長官室会議4
各部署の部外秘事項の漏洩。
罪の規定がないことだけは救いだった。
今度は法務長官が何やら秘密を持っているようだった。
法務長官「謎の1つは解けるなと思ってな」
「!!」
防衛長官と司書長官が法務長官に顔をキッと向けた。
法務長官「犯罪者には魔法の印を刻印し、これにより浮遊大陸に戻れなくなると簡単に説明しているが、その実、印がある状態で浮遊大陸への唯一の道であるダンジョン最下層に入ると、地上へ強制転移するというものだ」
2人の長官は話を聞きながら、あぁ知っているぞという感じで頷いていた。
法務長官「結論から先にいうと、この効果は誤魔化すことができる。つまりは魔法の印を刻印されながらも、浮遊大陸に来ることができるということだ」
2人の長官は思わず仰け反った。
防衛長官「だから謎の1つは解決できると言ったのか」
法務長官は無言で頷いた。
司書長官「でもどうやって?現存する魔法にはそんな魔法は無いぞ?」
法務長官「”ペンダント”だ」
はて?何のことかと2人の長官は首を傾げた。
法務長官「我々浮遊大陸人が地上に行くときに、”ペンダント”の着用を義務付けているだろう?」
法務長官は2人を顔を交互に見ながら言うと、2人も頷いた。
法務長官「あのペンダントを付けないでダンジョン最下層に侵入すると、浮遊大陸人は宝物庫奥の通路へ戻されるのだ。
正確には、王の間を抜けて王の間の前室に入った瞬間、浮遊大陸への転移部屋と宝物庫をつなぐ通路に強制転移してしまうというものだ」
防衛長官「そんな仕掛けがあったのか。まぁ、そもそも地上に行くことがないからな・・・」
司書長官「そのペンダントでどうやって誤魔化せるんだ?魔法の印の効果で地上側から最下層に侵入した時点で、地上に強制転移されてしまうが、ペンダントがあれば強制転移を防げるというのか?」
法務長官「地上と浮遊大陸をつなぐ、このダンジョン。最下層には壮大な仕掛けが施されている。
地上種も気づいているだろうが、王の間から浮遊大陸転移部屋までの区間は、転移魔法で直接飛ぶことが出来ない。地上種は地上からだと王の間の前室までしか転移魔法で移動できない。
つまり犯罪者は最下層に転移した瞬間に地上に強制転移されてしまう、ここまではいいな?」
2人の長官は無言で頷いた。
法務長官「犯罪者を地上に戻す効果と、浮遊大陸人を通路に戻す効果、ダンジョン最下層では2つの効果か発動するようになっている。このような仕様になっているのにはワケがある。
その昔、地上に追放した犯罪者が浮遊大陸に戻れないようにするために、とある魔法の仕掛けが必要になった。
そして犯罪者を地上へ強制転移させるには、犯罪者であることが判る”印”が必要だった。
犯罪者に押す魔法の刻印だな。
ダンジョン最下層には ”魔法の刻印がある浮遊大陸人” を ”地上へ” 強制転移するという術式が組まれている。しかし、強力な魔法がゆえに、反魔法を同時に仕込む必要が生じたのだ」
防衛長官「反魔法?」
司書長官「効果が逆の魔法ということか」
法務長官「左様。回復魔法の反魔法としてダメージ魔法がある。即死魔法の反魔法に蘇生魔法。そんな感じだ。
この反魔法の効果が ”魔法の刻印の無い浮遊大陸人” を ”浮遊大陸へ” 強制転移するというものとなる。
浮遊大陸まで戻されては都合が悪かったため、王の間から浮遊大陸への転移部屋までの区画を浮遊大陸と同じエリアと設定することで、この魔法は成立させることができたのだ」
防衛長官「なるほどな。仕組みはわかった。で、肝心のペンダントがあると誤魔化せる理由は何だ?」
長い説明よりも早く答えが知りたかった防衛長官は、法務長官に少し強めの口調で返した。