遺跡調査
戦士「なんか、昨日ダンジョンに入ったのに、また入るのは変な気がするが、行きましょう」
準備が整い、ダンジョン入口にいるメンバーの前で戦士は違和感を発した。
スカウト「今日はあの地下遺跡の調査でいいんだよな?」
魔剣「一度遺物が出土しているので、その方がよさそうですね」
魔法使い「クラス4の魔法も一部習得して、炎系範囲魔法の威力が上がったよ」
魔剣「それは頼もしい」
僧侶「私もクラス4を習得し始めてますが、まだ毒消しを習得できていません」
スカウト「毒消し薬にはもう少しお世話になりそうだな」
そういうと一行はダンジョンへと入っていった。
戦士「地下7階のあそこまで、毎回歩いて移動するのがめんどくさいな」
僧侶「地味にザコに遭遇しますしね」
魔剣「帰りは転移陣があるのが救いだな。帰りも歩くとなると、食料がもっと必要だ」
スカウト「今のところ、落とし穴で階下に落とされないのが、ほんとに救いだ」
魔法使い「落ちたら階段の場所もわからないし。スリッパ案件ね」
僧侶「その方がいいでしょうね。ほんといい買い物になりましたね、スリッパ」
地下3階。メイン通りだからか、2つほどのパーティーとすれ違った。
戦士「俺らも少し前は、あんな感じでダメージ受けて戻ってたんだな」
スカウト「扉の前の話し声にビクビクしながら休憩してな」
スカウトは笑いながら言った。
魔剣「成長を感じますな」
地下7階
戦士「さて、地下遺跡の地下部分に戻ってきた。前回の探索の続きをしよう」
スカウト「了解。こっちだ」
スカウトを先頭に、最後尾に魔剣が配置されて探索を開始した。
元は城の中ということで、通路の両サイドにドアと部屋という構造が出てきた。
また通路も十字路やT字路で構成され、人工的なものであることが感じられた。
”救護所”
戦士「薬品でもあるかな」
中に入ると予想通り、ベッドなどはすでに運び出されたあとだった・・・
床には血の跡がないところをみると、衛生には気を使っていたのだろうか。
魔剣「何もありませんねえ」
スカウト「別の部屋に行こう」
"地図保管庫"
スカウト「お、これはもしや」
期待に胸を膨らませて、部屋に入った。
地図。そんなものはなかった。
スカウト「当たり前か。とっくに運び出されてるよな。期待した自分を殴りたい」
戦士「おいおい、大丈夫か」
相当ショックだったようだ。マッピングの手間が省けると思ったら、そうならなかったのだから。
僧侶「ほんとに色々部屋がありますね」
"兵士詰所"
戦士「武具があるかなあ」
中に入ると冒険者の一団がすでに部屋を探索しているところだった。
スカウト「別へ行こうぜ」
一行はさっさと部屋をあとにした。
"食堂"
スカウト「また食堂か。食器あるかな」
中に入るとミスギル製のデカいテーブルと付属品の椅子があった。
僧侶「テーブルは無理ですが、椅子なら収納できそうですね」
そういうと僧侶は椅子を収納した。
スカウト「とりあえず最低限のノルマ達成か」
魔法使い「食器とか、全然ないね。この部屋はもういいかな」
僧侶「そうですね、別の部屋もたくさんありますし、そちらへ行きましょう」
スカウト「そうだな」
"兵士詰所" "ワープステーション"
スカウト「何だこれ。ワープステーション?」
魔法使い「何のことだろう」
一行が部屋に入ると、貧相な装備のモコ種の冒険者がいた。
冒険者は壁をバンバン叩いたり、撫でたりしている。
冒険者「なんなんだここ?何もないじゃないか」
そう言うと部屋を出て行ってしまった。
スカウト「確かに何もないな。別の部屋を探すか」
"兵士詰所"
スカウト「またか」
ふいにドアを開けてしまった。
すると目の前の人影が襲い掛からんと戦闘態勢になった。
人影「!!おっと。冒険者仲間か。ふいに開けるなよ。びっくりするだろ」
スカウト「すまん。安全な部屋が続いて油断しちまった」
冒険者「そうだったのか、奥で仲間が休んでるからな、警戒してたんだ。斬りかからなくてよかったぜ」
戦士「迷惑かけました」
冒険者「なあに、お互い冒険者、そこんとこは分かるから気にするな。気を付けてな」
スカウト「ああ、お互いにな」
そういうと部屋をあとにした。
スカウト「この辺にある部屋は特に収穫がなかったが、まだ歩いていない通路がある。そこに戻るか」
魔剣「そうしよう」
しばらく探索を続けると、通路の行き止まりに突き当たった。
スカウト「行き止まりか。うーん」
その時、スカウトは何かに気づいた。
そして行き止まりの壁を調査し始めた。
魔剣「怪しいのか?よし後方警戒にあたろう。戦士殿こちらへ」
戦士「よし」
前衛陣が警戒にあたるなか、スカウトが何かを発見した。
スカウト「隠し通路だな。行くぞ」
短い隠し通路を抜けた先は部屋となっており、さらにドアが1つ見えた。
スカウト「ドアを調べる」
スカウトがドアを慎重に開けると、小部屋の中に冒険者が寝ていた。
スカウト「死体だ」
僧侶「なんと・・・」
魔剣「1人しかいないところをみると、ここに逃げこんで死んだか」
魔法使い「あれ?
岩陰の後ろにスペースがあr・・・」
死体が複数転がっていた。
戦士「どうしました?」
魔法使い「死んでる」
魔剣が急いで魔法使いの元に走った。
魔剣「仲間全員、ここで死んだのか」
スカウト「こんな隠し通路の先じゃ、普通見つけられないぜ」
魔剣「では予定通り、死体報告に戻りましょうか」
戦士「そうですね」
スカウト「ちょっとまった」
戻ろうとするメンバーをスカウトが引き留めた。
スカウト「お互い命をかけてやってることだ、少しばかり報酬を頂こう」
そう言うとスカウトは死体のポケットと出現していた収納箱をあさった。
僧侶「なんと・・・」
魔法使い「うーん」
戦士「スカウトさん・・・」
魔剣「気持ちはわからんでもないが、なぁ」
スカウト「綺麗ごとばかり言ってられないぞ」
そう言うとスカウトは死体から目を離し、メンバーに顔を向けた。
スカウト「あのな。俺らが全滅すれば、これをやられるかもしれない。ゴブリンや他の冒険者にだ。
冒険者だって、全員の懐が温かいわけじゃない。
どのみち大聖堂に報告しても大した褒章は出ないんだ。ここで金銭だけでも少し頂戴しないと、これからの冒険が大変になるだけだぜ」
僧侶「理屈はわかりますが・・・」
スカウト「まあいい、どうせ誰が盗んだかなんてわからん。金銭とポーションを頂いていこう」
スカウト「よし、このくらいでいいだろう。地上へ戻ろうぜ」
スカウト以外のメンバーは、何かひっかかるものを感じながら地上への道を歩みだした。