休養
戦士たちは次に大聖堂から声が掛かるまで5日ほどあると会議室で司祭に言われていたので、その間に装飾品や魔法の杖を入手するため、ダンジョン探索をしようと考えた。目的は戦力増強である。
このところずっと浮遊大陸に行って調査ばかりであった。
浮遊大陸の兵隊が持っている武具はヨスギル製であり、魔法の武具がなかった。
魔法の込められた装飾品は少し回収できたが、それも初回の浮遊大陸調査の時だけだった。
前回の調査の時はそもそも遭遇戦が無かったので、収穫はゼロだった。
おそらく制御室付近にいるであろう戦力と戦うことを考えると、魔法の杖による魔法の強化をしておきたかった。
本来であればダンジョン攻略中に達成する予定だったが、運悪くロクな杖が見つからなかったのだ。
いつもの食事処で食事をしながら、戦士はダンジョン探索の提案をした。
戦士「このところ、浮遊大陸調査ばかりで、我々の戦力増強になるものが何も発見できていません。
ダンジョン攻略中のときは、よい武具はいつか見つかるだろうって考えてましたが、ちょうど5日ほど空き時間ができたので、この機会にダンジョン探索をして魔法の杖とかを探すのがいいかなって思ったんですが、やりませんか?」
突然の戦士の話に皆が手を止めて話を聞いていた。
最初に反応したのはスカウトだった。
スカウト「いいねえ。俺は武具はともかくダンジョンもたまに見てないと、感覚が鈍っちまう」
魔法使い「やっと魔法の杖が手に入るーっ」
魔法使いは前々から魔法の杖、特に属性力を強化する杖を欲していたので、この提案に一番乗り気だった。
僧侶「私も結局魔法の護符を見つけられていませんので、欲しいですねえ。あって困らない品ですし」
僧侶も魔法使いと同じだった。
それにしてもダンジョン攻略、それも最下層の攻略をしていたパーティーにしては運が悪すぎた。
普通なら僧侶か魔法使いの欲していたアイテムは見つかるものである。
物欲センサーが元気よく発動していたのかもしれない・・・
魔剣「武器は現状で満足しているからな、レベル上げという点では役に立つな。行こうではないか」
魔剣も賛成だった。
戦士「皆さん、ありがとうございます。では我々は更なる戦力アップのため、ダンジョン探索を再開します!」
戦士が皆に宣言した。
パーティーメンバーから拍手が起こった。
突然の拍手喝采に、店にいた冒険者たちが戦士達のテーブルに振り返った。
僧侶「ではフェアリーさんたちには、このことを報告しておきましょうか」
戦士「そうですね。あとで報告しに行ってきます」
スカウト「話はそれで終わりか?」
スカウトがいつの間にか食事を再開していて、食べながら聞いた。
戦士「はい。これで終わりです。さあ食事を再開しましょう」
さあ食うぞーってタイミングで僧侶が口をはさんだ。
僧侶「あの、ダンジョン探索はこれまでのルーティンとおり、明日は休みで明後日出発でいいんですよね?」
なんだそんなことかといった仕草で魔剣が答えた。
魔剣「当たり前だろ?俺たちはずっと帰還した日と翌日は休みってパターンでやってんだ。
今回も同じだ。だよな?戦士さんよ」
魔剣が戦士の方を見ながら同意を求めた。
戦士「はい。探索開始は明後日からですね」
にこやかに戦士が答えると僧侶も満足したようで、食事を再開していた。
そんなときである。店長が鶏肉の丸焼きを持ってテーブルにやってきた。
店長「やぁ、飲んでるようだな。これは店からのプレゼントだ。食ってくれ!」
そう言って鶏肉をテーブルの真ん中にドカっと置いた。
戦士「どうしたんです?プレゼントだなんて」
店長「ああ、あんたら有名になったろ?実力者だって聞いたぜ?
そんな有名人がよく来る店ってんで、巷じゃ少しばかり有名店になったのよ。
そのお礼だな」
照れくさそうに店長が理由を説明してくれた。
戦士「そういうことでしたか。有名人かぁ」
戦士もなんだか照れくさそうだった。
僧侶「ありがたく頂きます。有名にした一番の功労者は魔剣さんですかね」
そう言って僧侶は魔剣の方を見た。
魔剣「俺?」
僧侶「ええ、だってこの店を紹介してくれたのはあなただったじゃないですか。前のパーティーで使ってたとかで」
魔剣「ああ、そうだったな。随分前の話だな」
魔剣も照れていた。
店長「リズマンのあんたがウチを選んでくれたのか。ありがとな!」
そう言って店長はリズマンの肩をバンと叩いて、厨房に戻っていった。
最初は無名だった彼らも、今では”地下種の王を倒したパーティー”、大聖堂の任務をこなす”勲章持ちパーティー”など色々と名声を得ていた。