帰還と報告1
大聖堂に到着した戦士達一行。
今回も直接大司祭に報告しようと、その旨を入口にいた司祭に話すと、司祭もわかっているのか奥の会議室へ案内を始めた。
そう、ここ最近いつも使う大聖堂の離れにあたる建物の1室だ。
部屋に通され、部屋の中央にある10mはあろうかという巨大なテーブルに着いた。
部屋が広いせいでテーブルが小さく感じるが、着座してみると十分デカいことを実感する。
しばらく待っていると、大司祭がお供を連れて入室してきた。
大司祭「ほほっ。ついに戻ったか」
入口に入って戦士たちを認識するなり、挨拶もなくそう言った。堅苦しくない関係ともとれる。
そして戦士たちの向かいに座ると、その両脇にお供の司祭も着座した。
大司祭「先にも戻った騎士団の話によると、手分けして建物を調査したそうじゃないか。
結果はどうであった?」
戦士「残念ながら制御室に至る案内看板や通路などは、発見できませんでした」
そう話して戦士が俯いた。
大司祭「そうか・・・それで?収穫としては何もなかったのか?」
戦士「あぁ、そうだ、あるんです」
戦士は少し興奮した様子で応えた。
大司祭が少し前かがみになり、興味を示した。
戦士「明らかに制御室の場所を知っていると思える人物に遭遇しました」
大司祭はこの一言で、また現地人に聞き取り調査をしたのだと分かった。
戦士「場所は教えられないと言われましたが、ほかにも色々と話をしました」
大司祭「なるほどの。どんな話だった?」
大司祭は変わらずニコニコと聞いている。
戦士「まず、天に光る玉のことを彼らは”天球”と呼んでました。
そして天球の調整では”夜”を消すことは出来ず、光の宝珠から闇の宝珠を分離するしかない。だから、分離に協力しろ、協力するなら浮遊大陸から全員引き上げろと言っていました」
戦士が興奮気味に話し、一呼吸おいてまた話し始めた。
戦士「彼らはすでに、宝珠を分離する人をこの大聖堂へ派遣したとも言っていました。
ただ、その人たちはまだ戻ってきていないとも。
我々はそんなこと知りませんでしたが、これは本当なのでしょうか?」
大司祭の前のめりだった姿勢はいつの間にか、背もたれに寄りかかる形になっていた。
そして体を起こすと、戦士の質問に答え始めた。
大司祭「ふむ。ほんとにたくさんあるな。1つずつ解決していこうか」
大司祭はゆっくりと話していて、顔から笑顔は消えて真面目な顔つきになっていた。
大司祭「騎士たちには話していたことだが、天球の調整では夜を消せない。
これは彼ら浮遊大陸側が自分たちの都合の良い世界を作るために説明している内容に他ならない。
ここにもその内容を説明に来た浮遊大陸人がいたが、大聖堂の古文書にはそう記載されておらず、
過去に”夜”が出現したときは、宝珠を分離して解決したがために、君らがこれまで生活していた世界になってしまったとある。つまりは地上と地下勢力でそれぞれ宝珠を所有し、争う世界だな。
地上と地下が争うことになっても、浮遊大陸人には関係ないことだ。
調整によって夜を消すと僅かに残る闇の宝珠の影響、それを彼らは嫌うのだ。そんな世界にならないように、彼らは何としても分離しようとするのだ。惑わされてはならぬ」
長い説明が終わり、また大司祭は話し始めた。
大司祭「次に、彼らがこの大聖堂に来たのかという点だが、これは”来た”と言っておこう。
そして宝珠の分離の説明と協力を申し出てきた。
だが、先ほど説明したとおりなので、お帰りいただいたというワケだ」
戦士「彼らは大聖堂に向かった人員が戻っていないと言っていました。これはどういうことでしょう?」
大司祭としては、今回の報告の中で一番面倒な案件だった。
何せ数日前に、その浮遊大陸の使者と分離技術者をこの会議室で抹殺したのだから。
さてどうしたものかと大司祭は少し考えた。