戦闘1
戦場は互いの前衛が接近し、全体攻撃魔法では味方に被害が出る距離になっていた。
防衛長官としては、この魔法の打ち合いの中、耐えながら前進する前衛部隊を回復部隊が補助するという構図は想定通りだった。
意外だったのは獣人部隊の魔法被害ダメージが大きいことだった。
数が少ないはずの地上勢力の魔法使い。2倍以上の人員差があるはずなのに、なぜか同等以上のダメージを叩き出していた。
防衛長官「魔法の威力がすごいことになっているが、どういうことだ」
戦士「強化杖を持っているからかな?」
サクっと答える戦士。
あとは魔力値の高いフェアリーも混じっているからだろうと思ったが、これは言わなかった。
防衛長官「強化杖?」
戦士「ええ。属性威力だったり魔力値だったり強化する部分は色々ですけど、そんな魔法の装備品があるんですよ。
あなた方も防御魔法が込められた装飾品を装備しているじゃないですか。あれの攻撃版ですよ」
戦士は実際に獣人部隊と対峙して、獣人部隊は魔法の武器を持っていなかったが魔法の装飾品を持っていることだけは知っていた。
防衛長官「そんなものが・・・」
数的有利による最初のぶつかり合いの時点で、敵前衛が半壊することを期待していた防衛長官だったが、そうはならなそうな状態であることを理解し始めた。
だが、互いの前衛がピンピンしており、このままいけば騎士団前衛がこちらの前衛を捌ききれなくなるのは明らかだった。
しかし。
「!?」
自己回復が終わった騎士団達。今度は一部の騎士が同じく僧侶系魔法の即死魔法を詠唱し始めた。
そして複数の獣人が倒れて行った。
数を少し減らし、前衛同士が近距離戦を開始した。
今度は後衛から状態異常魔法が飛んでくる距離だ。
今度意表を突かれたのは騎士団側だった。
魔法の装飾品により魔法抵抗が増している獣人部隊には状態異常魔法が効きづらかった。
さらに数が多い獣人部隊は、騎士団前衛部隊と対峙していない者が騎士団の両脇に回り始めた。
このままでは前と横から突かれて崩れてしまう。
やったか。
そう思った防衛長官だったが、今度は回り込み始めた部隊への対処が的確に行われた。
それは回り込んだ獣人部隊の背後に魔法を炸裂させることで、騎士団からすれば獣人を盾にする形になり、攻撃魔法と騎士団で敵を挟み込む感じになった。
背後から魔法攻撃を食らってバランスを崩し、獣人部隊前衛の攻撃の手が止まった。
ダメージを受けた獣人への回復に僧侶部隊が対応する。
今や前衛と後衛は両陣営とも50m離れていた。これだけ離れていれば、前衛の一部が後衛へ奇襲をかけてくる心配はなかった。