるといい」
抵抗することなく、大司祭は仁王立ちしてた。
そして団長の剣が振り下ろされ、大司祭は倒れた。