制御棟探索2
建物を出て集合地点に集まった一行は、情報を整理すべく報告会を始めるため、石畳の通路から外れて芝生に入り、荷物を降ろした。
暗殺職「おかえり。こっちは何もなかったわ。まだ全部を見れたわけじゃないけど、行き先を示す看板に書かれていた文字を書き写したから解析して」
暗殺職のフェアリーの発言を聞いたスカウト職のフェアリーもメモ書きを取り出し、セイジ職フェアリーのソーサに手渡した。
このパーティーで唯一浮遊大陸の言語を読み書きできるセイジ職の彼女は、今回の旅では無くてはならない存在になっていた。
元々は戦士達とは別パーティーであったフェアリー達だが、大聖堂の手配で行動を共にすることになり、それが縁で一度地上に戻った後もその関係は継続していた。冒険者の冒険において、こういった人脈開拓がなされることも彼ら冒険者にとっては、楽しみの1つである。
特に命を預けるメンツとなった時は、尚更である。どの世界でも戦友は、単なる友達とは違うつながりを感じさせる存在であるといえよう。
ソーサ「うーん。なんか間違って書き写してる感がすごいけど、目的地じゃないことは確かね」
文字を知らない人物が書いた文字は、文字には見えず、知っているから何とか読めたというものだった。
暗殺職「読めない文字ってか、文字とすら認識出来ていない図形を書き写したんだ。それで許してくれよ」
僧侶「ね?図形でしょ。文字じゃないって」
何か得意げに発言する僧侶が憎たらしくて魔法使いが1発頭を殴った。
僧侶「乱暴ですねえ。それじゃあ、よ・・・この先はやめておきます」
何かを言いかけた僧侶は口をつぐんだ。
戦士「ここで一度報告に戻っても、何も収穫ないしなあ。別の建物の調査を続けましょう。先ほどとは違う建物があるようなので、またバラけて探索ですね」
魔法使い「何個あるのかしら建物って。どれも外見じゃ広さがわからないし、気が滅入るわね」
そんな打合せのようなことをしていると、前から騎士の一団が歩いてきた。
スカウトが身構えると、魔剣も続いた。
少しして騎士が持つ盾の紋章が分かると、警戒を解いた。
大聖堂の騎士たちだった。
騎士「おや。獣人種じゃないことと、襲ってこないところを見ると冒険者かな」
騎士の1人が話しかけてきた。
戦士「そうです。地上で大司祭様に依頼を受け、探索している冒険者です。騎士様は何を?」
騎士たちの緊張がほぐれるのを感じると同時に、別の騎士が話しかけてきた。
騎士「諸君と同じく、大司祭様の命を受け、探索しているのだよ。そちらは目的のものはみつかったかね?」
ここで互いの情報を交換し、探索した範囲を確認した。
どうやら10個以上ある建物を騎士たちが手分けして探索しているようだった。
騎士「諸君らには、この建物の調査を頼むよ。ここはまだ手付かずなんだ」
そう言って手書きした簡易地図に丸印を2つ付けた。
戦士「わかりました。ここは我々が調査しますね」
騎士「協力感謝する。我々は一旦報告と補充に戻らせてもらうよ。気を付けてな」
別れ際に騎士から回復と治癒ポーションをいくつかもらった。
スカウト「備えあればってやつだな。助かった」
互いに挨拶を交わし、それぞれの目的地に向けて歩を進めた。
新たに探索すべき建物は2つ。もしかしたらどちらかに目的地があるかもしれない。
あるいは騎士が担当している建物に目的地があるかもしれない。
戦士「では我々はこちらを探索するので、暗殺職組は別の建物探索をお願いします。
スカウト職組のフェアリーさんは、私たちの先行探索をお願いできますか?」
シフ「わかった」
スカウト職のフェアリーが応える。
担当は決まった。
戦士「では。また指定の時間にここに集合しましょう。何か緊急事態なら気にせず帰還してください」
互いに手を挙げて別れの挨拶をすると、建物に入っていった。