戦闘開始
スカウト「いよいよか。騎士団の後ろ側に待機しよう。隙を見て横から前に出るぞ」
魔剣「承知した。後衛陣頼んだぜ」
冒険者チームの後衛が前衛に防御魔法を掛け始めた。
それを見て騎士団も防御魔法を詠唱し始めた。
これを見て驚いたのは浮遊大陸勢の獣人部隊前衛だった。
騎士団が前衛であることは、彼らの着用する鎧を見ればわかることだが、その全員が魔法詠唱を開始したからだった。
前衛が純粋な戦士職で構成される獣人部隊は、当然魔法を使えない。
これは前衛同士がぶつかる中で魔法詠唱をする余裕がないだろうということで、魔法詠唱はほぼ後衛に一任する戦術だった。
今は亡き特異種。大幅に高いステータスを誇る彼らでさえ、魔法剣士や神殿騎士のような魔法を使う前衛職はいなかった。
同時に魔法を複数詠唱できる能力、通常種より高いステータスから放たれる物理攻撃、そのように前衛後衛の職業の中で更に特化していただけだった。
一方の地上勢力は少数でダンジョンに入り、前衛が魔法を使えることが有益であることを経験則で知っていた。
ここにも実戦と演習で得られる教訓の差が出ていた。
戦闘が始まる前に戦闘は始まっていたのだった。
防衛長官「前衛が魔法詠唱?」
その発言を聞いた騎士団長が獣人部隊前衛を見ると、武器を構えて後衛からの防御魔法を待っている状態だった。
なるほどそういうことか。純粋な戦士職しかいないのだと理解した。
戦士「ん?ダンジョン攻略パーティーでは人気職ですよ。魔法使える前衛職って。うちのパーティーにも1人いますし」
そう言って戦士は魔剣を見ていた。
防衛長官「そう、、、なのですか」
防衛長官は、自分の知識にない"常識"を当然のように口にされて何とも言えない気分になった。
この映像と音声は各長官室でも確認することができる。
恐らく訓練や種族開発担当の研究棟長官や実験棟長官も見聞きしているだろう。
今後の育成に役立ててほしいものだと思った。
その時、フィールド中央にいた5人が一斉に転移魔法を詠唱し、光に包まれる。
戦闘開始の合図だ。
彼らが消えれば戦闘が開始される。あとはどうなるか見守る以外にない。
そして5人がいたところにあった光は消え、彼らも消えていた。
戦闘開始である。
一斉にお互いの前衛が距離を詰め、それに続く後衛とその場で詠唱をする後衛に分かれた。
前衛同士がぶつかる前に、それぞれの前衛に最高クラスである全体攻撃魔法が複数炸裂した。
防御魔法でダメージを軽減しているとはいえ、ダメージは受ける。
全体魔法が炸裂する中、回復魔法も同時に着弾し、ダメージを受けながら回復を受けるという展開が始まった。
なおも前進を続ける獣人部隊に対し、騎士団は足を止め、自己回復魔法の詠唱に入った。
後衛からの回復魔法と自己回復魔法で回復は十分だった。
一方の獣人部隊は自己回復の代わりに数が多い僧侶系魔法使いの援護で回復をしていた。
そろそろ全体攻撃魔法では危険な距離だ。
そして後衛の動きが変わり始めた。