資金
宿で整理も終わり、いつもの食事処に到着した。
魔剣「まずは塩肉だ!」
そう言うと皿に肉を乗せて戻ってきた。
そして、”ゴブリンで資金稼ぎとアイテム調達しよう作戦”が成功し、皆で乾杯した。
皆が満足した頃に魔法使いが聞いてきた。
魔法使い「あのね、ここの甘味を食べたいんだけど、いいの?金銭的な意味で」
スカウト「あぁ、そうか。その話をしようと思っていたんだ」
そういうとスカウトは身を乗り出し、皆の顔を見渡した。
スカウト「今回、まとまった金が手に入った。この分配について提案がある」
そういうと話を続けた。
スカウト「パーティーにはお金の分配方法がいくつかある」
そう言ってから指を1本立てて、続ける。
スカウト「1つめ、全員で均等に分配だ。これは固定じゃないときに常用されるものだな」
魔剣「ふむ」
スカウト「2つめ、半分をパーティー資金としてプール、残りを全員で分配する方法。まあ半分だったり3分の1だったり、その辺は数字のお遊びでしかない。簡単なのは半分だな」
戦士「なるほど」
スカウト「3つめ、一定の決めた額をパーティー資金としてプールし、残りは全部分配する」
僧侶「2と3は似ていますね」
スカウト「3はそのパーティーに必要な経費や資金が読める熟練者パーティー向けだ。
うちらは必要資金が読めない。だから2つ目の策を用いようと考えていた」
魔剣「確かにいくらあれば足りるかなんてわからないな」
僧侶「各自の武具代金も各自の持ち金でやりくりですか?」
スカウト「パーティー資金は、パーティーの食費、宿代、武具代、薬品代、鑑定料なんかに使う。
各自の資金は、遊びや嗜好品、仕送りや貯蓄なんかだな。好きにするといい」
戦士「なるほど、それならいいかもですね」
魔法使い「やっと仕送りできる」
僧侶「仕送りしていたんですか。意外です」
魔法使い「妹の魔法学校料に必要なのよ」
スカウト「俺も家族に仕送りしてる身だから、どこかでこの話は切り出したかったんだ。
今回やっとまとまった金が手に入ったから、内心とてもホッとしていたんだ」
戦士「家族持ちだったとは」
スカウト「そんなわけで、甘味は嗜好品扱いだ」
魔法使い「はーい」
スカウト「皆がよければ、このルールで分配するが、よいか?」
みなに不満の色は無かった。
するとスカウトはお金を分け始めた。
スカウト「端数はパーティー資金にするぜ。あとパーティーの金は引き続き管理しておく」
魔剣「ああ、たのんだぜ」
戦士「経理がいてよかった。金の管理とか怖くてとてもとても」
僧侶がそれを聞いて笑っている。
スカウト「もう1つ提案なんだが、、」
戦士「なんだい?」
スカウト「保険に入らないか?」
魔法使い「何それ?」
スカウト「宿かギルドが窓口になっているんだが、全滅時に遺体回収を依頼するため、
生前にあらかじめ依頼しとくってモノだ」
戦士「死ぬ前に?どういうことだ??」
スカウト「宿に戻る期日を指定し、その日までに戻らないと、ギルドの捜索隊へ通報が入り、
届け出ていた階層を中心に探索してくれる」
魔剣「なるほど」
スカウト「落とし穴で死亡したことを考慮し、1つ下の階層までみてくれるかは保険料によるな」
僧侶「永久保険ではないのでしょう?」
スカウト「あぁ、それじゃ儲けにならんからな。期限はある。あと気になるのは、、、
ふいうちで全滅しなければ、一人が緊急帰還アイテムを所持していると、
それだけで全滅は防げる。つまり保険料と帰還アイテムを天秤にかけて判断ってとこだな」
戦士「たった1つとはいえ、収納ボックスを圧迫するから、それも考慮にいれないとね」
スカウト「そうだな」
魔法使い「いまのところ、敵に脅威を感じないから不要かなって思う」
僧侶「そうですね、後で緊急帰還アイテムの価格を見ませんか?」
スカウト「そりゃそうだな。まずは道具屋行くか」
それを聞いて皆が首を縦に振っている。
そして一行は食事処を出ていった。
道具屋
薬品やスクロールなど武具以外を取り扱っている。
それぞれ上位品を揃える専門店があったりもする。
スカウト「緊急帰還アイテムが見たいんだが」
店員「ああ、それでしたら、これですね」
そう言うと店員がカウンター横にある棚に並べられた商品を指さした。
”ガラスのスリッパ”
店員「それが該当のアイテムですね。
床に叩きつけて、壊すことで一定範囲内の人を地上へ飛ばす魔法具ですよ」
魔法使い「へえ、結構いいお値段ね」
スカウト「期限がある保険よりこっちにしないか?ふいうちさえ気を付ければお得だし」
戦士「なかなか高級品だな。自力で見つけられるとよかったが、仕方ない」
僧侶「全滅よりマシです。これを買いましょう」
そう言うとパーティー資金での購入を決めた。
魔剣「あとはないか?なければ宿に戻ろう」
スカウト「ああ、俺は仕送り手続きしてから宿に戻るから、ここでお別れだな」
魔法使い「あ、私も仕送りしてくる」
戦士「じゃあ、我々だけ宿に戻りますか」
一行は2組に分かれて店をあとにした。