新たなる提案
防衛長官としては、地上勢力が何を根拠に天球操作で夜が消えると思っているのか知らぬが、誤った知識を改める必要があると感じたため、再度説明することにした。
防衛長官「大司祭殿。お話はわかった。だが、天球操作について、地上には誤って伝わっているようだということもよくわかった。
まず、天球操作では夜を消すほどの調整はできない。
実際に管理している我々が言っていることだ。認識を改めてほしい」
何を言われても戦士と団長は揺るがなかった。
大司祭「それは先ほど話した通り、天球操作で夜を除去したあとに残る闇の宝珠の影響が、あなた方には受けれれられないものだからそう言っているとしか思えないのだ」
大司祭は意見を曲げてくれなかった。
防衛長官「そこまで言うなら、その根拠は何だ?天球操作で夜を消せるほどの調整は不可能なのだ。
"調整"程度では夜は訪れる。
それを崩せるほどの根拠は何なのだ」
強めの口調で防衛長官が大司祭に詰め寄る。
大司祭「我が大聖堂には古くから代々大司祭に受け継がれてきた書物がある。
そこに書かれていたというのが根拠だ。
更には浮遊大陸人が必死に宝珠の分離を説明してくる理由も書かれていて、まさに今あなたが言ったことだった。
だからそれを聞いて、書物のことは正しいと改めて認識させてもらったところだ」
戦士と団長はその書物を見たことは無い。だが大司祭の話を聞いて、矛盾もないしそんなものかと納得していただけだった。
ダメだこりゃ。もはや話し合いでどうにかならない。防衛長官はそう感じた。
防衛長官「そうですか。もはや何を言っても無駄の御様子。
となればあとは、残念ですが実力で排除するしか無いようです」
そう言われて戦士と団長は身構えた。
だが、防衛長官の両脇にいる護衛は相変わらず仁王立ちのままだった。
防衛長官「とはいえ、ここは戦闘用の空間ではありません。
建物に損害が出ても困るので場所を移しましょう」
戦士「そんなことせず、貴方を束縛し、探索を続けるという手もあるぞ」
戦士がとっさに口を出して団長は驚いたが、その通りだなとすぐに理解し、武器を構えた。
防衛長官「まぁ、待て。
そんなことをしても、こちらはあなた方を強制転移させるだけだ。素直に従ってもらおうか」
どこに飛ばされるかわからないが、延々と転移させられ続けて制御室に辿り着かないのでは意味がない。
大司祭「ふむ。場所を移したとして、我々が勝利したら天球操作させて貰えるのかな」
防衛長官「無駄なことだが、いいだろう」
大司祭「で、どこでやるのだ?」
防衛長官「軍事訓練場がある。そこでこちらの部隊とそちらの部隊で戦闘し、決着を付けようではないか。
そこで我々が勝った際は、あなた方には浮遊大陸から撤退してもらいたい。
あなた方が勝てば、先ほどの提案とおり、天球操作を認めよう」
大司祭「我々が勝利したところで、また別の場所に転移させて、天球操作させないなどということは無いだろうな」
防衛長官「戦闘の様子を別室から伺う予定だが、その部屋には大司祭殿と私、それとそちらは護衛を同席させるのはどうでしょうか」
大司祭「こちらだけ護衛同席か。なるほど約束を反故にしたら攻撃してもいいということか。人質みないたものだな」
防衛長官「そのとおり」
強行突破するのか話しに乗るのか、戦士と団長は大司祭の言葉を待った。
大司祭「貴方の提案に乗りましょう。どうすればよいかな」
防衛長官「今から転移の指示をするので、そのまま待っていれば大丈夫ですよ」
そういうとモニターで様子を監視しているだろう部下に向けて合図を送った。
床全体が白く輝き始めた。魔法陣がうっすらと浮かび上がり、そののち部屋全体を光が覆った。
そして光が消えると、そこには誰もいなかった。