長官会議3
議長が戻ってきて着座し、少しすると会議室に長髪の男女ペアが転移してきた。
男女のペアは、コの字型に並んだ座席の中央にあるスペースに来ると、議長を見て口を開いた。
男「何やら急用か?」
長官たちにとって見慣れた神の使いのペアがそこにいた。
議長「あなたの仲間に指示されたとおり、ドラゴン製武具の廃棄をしたい」
男「ああ、そういうことか。わかった。モノはどこにある?」
議長「研究棟の倉庫だ」
男「わかった。あとで回収部隊をよこす。倉庫の前に鍵番を立たせておけ」
議長「わかりました。研究棟長官、頼んだぞ」
研究棟長官「わかりました」
男「要件はそれだけか?」
議長「はい。あとは、畏れ多くも私の同胞が失礼をしたようで、そのことを謝罪したい」
男「・・・了解した。それについてもカタがついた。我らの忠告を無視するとどうなるか、わかっただろう?」
議長「はい」
男「では話は以上だな?」
議長「は・・・」
議長が返答しようとしたとき、防衛長官が勢いよく席から立った。
防衛長官「お待ちいただきたい。1つ聞きたいことがある」
大声での発言に周りの長官たちは驚いたが、神の使いは平然と対応していた。
男「? 何だ?」
防衛長官「私は今回の無礼を働いた者、つまりは神の使いに戦闘を挑むように指示をした者だ。更なる無礼を承知でお聞きしたい」
男「いいだろう」
男はニヤリとしながら返答したが、許可した理由は何を言う気だろうかと気になったためだった。
防衛長官「ありがとうございます。
今回我々は、全身黒ずくめの人影と巨大リズマン、白いフルプレート軍団と戦いました。
最終的には黒ずくめの人物と、巨大リズマンには手も足も出ませんでしたが、あなた様や神も同じような強さなのでしょうか?」
何を質問しているのだ、コイツは。と長官の誰もが感じた。
男「黒ずくめに巨大リズマン、、、」
男は女の方をみると、女は反応しなかった。
男「白いやつは大量生産された、単なる兵だな。我らからすれば雑兵だ」
防衛長官「・・・」
雑兵。少なくない犠牲を出した対戦相手が雑兵か。防衛長官はその発言に思わず絶句してしまった。
男「黒ずくめの人物、おそらくスフィンだろう。奴は私と同じく、王に使える四天王の1人で、私とほぼ同じ強さだ。隣にいる者も同じく四天王だ」
男は隣にいる長髪女性を見ながら言った。
防衛長官は、単なるメッセンジャーだと思ったこの長髪男女も猛者だと知り、なおのこと神の使いには従うしかないと悟った。それはこの場にいる長官たち全員が同じだった。
防衛長官「王? 神、のことでしょうか?」
神の使いを名乗りながら、「王」というワードが出てきて、防衛長官は不思議に思い、素直に質問した。
男「違うな。神の魔力は膨大だが、単なる魔法使いみたいなものだ。その辺の住民より貧弱かもしれんな。
魔力の加護がなければ、お前が剣で突くだけで死ぬほどにな」
防衛長官は、神の使いがいう"王"という人物が、神ではない別の人物を指しているとわかったが、王が何者かという疑問は解消されなかった。
男「巨大リズマン。リズマンではないのだが、まぁそいつはドラゴンという奴で」
そこまで言ったとき、隣の女性が肘打ちを男に食らわせ、睨みつけた。
男は体をくの字に曲げながら話を再開した。
男「ぐぅ!・・・そのリズマンはドラゴン様といって、我らの王の1人だ。当然、強さは私と比較にならぬほど強い」
王が何者なのか。彼らの上役だというのが答えだった。
防衛長官「どれくらいでしょうか」
もうやめておけとツッコミたくなる長官たちだが、何の意図もなく質問するはずもないことを理解していたので、止められずにいた。
男「われら四天王全員でかかれば、互角の戦いができる程度だな」
少し間を開けて男は続けた。
男「本気じゃないドラゴン様ならな。本気を出されたら、そうだな、お前たちの世界でいうなら、その辺の子供がエリート戦士に戦いを挑むようなものか」
防衛長官秘蔵の複数の頭を持つ隊長ですら、部下との戦力差はそこまでは無かった。それを考慮すると大人と子供以上の差など、防衛長官には考えられなかった。
防衛長官「それは誇張しすぎでは・・・」
男「あぁ、すまん、誇張しすぎたな。我ら四天王の戦力を誇張すれば、先程の子供と戦士の例ぐらいの差になるな。事実は、近寄られただけで死んでしまうほどの戦力差だ」
防衛長官「・・・左様でしたか。よくわかりました。後世には逆らわぬよう、伝承していこうと存じます」
男「うむ」
そう言うと男女は転移し、部屋から消え去った。