天球操作盤
5分ほど大司祭は苦労しながら文字盤を一生懸命打ち続いていた。
大司祭についてきただけの地上勢力にとってはやることが無いヒマな時間だった。
団長「大司祭様、何をしているのでしょうか」
団長が大司祭に問うたが、返事は無かった。
この様子を見て団長も再び口を閉じて見守るしかなった。
地上勢力の者も何をするのか知らないのか。
ということはあの大司祭とかいうジジイしかわからないということか?
防衛長官と法務長官からの連絡では100年以上前の元司書長官で犯罪者の可能性大と聞いていたが、司書長官は天球操作に何の関係もない部署人員だ。何か別の人物なんじゃないだろうか。
100年前という時点でおかしい。とっくに寿命で死んでいる。となるとやはり別人・・・
元浮遊大陸人であることは間違いないだろうが、だとすると過去にこの天球管理室にいた人物?
この管理室に犯罪者がいて地上に追放されたという記録はない。
あとは元天球管理員がこの大司祭に何か情報を漏らしているという可能性だが、漏らす理由も漏らす情報もない。夜を除去するには闇の宝珠を分離する以外に無いのだから。
天球長官は頭の中でいろいろと可能性を探るも答えは出なかった。
ピーーーー
またしても音を発し、巨大モニターに文字が出た。
”特殊コードを実行しました”
その一文のあとにも文字は続いていたが、浮遊大陸でかつて使われていた古代文字だった。
数百年前まで使用していた文字。
天球管理官たちには、所々は読み取れるが、何が書かれているのか意味がさっぱり分からなかった。
「!!」
天球長官にも文字は読めなかったが、それが意味していることはすぐにわかった。
天球長官は護衛の騎士を押しのけ、大司祭に掴みかかった。
天球長官「貴様!何をしているかわかっているのか!!すぐに操作をやめろ!!!」
天球長官は怒鳴りながら大司祭に命令した。
天球長官「貴様らもだ!こいつを止めろ!今すぐにだ!」
天球長官は周りにいた地上勢力を見渡しながら大司祭を止める様に怒鳴った。
だが、護衛は冷静に天球長官を大司祭から引き離して取り押さえた。
他の騎士も武器を向けて天球長官の制止に入った。
団長「どういうことだ?今何が起きているのだ?貴様はわかるの・・・」
団長が天球長官に質問している途中で、割って入るように天球長官が回答し始めた。
天球長官「天球のルールを変える気だ!どう変えるか知らんが、夜が消える以外のことが起きることに違いはない!」
天球長官は取り押さえられながらも大司祭を止めようと立ち上がろうとしていた。
この必死な形相と話し方。ただ事ではないと団長は判断した。
団長「大司祭様。何をしているのでしょう?夜を除去しているのですよね?」
団長は大司祭の後ろから声を掛けたが返事が無い。もくもくと本を見ながら文字を入力し続けている。
団長が大司祭の肩を揺さぶり、再び同じ質問をした。
大司祭「もう少しで終わるから、待っておれ」
大司祭は強い口調で返した。
夜が消える以外のことが起きる?
じゃあ、大司祭様は何の操作をしているんだろうか。
地上勢力の誰もが思ったことだった。
団長「大司祭様!お答えください!」
団長の叫びともいえるような問いに大司祭が答えた。
大司祭「浮遊大陸の者が言うことなど気にするな。惑わされるな。もうすぐ終わる」
浮遊大陸の言葉に惑わされるな。
ここまで何度も大司祭から聞いてきたセリフだった。
何度も聞いていたこと。そのおかげで地上勢力の者の心には平穏が訪れた。
この長官が騒ぐ前と何も変わらない。
この長官の発言は惑わすためのものだ。そう理解したのだった。
天球長官「あぁ・・・」
力なく声が漏れた。
天球長官「お前たち、このジジイをとめろ!!!」
今度は壁際に退避していた管理室のメンバーに怒鳴りつけた。
突然のことにびっくりしたが、鬼気迫る感じからただ事ではないと、大司祭を操作盤から引き離すべく壁際から一斉に大司祭に向かって走り出した。
護衛や戦士たちがそれを止める。
文官と武官。力比べで勝てるわけもなく、簡単に制圧されてしまった。
床に押さえつけられる天球管理員と長官。あとはもう見守る以外になかった。