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尾行

建物から外に出て、石畳の通路を素早く観察し、30m先に白衣の姿を確認した戦士たち一行は、追跡に長けたスカウトの指示を待った。


スカウト「あまり近づくとバレるな。少しここで待って距離を開けよう」


皆が見守る中、白衣は石畳の通路をてくてく歩いていた。

戦士達から100mほど離れたところでスカウトが追跡開始の合図を出した。


スカウト「あまり離れると霧で見失うな。厄介な場所だ」


この追跡劇を開始して気づいたことがあった。

霧の性質だ。

この霧、石畳の通路に対しては遠くまで見渡せるが、通路から外れた芝生の部分は100m程度しか見渡せない。芝生の10m位上空なら300m位先まで見えるが、遠くに見える建物は霧で下部が隠れる形になる。


スカウト「この霧。邪魔だな。やつらは不便じゃないのか?」


スカウトが霧に文句を言っていた。


白衣は通路の横にある建物の陰に隠れる形になり、姿が見えなくなった。


スカウト「あの建物に入ったか?走ろう」


スカウトの指示で皆が一斉に走り出す。


戦士「単に建物がある方向に曲がっただけという可能性もある。慎重にな!」


走りながら戦士がスカウトに助言した。


白衣が曲がった場所に近づくと、皆はスピードを落とした。

辺りを伺うも白衣はいなかった。


スカウト「ここから見える石畳の通路にはいないな。この建物か」


近くの建物に入ってみたが、白衣の姿は無かった。続けて入口付近の通路を探したが、それでも白衣はみつからなかった。

戦士たちは知る由もないが、実は監視モニターで見られていた白衣は、警備部門から追跡されていることを知らされており、この角を利用して、迎えに来ていた警備部隊員によって転移魔法で移動していた。


スカウト「見失ったか。仕方ない、さっきの建物調査に戻るか」


尾行を諦め、建物調査を再開するスカウト達であったが、結局制御室への転移装置や看板を見つけることは出来なかった。

先に集合場所に来ていた暗殺職組のフェアリーたちも同じく収穫無しだった。


戦士「ここまで見つからないとなると、部屋の中に転移装置があるのかもしれないな」


僧侶「部屋ですか。いつぞやも部屋に入って、そこにいた白衣から話を聞きだしたことがありましたが、あんな感じの部屋だと、これまで調査した建物に入口はたくさんありましたから、探すのはちょっと・・・」


スカウト「やってられんな。とりあえず看板は無かったんだ。それを報告するとしよう」


戦士「そうですね。大聖堂の騎士さんが調査を担当した建物にあったかもしれませんし、一旦戻りましょう」


小部屋は調べていないが、戦士達が調査を担当した建物2棟に、目的の転移部屋は無かった。

大聖堂の騎士が担当した建物の調査結果に期待して、戦士たちは地上に戻っていった。

浮遊大陸からダンジョン最下層を経由して、地上のダンジョン入口前に帰ってきた戦士たち。

大司祭に今回の出来事を報告すべく、大聖堂に向かって移動を開始した。


魔法使い「ダンジョンかー。最初はドキドキしながらちょっとずつ進めていたのに、今じゃ浮遊大陸へ行くための単なる中継点。転移魔法で最下層に飛んで行って、ほかのものには目もくれずに転移部屋へ直行だもんなー。変な感じ」


地下種の王、ダンジョンの王であるコボルト王が倒された後も、遺物回収をしている冒険者はたくさんいる。地下種も途絶えたわけではないので、戦闘はダンジョン内で起きていた。

ただ、王の間付近は大聖堂の騎士たちがキャンプを設営し、安全地帯になっている。

かつての敵の安全地帯が、今や味方の安全地帯となっていた。

地下種としても王を失ったとはいえ、自分たちの生活圏に土足で入り込み、物を持ち去る地上種を厄介者に感じているため、抵抗を続けていた。

そんな小競り合いはダンジョン各階層で起きていた。一昔前は自分たちもその渦中にいたのだが、今はその枠から外れたところで活動している。これを魔法使いは奇妙に感じていた。

レベル相応の敵を相手する、ランクに応じた仕事とはこういうものだが、一昔前の自分の立場を思い出した誰もが懐かしさも混じり合い、この奇妙な感じを受けるのだろう。


戦士たちの目に飛び込んできた大聖堂はいつもと同じく、建物入口の大扉の前に数人の司祭と使用人が立って、訪れた人への対応をしていた。

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