過去の犯罪者
管理室の管理官たちは、システムチェックなどを行い、不具合がないことが確認された。
そして違うモニター班と一緒に地上勢力を同時に観察したところ、同じように2つの画面には警告コードが表示された。番号もさっきと同じ”B-24715”だった。
管理官「長官。これは何なんですか?」
防衛長官「脱走犯だそうだ」
法務長官から聞いたことを端折りまくって一言で表現した。
管理官「脱走犯?でも彼らは地上の人間たちですよ?それに今の監獄から脱走など考えられませんが・・・」
困惑した様子で長官の部下が返答すると、長官が続けた。
防衛長官「100年以上前の犯罪者だとさ」
管理官の横で聞いていた管理官の上官が裏返った声をあげた。
上官「はぁ?100年?」
防衛長官「諸君らがそう思うように、私も同じだよ。どういうことだろうか。2つとも壊れているが、我々が不具合を発見できないだけか、あるいは・・・機器の故障でないなら想定外の出来事か」
そこまで話した時、防衛長官は法務長官に連絡することを思い出した。
まさにその瞬間だった。管理室にある大型モニターに法務長官が映し出された。
管理官「法務長官より通信です」
法務長官は物凄く驚いた顔をし、息を切らせている様子だった。
法務長官「防衛長官。こちらから話す前に、そちらの機器チェックの答えを聞いておこう」
いきなりで驚きつつも、防衛長官も不具合がないこと、複数の機器で確認しても警告コードが表示されたことを説明した。
防衛長官「残る可能性は、我々が不具合を発見できていないだけか、想定外の出来事か。そのどちらかとなります」
それを聞いて法務長官が一呼吸し、自身を落ち着かせると口を開いた。
法務長官「まず、あのコードで管理されていた犯罪者は、元司書長官で、地上へ追放という刑罰を受けている。さらに浮遊大陸への帰還を拒めるように、浮遊大陸に行くための転送装置があるダンジョンの最下層への侵入を感知すると、地上へ強制転送するトラップ魔法の印も押されていると記録されていた。
つまりは、この浮遊大陸に戻ってこれるはずがない犯罪者ということだ」
それを聞いて防衛長官は少し安堵した。
防衛長官「ということは、こちらの機器の未発見の不具合という可能性が高いですね」
そこまで話した時、法務長官が口をはさんだ。
法務長官「その可能性もあるが、念のため私もそちらに出向き、専用コードで調べるとしよう」
そう言うとモニターが消えた。
法務長官が直接この管理室に乗り込んでくるようだ。
出迎えるべく、防衛長官は長官室にある長官専用転送部屋の入口に急いだ。
法務長官も走って移動したのか、息を切らせていた。
不具合の可能性もあるのに真面目なこった。防衛長官はそう感じつつも出迎えた。
地上部隊を監視している管理室に案内すると、問題のモニター前に通した。
法務長官「これがそのコードか」
防衛長官「コード表示は何度か点滅して、何も表示されないこともありますが、表示されるコードが変わることはありませんでした」
法務長官は顎に手を当てると、少し思案し、収納ボックスから1冊の本を取り出した。
法務長官「ちょいと失礼するよ」
そう言って席についていた管理官をどかすと、法務長官が席に着いた。
法務長官は本の目次を目と指で追ったあと、ページをめくった。
法務長官「法務室の者だけが入力できるコード使って、別モードに出来るんだよ」
これから何をするのかを簡単に説明した。
防衛長官は心当たりがあったのか、すぐに反応した。
防衛長官「ああ、犯罪者情報を表示するやつですね。確か私が着任したころに1度だけ拝見しましたね」
法務長官「ああ、あれは君の時だったか。そう、それをやろうと思ってな」
法務長官が本を見ながらコードを入力すると、いつもとは違うメニューが画面に表示された。