白衣の提案
会話に夢中の戦士と白衣。
そのやり取りを周りで聞いている戦士側のメンバーは、このやり取りから何か情報を得られるのではないだろうかと考えていた。大聖堂が話してくれない情報を。
白衣「そうだ。先ほど夜の除去に協力してくれって言っていたな」
戦士「ああ」
今度は何だろうかと戦士は不思議そうな顔で返答した。
白衣「君らも協力してくれ」
戦士「何を協力すればいい?」
同じ目的のためなら協力するのは願ったりだ。戦士は即答し、協力関係は一歩前進したかと思われたが、白衣からは戦士達が望む答えではない言葉が出てきた。
白衣「君らに制御室の探索を命令した人物と大聖堂を説得してくれ。闇の宝珠の分離に協力するようにってな。
そうすれば君らはこれ以上ここを探索する必要はないし、我々も変な厄介ごとを気にせずに済む。そして夜の除去も上手くいく」
戦士「どうあっても制御室の場所は教えてもらえないようですね」
残念そうに戦士は白衣に漏らした。
白衣「場所は教えられんな。さあ地上に戻り、協力を仰いでくれ。
そうだな、協力するという案に乗るなら、いまここにいる地上勢力を全部地上に戻してくれ。
それが確認できたら、君らが協力したと信じよう」
一方的に条件を押し付けられた戦士たちは、今回の聞きだし作戦が失敗に終わったことを悟った。
戦士「わかりました。こちらとしても任務で来ているので、簡単に戻れません。もうしばらく探索させてもらいます」
白衣「ふん。好きにするがいい。だが邪魔はするなよ?」
そして白衣が立ち去ろうと背中を向けた時だった。スカウトが白衣を呼び止めた。
スカウト「兵隊を呼ぶのか?それともすでに呼んだのか?」
正直に答えるとは思わなかったが、一応聞いてみた。
白衣「兵隊に通報?その必要はない。警備隊がこのやり取りを監視してるだろうからな」
監視?スカウトはあたりに人影が無いことはわかっていた。
どういうことだろうか。もしかしてフェアリーがスカウトの感知外の遠距離から監視しているのだろうか。
戦士たちが黙っていると、白衣は地上側の文明レベルを考慮して、戦士たちが黙った理由を理解した。
白衣「ああ、監視ってのは遠隔操作でこの状況を見ることが出来る魔力装置があるんだよ」
スカウト「遠距離透視魔法みたいなものか」
白衣「ああ、それを長時間可能にする魔力装置だ。魔法の詠唱では長時間みることは出来ないからな」
スカウト「なるほどな。それでそこかしこで奇襲を受けたり、待ち伏せされていたのか。ハハハッ、まったく恐ろしいところだぜ」
白衣「というわけで通報はしていないよ。だが兵隊が来ないところを見ると、警備部門も気にしていないのか?それはそれで問題だな・・・」
何やら考え込んだ白衣は、そのまま戦士たちに背を向けて去っていった。
スカウト「さて、結局聞き出しは失敗だったな」
僧侶「気になるのは、天球の操作では問題が解決しないと言っていたことですね。
制御室の場所も知っている様子でしたし、この情報がウソだとも思えません」
戦士「そうなんですよね。大司祭様に報告したほうがよさそうだ」
魔剣「おい。さっきの男、どこに行くつもりか知らんが、もし制御室に向かったなら後を付けたほうがよくないか?」
皆の顔がハッとした。
スカウト「まだ遠くに行ってないはずだ。追いかけよう」
スカウトが急かすように言うと、皆も頷いた。
白衣が歩いていった方向に進むと、白衣が50mほど遠くにいるのが見えた。
どうやら建物の出口に向かっているようだった。
スカウト「追うぞ!建物を出たら見失っちまう」
白衣に尾行を気づかれないようにするため、白衣が出口を出たのを確認してから走って出口に向かった。そして建物から出て石畳の通路を見渡すと、白衣が30mほど先を歩いているのが見えた