長官会議4
神の使いの男女ペアが消え去ったのを確認し、少しの沈黙のあと、議長が口を開いた。
議長「防衛長官!何を聞いておる!天球用のドラゴン金属の供給を止められなかったから、よかったものの、何故斯様な質問をしたのだ!」
防衛長官「神の使いに逆らっても無駄だということをハッキリさせるために聞いたのだ!」
強い口調の質問に対し、同じように強い口調で防衛長官は答えた。
場の空気に緊張が走ったが、このままでは大人気ないと議長は思い、深呼吸してから口を開いた。
議長「それほど大事なことか?」
議長は先程とは異なり、穏やかな口調で質問した。
防衛長官「今回の我々のように、ドラゴン製武具を用いればどうにかなると、後世が考えないようにするためです」
防衛長官も落ち着きを取り戻し、理由を説明した。
研究長官「確かに我々も研究を中止するには、納得できる判断材料が必要だからな。神のルールなど無視してしまえという判断が如何に愚かなものか、
記録しておこう」
防衛長官の意図を理解した研究長官が理解を示す。
防衛長官「ありがとうございます。今回の騒動に関して、あとで研究長官と実験棟長官には別途お話がございますので、私の部屋へお越しください」
指定された2人は何事かと思ったが、ここでは質問せずに流すことにした。
議長「では、今回の会議招集の目的は達成したということで、解散とする」
椅子が引かれる音が鳴り響き、長官たちは各々の所轄へ戻っていった。
防衛長官は2人の長官を自室に招き、ある目的のために事の詳細を話すことにした。
そのため、自室への転送装置を使い、皆で一緒に転移したのだった。
防衛長官「長官会議、お疲れ様でした」
長官室へ足を踏み入れると、2人の長官に声を掛け、応接セットへの着座を促した。
2人の長官が席に着くと、飲み物をテーブルに置いて、防衛長官も席についた。
実験棟長官「で、何用だ?我々2人というところから、何となく察しはつくが」
横にいた研究棟長官も頷いている。
防衛長官「ドラゴン金属の武具転用が禁止された以上、それ以外で地上種より優位に立つことがますます重要となった」
前置きをした上で話しを続ける。
防衛長官「特異種。まあ突然変異体だが、あれが切り札になるだろうな」
実験棟長官「偶然の産物だったな」
研究棟長官「生存し続けたという意味では、成功例は少ないがな」
2人の長官は事実を淡々と述べていく。
彼らの言う変異体、特異体とは神の使いと戦った、頭が複数ある隊長や腕が4本あったオーク、ケンタウロスなどのことである。
彼らは研究棟長官の手によって作られた生物であった。
そして先程の会議の場では聞かなかった件について、尋ねてみた。
実験棟長官「先ほどの会議で神の使いと戦った部隊の話があったが、あの変異体達も戦ったのか?」
防衛長官「ドラゴン金属を装備させた上で戦闘させた」
2人の長官はそう答えた防衛長官を見て、頷くと続きを促した。
防衛長官「確認された神の使いは3種類いた。巨大なリズマンと黒服まみれの人物、それと白いフルプレート軍団だ」
実験棟長官「長官会議の場にいた、あの長髪の神の使いが言っていた奴らだな」
防衛長官「そうだ。フルプレートは雑兵と言われていたが、5人組で行動していた。どうやらフルプレート軍団の中でもランク分けがあるようだが、詳細はわからん」
研究棟長官「で?結果はどうだったんだ?最終的には勝てなかったようだが、全然役に立たなかったのか?」
防衛長官「そのフルプレート軍団を全滅することができた。
普段は研究棟に駐留している獣人部隊の1つが唯一神の使いと戦闘して帰還した例があったんだが、遠隔攻撃主体と報告があってな。それを参考に、距離を詰めて戦闘をした結果、勝利した」
研究棟長官「ああ、半数が死亡したが帰還した部隊があったな。そうかそうか」
研究棟長官は思い当たることがあるようで、頷きながら、顎をさすった。
実験棟長官「神の使いも無敵ではないということか」
何かを考えながら実験棟長官は発言すると、その考えの答えを防衛長官が口にした。
防衛長官「そうだ。だから神の使いを黙らせれば、ドラゴン金属の研究を続けられるとも考えた」
研究棟長官「まあ、当然の思考だな」
研究棟長官はそう言うと、テーブルに置かれた飲み物を啜り、それをまたテーブルに置いた。
長官たちの名前ですが、"棟"という文字が名前から抜けたり入っていたりしますが、同じ人物です。見やすさだったりで文字をつけたり消したりしています。
あまり気にしないでください。
長官達が言う神の使いのリズマンとは龍人種のドラゴンのことで、龍がいない世界では龍人種もリザードマンに見えてしまうということです。