失意の中の帰還
大司祭の遺体を回収し、地上へ戻った地上勢力一行。
地上は夜だった。
これから一体どうするのか。
団長「冒険者諸君、一緒に大聖堂に来てほしい。今後のこともある。いろいろと話をしておきたい。
大聖堂の幹部連中にも説明しなければならないが、我々だけより第三者の君らがいたほうが説得力がある」
戦士「わかりました。ご一緒します」
戦士は団長の目をまっすぐ見ながら返答した。
僧侶「まさか・・・ねぇ・・・」
一言漏らす僧侶の肩に魔剣が手を置いた。
魔剣「信じていた大司祭殿のまさかの行動。真意は何だったんだろうな」
魔法使い「なんであれ、これからどーすんのよ。夜と昼が交互に来るって・・・」
団長「それも大聖堂で話をしよう・・・」
無言で団長の後を皆がついていった。
大聖堂裏口。正面から大司祭の遺体を抱えて入るわけにはいかない。
裏口から騎士に囲まれた大司祭の遺体が運びこまれる。目に触れないように・・・
団長「スカウト君。たしか大司祭の収納ボックスを開錠したんだったな。鍵はなかったかい?」
スカウトが頷くと鍵を手渡した。
団長は大司祭室の鍵を入手した。
団長「よし、大司祭室に運び込め。皆もそこに移動だ」
団長は部下と冒険者に行先を告げると、1人の部下に別途指示を出していた。
廊下ですれ違う司祭たちは騎士の軍勢に道を開けるため、通路の両端壁際に避けた。
静かに進む騎士たちと白布で包まれた大司祭。
騎士団は大司祭室前の2人護衛の騎士がいる目の前で大司祭室の鍵を差し込んだ。
護衛1「?」
護衛2「貴様何をしている?それはどこで手に入れた」
護衛が騎士に武器を向けて問いただす。
騎士が対応に困っていると、声が聞こえた団長が駆け寄ってきた。
団長「緊急事態だ。君らも中に入れ」
護衛2「騎士団長殿・・・何やら事情がおありの様子。わかりました」
護衛は素直に団長の指示に従うと、先に大司祭室に入った。
部屋は天井が3mほどで、天上の装飾は濃紺の正方形が並び、ところどころに金のひし形が描かれていた。
壁は白が基調となっており、窓はステンドグラスという他の部屋と同じ装飾だった。
部屋の奥には大司祭の大机があり、その手前には大きな机と椅子があり、応接セットになっていた。
ドアからその応接セットまで10m四方のスペースがあった。
そのスペースに大司祭の遺体を安置した。
騎士たちが遺体を取り囲むように並んでいた。
少しして1人の司祭が入ってきた。
大司祭補佐「団長殿。何やら急用だと伺いましたが、なにようでございま・・・」
大司祭補佐が入室すると、大司祭の遺体を囲んでいた騎士は、遺体への道を開けるかのように遺体の両サイドに整列した。入室した補佐の目は、正面の床にある白い布を掛けられた物体を捉えた。
それを見て大司祭補佐は言葉が止まったのだった。
補佐「こ、これは?大司祭様はどちらに?」
大司祭室。大司祭の許可が無ければ入室できないが、その大司祭の姿が見えなかったことに疑問を抱いた補佐は、団長に大司祭の所在を聞いたのだった。その問いに対して団長は床にある白い布に目を落とすことで応えた。
補佐「ま、まさか・・・」
補佐は白い布に駆け寄り、両膝をつくとそっと布をめくりあげた。
そこにはいつもの正装ではなく、冒険者の恰好をした大司祭が横たわっていた。