制御棟への道
自身の収納ボックスから杖を取り出し、杖を眺めていた大司祭。
ところが突然、正面に放り投げた。杖は地上に向かって放物線を描きながら落下していった。
一定距離が離れると杖は霧の中に消えて見えなくなった。
いったい何をするのかと思っていた騎士団や冒険者は呆気に取られていた。
何しているんだ?
誰もが感じたことだった。
一緒に杖を見ていた数名の中に騎士団長がいた。
騎士団長「大司祭様、いったい何を・・・」
皆の気持ちを代弁した騎士団長。それに大司祭が答える。
大司祭「なーに、ちょっとしたテストじゃよ」
更に杖を1本取り出すと、同じように放り投げた。
「どうしたジジイ、ボケたか?大丈夫か?」
何人かがそう思っただろう。
放り投げた杖が落下する様子を見ている大司祭。子供の遊びじゃないんだから、地上に投げて遊んでないで指示をしてほしいところだ。
騎士団長がまた声を掛けようとした時だった。
大司祭が後ろに振り返り、騎士団の面々の方を見た。
そして外円部から離れて近づいていった。
騎士団は大司祭が何か話すと感じ取り、姿勢を正して言葉を待った。
大司祭「さて、諸君。私を信じてついてきてくれ」
そういうと騎士団の顔を見回し、続けた。
大司祭「助走が大事だ。勢いよく行くように。わかったかね」
「???」
皆の頭に浮かんだものだった。
大司祭「これより、ここから飛び降りる。助走をつけて遠くへ飛ぶぞ!」
騎士団長「大司祭様!?いったい何を!!」
何を言ってるんだと言わんばかりに、騎士団長が聞き返した。
大司祭「大聖堂の大司祭に代々伝わる文書に、制御棟に行くには、外円部より空へ飛べと書かれている。
それを実行に移してよいものか、判断するために杖を投げてみたのだが、どうやら文書は正しかったようだ」
そういうと大司祭は騎士団に背を向けて、外円部に向けて走り出した。
騎士団長が伸ばした腕も大司祭を捕らえることはなく、大司祭は空中に踊り出た。
外円部から2m位離れた場所まで飛んだ大司祭は、そのまま放物線を描きながら落下していった。
騎士団長はビックリしたものの、放置するわけにはいかない。
急いで大司祭に続いて走り出した。
騎士団長「皆の者!続けーーーー!!!」
叫びながら騎士団長も空に身を投げ出した。
そして落下していった・・・
戦士「おいおいおい。どういうことだよ。ほんとに行って大丈夫なのか?」
魔剣「みんな飛んでるぞ。行くしかないだろう。行きたくないが」
スカウト「同じく行きたくないが、行くしかないか」
戦士たちも覚悟を決め、というより行かざるを得ない状況に無理やり対応した感じだった。
そして皆が地上へ落下していった・・・