集合
時を少し遡ろう。
大司祭は騎士団や冒険者が集まった会議室を出た後、本殿にある自室に入った。
部屋の奥には大きなステンドグラスがあり、それと明り取りの窓からの光が部屋を照らす。
自分の机の前に立つと引き出しを開けた。
そこには戦士達が一番最初に浮遊大陸勢と遭遇戦をした時の戦利品”ペンダント”と”カードキー”があった。
ペンダントを手に取り、首にかける大司祭。
大司祭「ふふふ。これがあったからこそ、今回の計画を進めることができるというもの。
ほんとに良いものを発見してくれたな冒険者よ」
ニヤリと笑みをこぼしながら一人呟いていた。
そしてセイジ職のスタンダードなローブを身にまとうと、カードキーを収納ボックスに入れた。
大司祭「さて、と。いよいよか。長かった・・・いや、まだ終わったわけではない。気を引き締めねばな」
大司祭は両手で両の頬を挟み込むように叩くと自室を後にした。大聖堂裏口から外に出ると、暗闇の中、ダンジョン入口を目指して移動した。
いつもなら上級司祭が両脇に追従するが、今回は浮遊大陸へ行くという大事な任務と大聖堂の管理が重なったため、彼らは大聖堂の管理を任されて残留することになった。つまり大司祭は1人で行動していた。
ダンジョンの入口に到着すると転移魔法を詠唱し始めた。
光が大司祭を包み込み、光が消えると姿が消えていた。大司祭はダンジョン最下層に飛んだのだった。
ダンジョン最下層
王の間の前室に到着した大司祭。以前も一度来ていたが、今回も何も起きることなく無事に前室に到着した。前室ではここに作った探索拠点管理を担当する騎士団の面々がアクセクと働いていた。
大司祭はそのまま王の間に入り、宝物庫を通過すると浮遊大陸へ至る通路に入った。
幅3メートルほどの通路には、騎士団や冒険者に浮遊大陸へ行くよう指示した司祭が立っていた。
司祭「大司祭様、騎士団と冒険者は先に浮遊大陸へ飛びました」
大司祭はその報告を聞くと頷いた。
大司祭「わかった。お前は大聖堂での通常業務へ戻りなさい。連絡業務ありがとう」
大司祭はにっこりとしながら、労を労うと司祭の肩をポンと叩き、浮遊大陸に転移する部屋に入った。
30m四方ある部屋にちょこんと大司祭1人がいる状態になり、四角いプレートにカードキーをかざすと
”ぶーーーーーーーん”
という音が鳴り、再びカードキーを四角いプレートにかざすと扉が開いた。
そこは浮遊大陸だった。
先ほどいた3m幅の通路と違い、10mはあろうかという幅を持つ通路に騎士団と冒険者が待機していた。
部屋の扉が開き、1人の老人の姿を確認した騎士団長がすぐに大司祭だと気付き、駆け寄った。
騎士団長「大司祭様。ここに騎士団と冒険者全員が揃っています」
騎士団長が状況を説明すると大司祭は頷いた。それを見て騎士団長が続ける。
騎士団長「ここより、建物を出て”中央”へ飛ぶ建物に侵入します。”中央”から更に”制御棟”へ飛ぶ部屋へ向かうことになります」
騎士団長は大司祭に、これから進むべきルートの説明をした。
大司祭「わかった。では向かうとしよう」
大司祭がそう言ったが、誰も動こうとしない。
大司祭が不思議に思っていると、騎士団長が後に続くような行動をしたことで状況を理解した。
大司祭「騎士団長。私は先頭ではなく、中衛に就く。前衛と後衛は君らに任せたぞ」
騎士団長は隊列順を把握したことで、騎士団に並び替えを指示すると同時に、全員で固まってもしょうがないということで、前進部隊と語詰めに分けて再配置した。前進部隊は早々に出発し、その間に冒険者たちは大司祭がいる中衛付近に陣取るように移動した。
この作業をしている最中も浮遊大陸側は監視をしていた。監視は防衛・警備を担当する防衛管理室が担っていた。
管理室にいる管理官の1人がモニターに表示された警告メッセージに気づいた。
ちょうどその時、地上勢力の一行は、この転送用建物を出ると、”中央”へ飛ぶための部屋がある建物に向かって移動を開始したところだった。