長官会議2
神の使いが長髪男女ペア以外にいることも驚きだが、ドラゴン金属装備部隊が壊滅したことも、長官たちにとっては驚きだった。
研究長官「・・・そうかルール違反の取り締まりに来たか」
ドラゴン金属の軍事転用禁止ルールは、どの長官も知っていたことだったが、ルール違反するとどうなるかまでは知らされていなかった。
防衛長官「ドラゴン金属は、天球調整用に神から与えられた金属であり、武具への転用を禁じられていましたが、我々はそれを無視して研究開発していました。
研究開発までは見逃してくれていたようですが、実戦投入は禁忌だったようです」
単なるルールというレベルではないことは、部隊壊滅という事実が示していた。
実験棟長官「壊滅ということは、神の使いには勝てなかったということか」
防衛長官「はい。結果として神の使いの指示に従い、研究開発中止と武具廃棄をしたく、会議を招集したのです」
実験棟長官「あー、その、なんだ。不謹慎ではあるが、神の使いは倒せそうだったのか?」
その発言で皆の視線が実験棟長官に集まる。
ルールを押し付けてきたものを倒してしまえば、従う必要はなくなる。誰しも考えることだが、口にはしにくい内容の確認だった。
防衛長官「私の勝手な判断で、神の使いと獣人部隊を戦闘させましたことを先にお詫びさせていただきます。
結果としては、彼らに手を出してはならないということが、はっきりとわかりました」
単に「わかりました」ではなく、「はっきりと」が付け加えられていた事に気づいた実験棟の長官は、そこまで言わせる何かを見た、感じたのかが気になって質問した。
実験棟長官「・・・そうか。兵士の訓練を担当した部署としては、手を出してはならないと判断したことについて、何を根拠にしたのか知りたいが、あるかね?」
防衛長官「ドラゴン製装備のエリート部隊の隊長が即死魔法で死亡しました。
彼には即死魔法防御のアミュレットを複数所持させていたのですが・・・」
実験棟長官「根拠はそれだけか?」
根拠が魔法のレジスト失敗だけでは無いハズだと感じて、実験棟長官は再確認した。
防衛長官「決定的なのが、その即死魔法です。
我々の知らない即死魔法で、クラスひゃく・・・119相当だと説明していました」
どういうことだ?といった小声が会場を巡った。
長官たちは互いに顔を見合わせ、聞き間違えだろう?と話している。
実験棟長官「クラス119?聞き間違えじゃないのかね?」
誰もが思ったことを代弁するかのように、実験棟長官が口にした。
しかし、その質問を受けた防衛長官の顔色に変化はない。聞き間違えでは無いことの根拠を説明し始めた。
防衛長官「クラス7の蘇生魔法が発動しませんでした。神の使いが言うには、我々の蘇生魔法は低レベルすぎて復活できないそうです」
実験棟長官「最高ランク魔法が低レベルだと?
・・・それが事実なら、確かに我らの手に負える相手ではないが、証拠はあるのかね。その、なんだ、クラス119相当の魔法とやらのな」
見たことも聞いたことも、更には想像すらしたことのない魔法の存在を認めたくない実験棟長官は、間違えであってほしいという願望から、質問を投げた。
防衛長官「即死魔法を防ぐアミュレットがすべて壊れていたことからも、事実かと。念の為、石化した隊員に石化解除魔法をかけましたが、効果が出ず、20回かけたところで、その隊員は灰になりました」
アミュレットで即死魔法を4連続レジスト失敗して死亡しただけなら、運が悪すぎたで片付けられなくもないことだったが、基本的に失敗しない石化解除魔法を、20回も連続で失敗するなどありえないことだった。
実験棟長官「20回だと?そんなバカな・・・」
研究長官「となると、私の部署では金属開発に関わる業務は終了とするが、資料はどうする?全廃棄なのか?」
事態を理解した研究長官は、確認作業は終わったとばかりに、次の行動についての話を始めた。
防衛長官「全廃棄する必要はありませんが、武具転用だけは禁忌とするよう、後世に残してほしいのです」
長官同士で話しを進めているのを見て、議長が割って入った。
議長「そのあたりはこの会議で決めるべきであろう。今まで神の使いがメッセージを伝えることはあっても、武力介入してくることはなかった。防衛長官の話だと、神の使いを追い返すことにも失敗したようだし、ここは長官の進言通りにし、ドラゴン金属の武具転用開発業務は閉鎖、天球用パーツへの加工技術のみ継続とする。
皆の者、それでよいな?」
同席していた長官で反対する者はいなかった。
議長「続いて、すでに存在するドラゴン武具の廃棄だが、これは神の使いに連絡をし、手渡すこととする。保管場所は研究棟の倉庫でよいな?研究長官」
研究長官「はい。未使用品もそこで保管していますので、配備分も含め、すべてそこに保管しましょう」
議長「あいわかった。では最後に、神の使いに連絡をとり、これらの対応を伝えたいと思うが、よいか?」
これも反対する者がいなかった。
議長「今回の地上種侵入については、私の耳にも色々と入ってきておる。詳細は神の使いとのやり取りが終わってからとしよう。皆はそのまま待機していてくれ」
そういうと議長は席を立ち、別室で神の使いに連絡を取った。